〈携帯電話×画面=暗闇〉

 阿久斗が呪願機の部屋に籠もり、一週間が瞬く間に過ぎ去った。

 ノートパソコンから情報収集を行い、隕石の経過を伺うも状況は悪化の一途を辿っている。ミサイル攻撃も成果は得られず、人類に残された選択肢は残りわずかとなった。

 政府は地下シェルターを急ピッチで作っているが、そこに入れる人間の総数は限られ、避難の権利を巡って論争を起こしている。もとより、地下シェルターに避難をしたところで、生き延びられるかも怪しい。

 誰かが隕石をどうにかしてくれるような淡い希望を、阿久斗は持ち合わせていなかった。

「……これしかないか」

 一週間、考え抜いた結果は納得のいくものではない。しかし世界を救える方法として最も近い答えだった。

 この作戦を結構するには人手と準備が必要となる。

 阿久斗は戸崎や美鈴に連絡を取ろうと携帯電話を取り出す。

 携帯電話の電源は落としてあった。

 ころねと別れたあの日から、一度も電源は入れていない。

 電源をつけることなく、携帯電話をポケットに戻す。

 伝達は、携帯電話からではなく、パソコンでレオから発信してもらう。

 阿久斗は、ころねの存在を避けてしまった。なぜなら、今から阿久斗が成そうとしている作戦は、人としての道を大きく踏み出すことになるからだ。

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