第十六夜【アルバイト】
こんな夢を見た。
アルバイトに誘われ、友人と共にそれを受けた。
それは電子回路が埋め込まれた透明な道の上で、「中間地点」と書かれた立て札を持ち続けるというものだ。二人一組で行うのが通常らしい。
くじ引きの結果、幸運にも友人と組になることが出来た。
透明な道を歩き、同じくくじ引きで指示された場所に立つ。
木製のはずの立て札からは、時折バチバチッという静電気のような音がする。そういった時には必ず、下の道路も光を放っているのだった。自分はそれが起こった時間を何の気なしにノートの端に書き留めていった。
「それにしたって、この文字の酷さはどうだ」
友人はこのアルバイトが始まって以来、立て札の文字のデザインについて文句を言っている。手描きなのかフォントなのか分からないが、確かにその文字はがたがたと統一性が無く、有り体に言ってしまえばとてもダサいものだった。
描き直してしまえよ、と友人に言われるが、そこまでの自信も無く、また責任も取れないと思い、首を振ってそれを強く断る。
ふと立て札を裏返してみると、「つづく」と書かれていることに気付き、自分はそれを友人に告げる。友人もそれに初めて気付いたらしく、尚且つこちらの字面は非常に気に入ったらしい。それを顔の横にまで掲げると、携帯端末のタイマー機能を使ってまで記念の写真を撮り始めた。
しかし、いつまで経ってもこの道は誰も通ることがない。
この立て札は誰に対しての表示なのだろうか、と友人に言うと、友人は道の下を指さした。そこにあったはずの電子回路は消えており、透明な道の下には大きな魚が泳いでいる。これは氷だったのだと、今更ながらに気付いた。
「魚が文字を読めるかの実験だと聞いたよ。いや、頭の良い人が考えることは分からないね」
友人からそう教えられ、そんな実験があるのか、と驚いた。
それにしても、此処は一体どこからどこまでの「中間地点」なのか。その点については友人も聞いていないようだ。
立て札を下に向け直し、長らく考えているうちに氷が解けて――
ざぼんと、二人して水の中へと落ちた。
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