7
たいまつの炎がゆらゆら、頼りなさげに揺れる。
リオは左手でたいまつを高く掲げつつ、右手で剣を持って移動しなければならなかった。いつ魔物がきてもおかしくはない。神経を集中させて、ゆっくり歩く。もちろん、足音はなるだけたてないように細心の注意を払って。
(……こっちだ)
より、パウェルの気が強い方に歩みを進めていく。
パウェルは目には見えないけれど、ある種の圧迫感がある。肌をちくちくと刺すような、そんな感覚だとリオ自身は思っている。その感覚が、リオを確実に蝕んでいく。
こっちに、何かがある。そんな予感がする。
――と、その時、音がした。
複数の軽い足音。低いうなり声。
ぴたりと足を止める。
――敵が、近い。
軽い足音。軽すぎる。明らかに、人のそれではない。
(……来た)
剣を握る手に、ぐっと力を込める。さっと周囲に目を走らせた。
奥に広がる濃い闇の中に、黄色い、つぶらな光を見つける。複数の光――否、目。
光の数は八つ。つまり、標的は四体だ。
一対四。少々、分が悪い。
――引き下がるべきか?
数歩うしろへ下がったところへ、やっと気が付いた。
後ろにも、複数の魔物の気配がする。
(しまった……!)
パウェルの気を追うのに夢中で、注意力が散漫になっていた。
囲まれてしまった、のだ。
状況としてはかなり最悪だった。今、リオは一人だ。しかもそれほど戦闘に慣れているわけでもない。
敵は複数。しかも、退路は断たれている。逃げ道はない。
これでは依頼の魔物討伐をこなすどころか、此方が大怪我を負ってしまう可能性が高い。
――それでも、やらなければならない。
(まずは退路)
最悪の状況の回避のために、退路の確保は絶対条件である。
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