第4話 偽
「それで、説明は終わったのか?予定よりかなり遅れているぞ」
オレたちの前に、新たに現れた天使は言った。
「へ?」
オレは、本日二回目となる、訳のわからない状況下で困惑していた。
「それで、こいつの説明は終わっていないようだな。全く、使えない部下だ」
天使は、オファニムに鋭い眼光を向ける。その視線の鋭さはもはや、天使と言っていいのか疑ってしまう。
「えーっと、今から説明するつもりで・・・・・」
「『死亡時刻から13分以内に説明をしておく』これがルールなのは分かっているはずだ。家を出た時点で40分のオーバーだ!一体、何をしていた!」
「・・・・すみませんでした」
「ここまで来るのに色々と大変だっただろう。私の使えない部下が申し訳ないことをした。私は、このオファニムの上司であるザフキエルだ。よろしく」
そう言って、ザフキエルは手を差し伸べた。オレも手を差し出して握手を交わす。
「こちらこそ」
ザフキエルの手は天使には似合わない、冷えた手をしていた。
「さすが、先輩。上手いですね」
オファニムが感激した目でザフキエルを見ていた。その目に気づいたザフキエルは、フンと言ってそっぽを向いてしまった。
「えっと、上手いってどういうこと?」
オレはオファニムに尋ねる。
「えーと、何でもないです」
「そうかい」
何を隠しているのか聞き出そうとしたが、ザフキエルが話しかけてきたのでその気は無くなる。
「詳しい説明をするのを忘れてましたね」
「あ、そうだった。それで何の説明なんだ?」
「それは、あなたの今後の事です」
いきなり何かと思えば今後のことだ。刹那まで忘れていたが、オレは死んでいるのだ。死んだとなればその身から魂は抜け、閻魔大王の判決によって天国か地獄に・・・・。いや、オレの目の前には天使がいるんだから閻魔大王じゃなくて・・・・誰に裁かれるんだ?まあ、すべて自称天使の虚言で無ければだが。
「あなたにはゲームに参加してもらいます」
「・・・・は!?」
天国でも地獄でもない第三の選択肢、ゲーム・・・・。意味が分からない。
「ゲームって、何かの漫画じゃあるまいしゲームに勝ったら生き返るとか――――」
「生き返らせます」
ザフキエルはキッパリと答える。
「ゲームに勝ったらあなたを生き返らせ、そしてこの世の終末をも止めましょう」
「・・・・まじか」
「まじです」
生き返らせてくれるだけでなく、この世界の終末をも止めてくれるとは天使も太っ腹である。
「ぷぷぷぷっ」
と、笑いをこらえているのはオファニムである。
「なんで笑ってんだ?」
「だって・・・・ぷぷっ・・・・だ――――すごい喜んでるから・・・・ぷぷぷぷぷっ」
「まさか、デスゲーム・・・・」
やはり、漫画のような展開が待ち受けているのだろうか。それよりも、オファニムはこんなキャラだっただろうか。
「・・・・コホン、ではそろそろゲームを始めましょう。ルールは簡単、あなたは今から指名する相手を見つけ・・・・」
ザフキエルがそこで話を切り、閉じた右手を前に出した。その右手をゆっくりと開けていくと、そこから光が溢れ始める。
「なんだ!?・・・・・・・え?」
目が光に慣れ、視界が良くなると目の前の光景に驚いた。なんとザフキエルの手には剣があった。その剣はよくゲームの冒頭に見かける、シンプルなものだった。
「どっから出したんだ!?」
「・・・・天使ですから」
ザフキエルは微笑んで答えた。
「では、話の続きを。指名する相手を見つけたら、この剣で頭を飛ばしてください」
「それは指名した相手を殺すってことか?」
「ピュン、と頭を飛ばしてください」
ダメだ、何を言ってるんだ。
「まあ、いい。・・・・って、良くねえ!何でそんなことをするんだ!?やっぱりデスゲームじゃないか!」
「ゲームじゃん」
と答えたのはオファニムだった。
「ゲームの様にやればいいんだよ」
狂ってる。こんな奴ら天使じゃない。
「天使だって、何回言えば分かるの?」
またしてもオファニム。心を読んだらしい
「それと、君は快くクリアできるよ」
「どういう意味だ」
「それじゃあ、先輩。発表してあげて」
それを聞いてザフキエルは微笑んだ。
「発表します。目標は・・・・篠田浩二です」
ザフキエルはまた微笑んだ。それはオレにとって『悪魔の微笑み』そのものだった。
「・・・そういうことか」
いや、間違っていた。これは『天使の微笑み』だ。
「ははっ」
なぜだろう、面白い。
「ははははははっ」
今までの人生で一番面白い。
「ははははははははははははははははははははははははははははははっ!!!!!!!」
オレが理性を保っていなかった間に、オファニムがひっそりと笑っていることに気づけば、オレは今・・・。
「―――――ふふっ」
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