儀式~百襲媛疾風伝~
坂崎文明
さらば、私のいとしい人
「
大和朝廷最強の巫女、
外れることはおそらく、ない。
吉備国の鬼ノ城に立て篭もる最強の鬼神<温羅>、百済の皇子とも言われている彼は百襲媛の想い人であり、讃岐で秘かに子供をもうけた深い間柄であった。
「姉さま……」
異母弟の
古代道術を駆使して猛威を振る温羅を止める呪力をもつのは百襲媛しかいないことを熟知していた。
異母兄である
個人的感傷でもはやどうすることもできなかった。
引き返せないほどの兵の犠牲をすでに支払っていた。
左手の親指を小刀で切って血潮で紅を引く。
イザナギ流の古代道術、弓矢必中の呪術儀式である。
「さらば、私のいとしい人」
囁くようにつぶやいて、百襲媛は神矢を放った。
紅い閃光のような神矢が一直線に温羅の呪力の源である青い左目を貫いた。
崩れおちる鬼神を見届けると、百襲媛も大地に膝から崩れるように手をついた。
一筋の涙がこぼれる。
血潮で描かれた赤い口紅が美しく、心なしか物悲しく見えた
儀式~百襲媛疾風伝~ 坂崎文明 @s_f
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます