第23話 海と水着
「ダンジョンへようこそ(ウサ)(ニャ)!」
ダンジョンに入った探索者達は、一面の砂浜と海に驚いた。
更に3人娘が水着姿でお出迎えとあっては驚きは二倍である。
ワウはフリルの付いたビキニ。
ラウはシンプルだが短いネクタイと袖のみの付いたビキニ。
ニャウは清楚なワンピースタイプの水着だった。
なお全員尻尾穴付きである。
そしてもう1つの驚きそれは髪形が変わっている事であった。
ワウはポニーテール、ニャウはツインテール、ショートのラウはウイッグをつけて三つ編みを肩から回して前に垂らしていた。
「本日よりシーダンジョンが稼動しましたワン」
「シ、シーダンジョン?」
困惑しつつもワウの胸に釘付けの探索者の質問に応えるワウ。
「はいワン。本日より海を舞台にしたリゾートダンジョン、シーダンジョンがそちらのドアより入れるようになったワン」
「シーダンジョンの一階は危険なモンスターの居ない娯楽ルームウサ。ここで水が苦手な人は泳ぎの練習とかしてくれて構わないウサ。あ、でも戦闘能力の無い環境循環型モンスターがいるから攻撃しちゃダメウサよ」
「環境循環モンスターって何?」
「水を浄化したり毒素を無効化したりするモンスターニャ。ダンジョンの様な閉鎖環境だけでなく、公園や庭園の維持にも飼育される有益なモンスターニャ」
「へースゲェな」
ワウ達の水着姿にくわえ、フリーフロア自体が砂浜になっているので探索者達の気持ちも自然と弾んでくる。どういう原理か理解できないが海と思しき水辺まで見えているのだ。
「俺は普通のダンジョンに潜りたいんだが、シーダンジョンがある間は入れないのか?」
腕試しと修行目的の探索者がちらちらとラウの胸を横見しながら質問する。
「シーダンジョンは新しいダンジョンだからずっとこのまま稼動するウサ。通常のダンジョンはあそこの扉から入れるから心配ないウサ」
「そうか。感謝する」
探索者の男は煩悩を払うように頭を振り、ラウに礼を言ってダンジョンに潜って行った。
「ところでワウちゃん。シーダンジョンってどういう所なの?」
お目当ての3人娘との会話のチャンスだと思った探索者がコレ幸いとワウに話しかける。
「シーダンジョンは水属性のモンスターオンリーダンジョンワン。更に宝箱ガチャも水属性のアイテムが出やすくなっているワン。水属性のアイテムをレベルアップしたい探索者さんに便利なダンジョンワン!」
「なるほど。ダンジョンゲーの属性特化エリアって訳か」
コレまでプレイしてきたゲームの知識でダンジョンの傾向を推測する探索者達。
「更にシーダンジョンとこれから稼動する予定の属性ダンジョンの最下層では、各属性の最強アイテムが隠されているニャ。属性の覇者となりたいなら避けては通れぬダンジョンなんだニャ」
「「「「おおっ!」」」」
最強アイテムと聞いては黙っては居られない探索者達が興奮を顕わにする。
「でもでもシーダンジョンには水中エリアもあるから、水中探索用装備は必須ウサ! 普通のダンジョンのつもりで水中戦闘を行うと痛い目にあうウサよ!」
「けど、ガチャに新しく実装された水中装備を身に付ければ水中でも戦い易くなるワン! 勿論この装備は普通の川や海でも使えるから、今のうちに手に入れれば海で人気者になれるワン! 目指せ海のナンパ王!」
ワウが腕を振り上げると、むき出しになった胸がブルンと揺れる。
「「「「おおおおっ!!!!!」」」」
男達は3人娘の肌を間近で見る為にガチャへと突撃するのだった。
◆
「くくく、男共が欲望に塗れてガチャを回しています」
ダンジョンコアルームの一角、己の作業スペースでライナは愉悦に塗れた笑顔でガチャを回す探索者達の姿を見ていた。
「……魔王は俺だよな」
「そうですがそれが何か?」
ソレがどうしましたかと疑問符を浮かべた顔でラズルを見るライナ。
「うん、なんでもない」
ラズルは何も見なかった事にした。
「所で……」
「はい?」
「何で水着?」
ダンジョンコアルームでライナは何故か水着だった。ついでに言えばルームの床は砂浜模様になっており、壁は海の景色が描かれていた。
完全に海仕様である。
「シーダンジョンが稼動しましたから」
何を当たり前の事をとライナは首をかしげる。
「いや、ここは営業用のフリーフロアじゃないんだから別に水着になる必要は無いかと……」
「ラズル様は私の水着姿は必要ありませんか?」
そう言ってライナはラズルの腕に抱きつく。
当然その腕にはライナの柔らかな胸がモニュンと押し付けられる。
「必要ない事ないな、うん」
「それは何よりです」
なぜかラズルの膝の上に乗るライナ。
「何故膝の上に?」
「いえ、別に意味はありません。所で私とワウ達とどちらの水着姿の方が宜しいですか?」
(試されている!)
ラズルは直感的に理解した。
何かは分からないが、自分は試されている。
この答えによっては何か、重大な何かが決定すると。
故にラズルは断言した。
「モチロンライナにきまってるじゃないか!」
当然の回答である。
ここにいるのはライナだけ。
そしてライナは自らがダンジョン運営の為に生み出した片腕とも言う存在。
対してワウ達3人娘はバイトである。
経営者として彼女達の仕事っぷりは評価するが、それにふさわしい給料は与えてある。
休みも与えている。必要とあれば追加の休みだって与える。
だがあくまでもビジネスの関係である。
(どうだ!?)
ラズルはライナを見た。
「…………そうですか? そうですよね!」
ライナはニマニマと笑みを浮かべながら頬を染め、ふにゃんふにゃんと身を震わせる。
(勝った!)
なんとなくそう確信したラズルであった。
「さて、じゃあシーダンジョンに入った探索者の様子を見るとするかな」
ラズルはモニターにシーダンジョン地下二階の映像を映し出す。
『うわぁぁぁぁぁ!!!』
『神埼(男28歳)が巨大タコに捕まったぞ!!』
『や、やめろ! 水着を取るなぁぁぁぁぁ』
『ああ、神埼ぃぃぃぃぃぃ(男28歳)!!!』
「……」
ラズルはそっとモニターを消した。
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