交番のお巡りさん

コカトリス

第1話

 


 岐阜県関市には多くの交番が存在する。


 そんな中に余り人々が頼らない交番があると言う。

 何せそこにいる警官は極度の人嫌いで有名な人で、人々からは独り身黒星と呼ばれているそうだ。


 そんなある日、一人の女性が訪ねてきた。


「あの、すいません。人探しを手伝ってもらいたいのですが」


 黒星は、重い瞼を開けその人を見ていた。


 今は九月の初め頃、まだ夏の暑さが抜けきらず、未だに汗を滴らせている時期である。

 そんな時に外に出て、人探しなど……。

 黒星は、小さくため息をつき女性を椅子に座ってもらい、事情を聞く事にした。

「えーと、それでどんな人なんですか?その探していると言う人物は」


「その、分かりにくいとは思うんですが、スーツを着崩し芸人みたいな蝶ネクタイをしている人なんですよ。今の所それだけしか分からなくて……ごめんなさい」


「い、いえ。そのですね。それだけの事ではその、他に分かる事とかありませんかね」

 黒星はめんどくさそうに頭を掻き目を細めていた。

「ごめんなさい。それだけしか分からないの」


 そう言うと女性は、机に伏せって泣いてしまった。


 女性をそのままにしておくのもどうかと思い、渋々人探しを手伝う事にした。


 日が高く、とてもじゃないが探す気分にはなれないこの日この頃なのではあるが、何故か女性はそれを諸共せず、快活に人を探していると。


 黒星は、そんな女性に生暖かい目で見ていた。

 何がそんなに楽しいのかと。

 時々口笛吹きやがって、くそ、めんどくさいな。

 心の中で毒づく。


 あまりの暑さに、軽く被っている帽子を団扇がわりにしている。


 そんな黒星の姿に女性は肩を落とし、ため息をついている。


「あの、少しは手伝ってくれはしないんですか?それでも警察官なんですか?」


 八つ当たり気味にそう呟いた。


「それでその人とはどんな人なんですか。いい加減教えてください」


「……どんな人ですか。そうですね、その人はですね眼つきが悪くてね、そんでもって笑った時の顔かがすごく可愛いの。そんなあの人の笑顔に惚れてしまったんです」


 誰もノロケ話など聞きたくもないのだが、その女性はそんなことをつゆ知らず、その人のことをベラベラと語るのであった。


 それからも捜索を続けている。


 彼女は、

 薄暗い路地を徘徊して見たり、

 あるいは、森の中を徘徊して見たり、

 あるいは、勝手に人の家を徘徊して見たり、自由奔放な女性の姿に頬を緩め、生暖かい目でみていた。


 さすがに民家に入るときは止めはしたが。


 探しているうちに陽が傾いてきた。


 彼女は探す手を休めず、いたるところを探している。

 近くに自販機があり、丁度喉が渇いていたので、コーヒーを買いに行った。


 その時、路地から女性の叫び声が聞こえた。


 黒星は小銭を捨て置き、急ぎ女性の元へ駆けつけた。


 すると女性は厳つい男性に囲まれ、服を脱がされそうになっていた。


 黒星はその男たちに駆け寄り、得意の背負い投げで倒してしまう。


「瞬殺!!」


 女性はそう呟き目を白黒させている。

 そして、頬を赤く染め下を向きこう言った。


「私の探していた人は、あなたなんです。運命の人もう、離しませんからね」


 そう言い彼女は黒星に抱きついた。


 そんな彼女の上目遣いに、少しだけ人を好きになった黒星であった。











  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

交番のお巡りさん コカトリス @Yamatanooroti

★で称える ヘルプ

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ