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「自警団は、何してるんだろうね」
ふっとため息をつく。
「自警団は調査を続けてるけどいまだ手がかりはつかめず、だとよ。本当に動いてるかは疑問だけどな」
「親方」
リオがたしなめるように呼ぶ。親方は大仰に肩をすくめてみせた。
「自警団の奴らは基本的に上の奴らだからな、興味がねぇんだろ」
一応、下町にも治安を守るという名目の組織、「自警団」なるものが存在している。これは、『上』を守る役割のある組織、「騎士団」の分化組織で、構成員に下町の人間は一人もいない。
そのためか、自警団が下町で起こった事件について、積極的に動くことはほとんどないと言っても過言ではない。彼らの業務は『上』に無断で侵入する者がいないか、そういう者たちを検閲すること、それに限られている。所詮は下町。上の人々にとって、下町はまた別の違う街くらいの認識で、他人事なのだろう。
「……でも僕も、自警団の人、苦手だな」
「さっき俺をたしなめた奴が言うセリフじゃねぇな」
「……ごめん」
「まぁ下町に住んでる奴で自警団が好きっていうのはあんまりいねぇけどな。気持ちはわかる」
そのための俺たちだろ、とレオンが言った。
「……そうだね」
【ギルド】の結成理由はここにある。
自警団という建前上の組織ではなく、本当に下町の住民のために動く組織。それを作ること。
「ひょっとして、調査依頼が来てたりするの?」
リオが言いながら手際よくテーブルに料理を並べていく。いいや、と親方は首を振った。
「そうだな、流石にこう何人もやられてるんだ、そろそろ来る頃合いだろうなぁ」
「忙しくなりそうだね」
「痛ましい事件だが稼ぎ時ってこった」
「不謹慎だね」
「死人は何も言わねぇからな」
親方はまた声をあげて笑って、リオもはやく座れと促した。
「さてちゃっちゃと朝飯食って仕事するか」
「準備したの僕だよ」
「いつも感謝してる、ありがとうなぁ」
「親方のありがとうは誠意がないんだよね……よくこれまで生きてこれたね」
親方がその話はやめだと言わんばかりに手を打ち鳴らした。
「とっとと食え」
「はいはい」
リオは呆れたように笑みをこぼした。
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