第十三夜【踊り】


 こんな夢を見た。


 小さな女の子が飛び跳ねている。

 どうやら道に書いた白丸でケンケンパをしているようだが、ケンケンの部分が随分長く続いている。自分はそれを、階段に腰かけて眺めていた。


 そのうち、わらわらと他の子供たちも寄って来た。

 そのうちの一人は靴下を脱いで裸足になった。ぽいと投げ出された靴下は途中で消えた。

 

 やがて子供たちは、それぞれが好き勝手にステップを踏み始めた。

 いつの間にやら、今時の、騒がしく、恐ろしくテンポの速い曲まで流れてきている。そういえば小学校ではダンスが体育の授業に取り入れられるようになったのだったか。道理で、どの子も発表の場のステージに上がれそうな程に上手いものである。


「やってみせて、やってみせて!」


 一人の子供からそう声をかけられ、よく見るとそれは自分の姪である。

 姪はまだ学校に上がっていないから、あの輪の中に入るのが難しいのかもしれない。

 

 地元の音頭踊りしか出来ないよ、と自分は苦笑交じりに答えた。

 今流れている曲に合わせて手足を動かしてみせることは、運動音痴を自負する自分には土台無理な話である。それでもいいからやってみせて、とせがむ姪に、仕方なく手振りを示す歌を口ずさみながら踊ってみせる。

 姪も一緒になり、拙いながらも踊るのを見て、この情景はどこかで見たことがあるような気がしていた。

 

 しばらくそれを続けた後で、姪は切り替わったように突然別の歌を歌いだした。

 自分の知らない歌であるが、それに合わせて声掛けや手拍子をしてやると、照れるような顔をしながらもクルクルと手を広げたまま回りだす。バレエをする人形のおもちゃのようだ。


「目が回らないよう、ほどほどに」


 後ろを歩きゆく人から急に声をかけられて、思わず姪と自分はビクリと肩を上げて身を竦めた。

 しかしそれを笑ったのは、確かに自分のよく知る人だった。何故ならそれは姪の母であり、我が姉だったからだ。


 振り返った先の笑顔に、安堵と共に詰めていた息を吐いた。

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