第5話
それ以来、私は冬美と行動を共にすることが多くなった。
移動教室、昼休み、放課後。冬美はとても優しく受け入れて、よくしてくれた。そんな冬美に、まるで磁石のようにひかれていった。嫌な顔一つせず、いつもにこにこ笑顔で挨拶してくれる彼女は、私の心の支えだった。あの日の放課後、私は冬美に甘えた。今まで見せたことのない自分の顔を晒した。そのためか、冬美も私にはなんでも偽りなく話してくれていた。家での悩み、進路、将来のことなど、私も真摯に受け止め、話を聞いた。本当に楽しかった。毎日が輝いていて、初めての友達というものをもって、心が満たされている気がした。高校に入ってからも、クラスは違えど度々教室に遊びに来たり、一緒にご飯を食べたりしていた。心の底から嬉しかった。
けれど、それがいけなかったのだろう。私をはめるためには、仲の良い彼女を狙うのが1番。きっと、優子たちはそう考えたのだろう。でなければ、正義感の強い冬美が、あんなに親身になって支えてくれた冬美が、私を売るはずがない。絶対に、許せない。私をあんな目に遭わせたことよりも、冬美に手をかけたことが。本当に許せない。
さて、回想が長くなったが、冷静になってみると、私は死んでいるんだった。ということは、人には見えないので、話を盗み聞くことだって、悪事の裏を暴くことだってできるのだ。ただし、知ることができるのは私ひとりだが……。伝えることの出来ない真相を暴いてどうなるのか。────簡単じゃないか。私が直接、手を下せばいいのだ。そして私は、幽霊になったこの状況を利用して、優子たちに復讐することにした。
「待っててね、冬美。」
6話へ続く
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