Ⅶ 紅茶一杯の恋心

 

 クラーラ・クリスティと名乗る女性が、ウィスパー寄稿文店に訪れたのは、その日の夕暮れ近くだった。

「いらっしゃいませ」対応をしたエマは、また飛び込みのお客さんだと、憂鬱になったのだが、それがヴェラの祖母であることと、キャシーからこの店の事を聞き、日ごろのお礼を述べに来た旨をクラーラから聞くと、ほっと胸を撫でおろしたのだった。


「そうだったの、あのタイプライターもエマさんがヴェラちゃんに貸してくれていたのね」


 ソファに腰かけた、クラーラはエマが淹れたお茶に口を付けながら、朗らかにそう言った。それはまるで、自分の娘が不慣れな土地でも良い友人に恵まれた喜びを表しているかのようであった。


「はい。私は小説家ではありませんけど、同じ文章を扱う者として、こうなんていうか、他人事には思えなくって」


「そうなのね。ヴェラちゃんって、人見知りで少し偏屈なところがあるから、こっちでお友達ができてるか心配だったのよ。でも、エマさんやキャシーさんのような、お友達が居て安心したわ」


「いえ、そんなぁ」


 人見知りなのはさておき、偏屈なのは少しだけだろうか?

エマはそう思ったものの、口には出さなかった。


「しばらく、こちらにいらっしゃるんですか?」


「えぇ、向こうの家に居ても、一人だし、ヴェラちゃんのことも心配だから。しばらくはこちらに居ようと思っているの。それにね、実は若い頃、ヴェラちゃんが暮らしているアパートの近くに下宿して居たことがあるの」


 「うふふっ」と照れ隠しをして見せるクラーラ。その仕草が、可愛らしかったので、エマはふっと自分もこんな風な歳の取り方をしたいと思ってしまった。


「そうなんですか。すっごい偶然ですね」


「数年間だけだったけれど、思えば、この町が私の青春らしい青春が詰まった。思い出の町なのかもしれないわね」 


 クラーラはそう言いながら、恍惚としながら天井に視線を馳せている。

 青い春と書いて青春。

 青春と言えば恋。

 他人の恋話はとにかく気になるお年頃であるエマは、記者魂も相まって、ウズウズとしてしまって我慢が出来なかった。 


「やっぱり……その、恋愛とか?ですか?」我慢しきれずにそれとなく聞いてしまった。


「あら、やっぱりエマちゃんも女の子ね。気になる?」


「はいっ‼」


 クラーラの含みのある一言に、完全に一本釣りされてしまったエマであった。


「そう。あれは、私がロンドンの学校に通うために、こちらに下宿していた頃。下宿先から、バス停に向かう途中にね、お庭がとてもきれいなお宅があって、その家の塀の一部が薔薇の生垣になっていてね。薔薇の季節になると、とても大きな深紅の薔薇が咲いて、とてもとても綺麗だったの」


 エマは、この辺りにそんな家があったかな?と思い出しながら、何度も頷いた。


「薔薇の季節を迎えたある日、私がいつも通り、バス停へ向かう途中、足を止めて薔薇の花を愛でているとね。生垣の間から、こちらを見ている、男の子を見つけたのよ」


「その家のお子さんですか?」


「えぇ、私よりも年下の男の子でね。私が「こんにちは」って挨拶をしても、最初は驚いた顔をして逃げてしまって……とてもシャイな子だったわ」


「わぁ、可愛らしい子ですねぇ」


 エマは、両手で落ちそうなほっぺを支える風にして、いやいやをしていた。

 エマはどちらかと言えば年下が良い。もっと言えば、弟のような子が好みだった。それが、エマに兄弟がいないからなのか、はたまた、単純にエマの趣味であるかは謎である。

 

「そうそう、とっても可愛らしい男の子だったわ。その日から、生垣を通る度に男の子が居てね。でも相変わらず、挨拶をしても目を丸めるだけで、走り去ってしまうだけだったのだけれど……」


 クラーラはそこで一度、口を休めるように紅茶を口に含んだ。エマはその間にキッチンへ向かうと、せっせと替わりのお茶と、クッキーを用意して急いで戻って来た。


「お替りをどうぞ。それから、どうなったんですか?」


 エマは何時になく続きが気になって仕方がなかった。薔薇の園での出会いだなんて素敵すぎる!ある意味それはエマの理想の出会いであったからかもしれない。


「ありがとう。薔薇の季節間、ほぼ毎日のようにその男の子と顔を合わせていたのだけれど、薔薇の花が終わってしまうと、私も学校が忙しくなって、生垣の中を覗くこともなくなってしまってね。男の子が居たのかどうかもわからなかったの」


「そうなんですかぁ。出会いだったらとても素敵だと思ったんですけど……はぁ、そんな恋愛小説みたいにうまくいきませんよねぇ」


 エマは頭を垂れて、落胆を現した。


「そうねぇ。でも、偶然と言うのはあるものでね。その年の夏の終わりごろ、学校の掲示板に家庭教師の仕事依頼が張り出されてあって、下宿先から近いお家だったから、お話だけでもと思って、依頼書を持ってお伺いしたの、そしたら……」


「もっ!もしかして、それがその薔薇の生垣の家だったとっ⁉」 


 エマはクラーラの語りを我慢できず、興奮してそう言ってしまった。

 相手の話を遮ると言う記者としてはあるまじき反則技なのだが、瞳をキラキラさせたエマにはそんなルールはすでに頭の中になかった。


「うふふ。エマさん大正解」


 だが、クラーラはそんなエマの姿を見ながら、微笑んでそう言ったのであった。


「いや~んっ、素敵すぎますよぉ」


 またイヤイヤを始めるエマの頭の中ではどのような妄想が投影されているのだろうか。


「ご両親とお話をさせてもらってね、その男の子は、小学校でクラスメイトと馴染めなくて、教師やカウンセラーからは自閉症と決めつけられてしまって、小学校に通えなくなってしまったらしかったの。それから、男の子が拒絶してしまって、もう、何人も断っていることも……だから、私も駄目だろうなぁって、半ば諦めていたの」


「そうですよね。だって、生垣越しに顔を合わせても、無視されてたんですもんね」


「えぇ。それで、いざ、男の子と対面することになったんだけど……ふふふっ。ごめんなさね、ちょっと思い出しちゃって。その子ってばね、部屋に入って私の顔を見るなり、顔を真っ赤にしてお母さんの後ろに隠れてしまったのよ」


 そう言い切る前にクラーラは再び「うふふ、それが可愛くって」と笑みを湛えた。


「詳しくっ!」


 一方、エマは、鼻息を荒くして、身を乗り出した。


「なんでも。男の子はね、お母さんに薔薇の花のような人が毎日生垣の外を通るって話していたらしくってね。それが私の事だっていうのよ。面白いでしょう」


「あぁ、ご馳走様です。満腹です。ありがとうございますっ!」


 エマは両手で顔を隠しながらそんなことを、こもった声で呟き、おまけに足をバタバタとさせた。


「「このお姉さんにお勉強教えてもらう?」とお母様が聞いたら、男の子は「はい。頑張ってお勉強する」ってとても細くて高い声で言ってくれて、それで、私は家庭教師をすることになったのよ」

 

「はうあぁ~、私…私……とろけてしまいそうですぅ~」


 エマはそんなことを言いながらふやけてしまった、原稿用紙のようにふよふよな顔で左右に揺れ出してしまった。


「あら。エマさん鼻血……」


 突然のエマの鼻血に一旦、休憩をとることになった。

 エマ自身は「ふぁやいく、ずずぎをっ!」とクラーラに迫ったが、喋る度に、両方の鼻の詰めたテッシュに血が滲むので。その度に「もう少し落ち着いてからね」とクラーラが諭していた。

 途中、〈投書と書いて話題と読む〉を持った来客があったが、ドアのベル音を察知するやエマは荒い鼻息でテッシュを強制排出し、音速でドアまで駆けよると、


「本日は臨時休業ですっ!邪魔しないでっ!」とものすごい剣幕でドアノブを握ったままの男性に言い放った。

男性の引き攣った表情を見れば、その程度が計り知れる。

 もちろん、男性も反論をしようと試みるも、口を開けた瞬間にエマの後ろ回し蹴りで強制的に閉められたドアによって、外に弾き出されてしまった。


「続きをっ!私に明日の活力をっ‼」後ろ手に鍵を閉めたエマは満面の笑みで言う。


「あらあら、うふふ。エマさんまた鼻血」


 エマには、休息が必要のようである。主に、お頭の……





氷で首元を冷やしてみたり、仰向けに寝てみたり一通り、民間療法を試してみても、鼻血は一向に止まらなかった。

 さすがに、ちょっとヤバイかも。とエマも自覚し始めた頃、一本の電話がかかってきた。

さっき追い出した男性からのクレームかも。と渋々、受話器を取ったエマ。

その電話が終わる頃には、鼻血は止まっていた。


「大事なお電話?」


 ため息と一緒に、鼻からテッシュを抜いたエマにクラーラが声を掛けた。


「えぇ、まあ……地獄からの催促電話でした……」


「あらあら、それではのんびりしていられないわね、続きをお話しましょう」

 

 エマの顔色から、落ち着いたのだろう……主にお頭が。と思ったクラーラは続きを話すことにした。


「えっと、家庭教師になったところだったわよね。時間は変則的で週三日、家庭教師として、男の子とに勉強を教えるようになって、最初は挨拶からだったのだけれど、段々と男の子も心を開いてくれるようになってね。勉強以外のこともお話するようになったのよ。お互いの誕生日とか、好きな音楽とかね。ご両親も、男の子が目に見えて明るくなったと、大変喜んで下さってね、お夕飯をご馳走してくださったり、ハロウィンパーティにも呼んで頂いたり、ピクニックに行ったり、私も一人で寂しく思うことが多かったから、とても嬉しかったし、楽しかった……」


「家族ぐるみで親しく接してもらったんですね」


「うん。でもね、そんな素晴らしい日々は続かなかったの。このまま、こんな日々が続けば……そんな風に思い始めていた矢先、父が急病で倒れてしまって、母も持病を持っていて。私が田舎に帰らなければならなくなってしまって」


 クラーラは「ふぅ」と浅く長く息を吐いた。


「とても良くして頂いていたから、私も言い出すことがなかなかできなくて、伝えた時も、胸が張り裂けそうな思いだった。ご両親は、私が去ってしまうことをとても悲しんで下さって。ご両輪とも相談して結局、私が去ることは男の子には伝えなかったの」


「その…また、自分の殻に閉じこもってしまうことを懸念してですか?」


「そう。私もご両親も以前より、悪化してしまうことを恐れたのよ。騙しているようで、黙っているのはとても辛かったわ。その気持ちが、本当に罪悪感からなのか、自分勝手にただ自分が楽になりたいからなのはわからないけれどね……」


「その子の為を思って黙っていたんですから、そんな……自分勝手だなんて…」


「私がロンドンを去る前日の最後の授業の日。珍しくその日は時間の指定があって、門を開けると、忘れもしないわ。紺色のジャケットを着ていつもよりオシャレをした男の子が待っていてくれて、私の手を引いて、庭の四阿までエスコートしてくれたの」


「庭の四阿にですか?」


「えぇ、今日は外でお勉強なのかしら?と最初は思ったし、最後だからそういうのもいいかもしれない。なんて思っていたのだけれどね。四阿についてみると、そこにはバースデーケーキと豪華なお料理が並べられてあって……」


「男の子の誕生日だったんですねぇ」


 エマはしみじみとそういったのだが、クラーラは静かに首を横に振り、


「その日は偶然にも私の誕生日だったのよ」と言い「休学の手続きや、引っ越しの手続きやらで、すっかり、私が忘れてしまっていたのだけど」と苦笑しながら続けて話した。


「えぇっ、それじゃ、男の子がクラーラさんの誕生日を覚えてて、お誕生会を開いてくれたってことですか⁉」


「そうみたいなのよ。私は、普段通りお勉強をするつもりだったんだけどね。後で奥様から聞いた話では、このお誕生会のことは男の子から自発的に言い出したことらしくってね。ケーキを焼くのもお料理を作るのも、お手伝いしてくれたんですって。そんなことを涙ながらにお話ししてらしたわ。よほど嬉しかったと思うのよ。自分から、何かをする子ではなかったから……」


「ひょっとしたら、男の子なりにクラーラさんが居なくなることを察していたのかもしれませんね」


 根拠はなかったが、エマはふっとそんな気がした。


「そうだったのかもしれないわねぇ。お誕生日の歌を歌ってもらって、蝋燭の火を消して。男の子がお料理を取り分けてくれた。とても楽しかった……精一杯、背伸びをしてもてなしてくれた、その気持ちが何にも代えがたかったわ……なのに、私は黙ってこの子の前から去っていく……もう我慢が出来なくなってしまって」


「伝えたんですね」


 エマがそう言うと、クラーラは静かに頷いた。


「突然の告白に奥様も驚かれたけれど、男の子もショックだったみたいで、しばらくただ沈黙の時間が過ぎて行ったわ。最後なのだから、もっとお話ししないといけないのにね」


「それわかります。別れ際って、もっともっと普段以上に話をしようって思うのに、言葉が出てこなくなってしまうんですよね」


「そう。年上の私がなんとかしなければいけなかったのに、それができなかった。そしたらね、男の子が空だった私のカップにお茶を注いでくれたの。そしてね、」


 クラーラはそこまで言ってから、目元を拭う仕草を見せた。クラーラの中でも、きっと忘れられない瞬間だったのだろう。


「「僕、頑張って学校に行って、沢山勉強するから、先生に褒めてもらえる子になるから」って力強く言ってくれたのよ」


 本当はすぐにでも泣きたかっただろう。

 声を上げて、突然の別れの悲しさに鳴き声をあげたかっただろう。

 それでも、少年はそれになんとか耐えて、紳士であろうと精一杯強がってみせた。

 そんな少年の気概を斟酌すると、自然と熱く込み上げて来るものがあった。

 エマは知らないうちに、頬を涙が伝っていたことに気が付いた。


「その後、もう少し感動的な余韻があるはずだったと思うのだけれど、男の子がそう言った途端に、奥様が大泣きをしてしまって。嬉しさあまってだってことはわかっていたのだけど、それはもう何を喋っているんだか、わからないくらいに泣いてしまって。おまけに男の子を抱きしめて離さないものだから、仕舞には男の子まで泣き出してしまって。私も、もらい泣きしてしまって……三人して大泣きよ。今からすれば、可笑しいわよね」


「そんなことないですよ。男の子頑張ったんですね。泣いてあげないと、クラーラさんとても酷い先生です……」


「次の日、キングス・クロス駅まで見送りに来てくれた。そこで深紅の薔薇の花束をもらったの」


「深紅の薔薇……うーん。どこかで…って!それヴェラの病室に飾ってあった薔薇じゃないですかっ!もしかしてっ!再会したんですか⁉」


 それはロマンチック過ぎる!まるで、用意されたシナリオのような、映画やドラマの最終回のようではないかっ!エマは目元を袖で擦ると再び身を乗り出して、そう尋ねてみたが、


「それは内緒っ」とクラーラに受け流されてしまった。


「うぅ……」


「その後、奥様のご紹介して頂いた病院に父が入院できることになって、翌年の春ごろにまたロンドンに戻ってきたの。その間、奥様とお手紙を何通かやり取りをしていて、男の子が毎日元気に通学するようになって、どうやらお友達もできたようだ。と教えてもらっていたのだけれど、やっぱり、気になってしまって、一度だけ生垣からお庭を覗いてみたの。そしたら、お友達数人と元気よくボール遊びをする男の子の姿があって。すっかり様変わりした姿に嬉しく思ったのだけど、もう私の居場所がなくなってしまったみたいで、少し寂しかったわ」


 そう言いながらもクラーラの表情は朗らかだった。


「なんだか、良いお話ですねぇ。きっと、クラーラさんはその子の初恋のお姉さんなんだと思います。いいえ、絶対にそうだと思いますっ!」


 男の子の初恋相手として、幼稚園の先生や一緒に遊んだ近所のお姉さんになどは、定番中の定番だし、その男の子がクラーラにだけ心を開いたことが何よりの証拠である。

 男の子はやはり、生まれにして男性なのである。


「これで、私のお話はおしまい。それじゃあ、はい」


 クラーラは、そう言うとエマに手の平を指し出した。


「へっ?なんですか?」


 困惑するエマ。


「ここのお店では、昔話を買ってくれるってキャシーさんから聞いたのだけれど?」


「えっと、そうですけど……」


 エマは、胸の中を満たしていた感動が冷めていくのを感じながら、とても複雑な心境だった。


「こんなお話では、お金にはならないかしら?キャンプに行って遭難して熊に追いかけられたお話の方が良かったかしら?」


 少し困った顔をして言うクラーラ。 


いやいや、そうじゃなくってっ!いや、キャンプに行った話も聞きたいけどっ!そうじゃないでしょ⁉

 エマは、ただの良い思い出話として終わらせてほしかったと切実に思ったのであった。



 O



「あーもうどうしようかなぁ」


 エマは視線の先のソファで呑気に、鼻歌を歌いながらクッキーを頬張るレイチェルに聞こえるように言った。

 エマは原稿用紙を前にして頭を抱えていた。毎月恒例の締め切りに、じりじりと真綿で首を絞められているわけだが、どうしたって、クラーラの話を寄稿する気にはなれなかった。

 クラーラが帰るのと、時を同じくしてレイチェルが帰って来て、ドアのところで鉢合わせた。


特にクラーラに興味を示さなかったレイチェルだったが、エマの顔を見るや、


「さっきの女の人に泣かされた?ロケットパンチでもされたの?」と尋ねてきた。


「なんでそうなるのよ。確かに、泣かされたと言えば間違いでもないけど、少なくともロケットパンチではないし、そんなことするのレイチェルだけだしっ。それに、さっきの人、ヴェラのお婆様なのよ。私も今日が初対面だったんだけど」


「あぁ、あれがグランマなんだっ、綺麗な人だねぇ」


 レイチェルは、ヴェラの祖母であることを知らせても驚かなった。


「レイチェル、知ってたの?」


「見るのは初めてだけど、さっき、ネイマールと一緒にヴェラのお見舞いに行ってきたんだけど、その時にヴェラが話してたんだよ。見た感じはふわふわしてるけど、しっかり者なんだって、特にお金に関しては」


 しっかり投書代金を受け取って帰ったクラーラの背中を思い出すと、


「確かに……」とエマは納得できてしまった。


 とは言え「それと言うのもね。ヴェラちゃんの部屋にあまりにも何も無さ過ぎて、思った以上にお金が必要みたいなのよ」と話すクラーラの退っ引きならない事情を察すると、致し方がない感も無きにしもあらず……

 諸々を察して、多めに投書代金を渡してしまった自分の甘さが一番許せない気がするのはなぜだろう……

 

「あぁ、どうしよぉ~」

 

 さっきのお客さん、追い返さなければよかったぁ。

 後悔先に立たず。

 エマは、机に額を乗せると、そう言いながら、ゴリゴリとやり始めた。こうなると、かなり末期症状である。


 カランカランッ 


そんなタイミングで、ドアのベルが鳴ったので、これは救世主に違いない!そう思って、勢いよく顔を上げ、


「いらっしゃいませっ!」と声を張り上げると、そこにはキャシーが立っていた。


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