第十夜【行列】


 こんな夢を見た。

 

 長く長く、蛇行した行列を作る人々の中に居る。

 

 前も後ろもぎゅうぎゅうに詰められた人中ではあるが、暑苦しさは無い。だが、息苦しさを意識してしまう。おかげで目眩がした。

 自分はこの先に帰る家があるため、早く進みたいと思っている。

 

 どうもこの先で事件が起こったらしい。

 

 この行列はそのせいで作りだされたものなのだと、前を行く人々の会話から知った。ただ、その事件とやらがどういったものなのかまでは分からないようだ。

 

 ヘルメットを被った男が腕を回している。

 行列の先頭へ迂回路を教えている様子である。示されたのは、暗く、端から蛇や獣でも出そうな山道だった。皆が露骨に顔をしかめるが、そこを進むしか手は無い。

 

 ぞろりぞろりと黒い行列は沈んだ気持ちで歩き出す。

 湿った空気が蔓延した中、黙ったままで足を進めるが、歩きづらいことこの上ない。

 

 自分はふと目を逸らした。

 その先、斜め下にも道があることに気付く。

 

 舗装されたそちらの道を行けば良いのに、と思う。

 だが行列を乱すようなことはしない。息を吸い、吐いて。顔の前に飛び出た枝を手折り、のそりと進む行列の中に埋もれたまま、進んでいく。

 

 舗装された道を何かが運ばれてゆくのが見えた。青いビニールシートが被せられて、二人の男が運ぶ担架に乗っている。

 中身が見えるでもないのに、


 ――嗚呼、事件に巻き込まれた女だったものだ、


 と思う。


 ふと、自分は何故それが女だと知っているのか、疑問を持った。


 自覚は無いが、と、真っ先に自分が犯人であった場合を疑い、もしそうであれば何かに胸中を書き留めておかなければと考える。それはもしかしたら手記として販売が出来るかもしれない、と汚く打算的に思っている。


 舗装路と進みゆく道が合流した。

 運ばれるそれと行列の中の自分がすれ違う。

 

 その瞬間に、盛り上がるシートの色の青さをはっきりと知覚した。

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