第九夜【不調】
こんな夢を見た。
自分はなんでも、これ以上なく具合が悪いようだ。
それを気遣い、誰かが店の裏手あたりで休もうと提案してくれた。
それに同意を返す前に、裏口から出て来た店員に追い払われそうになる。そこでは立ち止まってはいけないとルールで決められているらしい。誰かが悔しそうに言い粘るのを聞いて、有難いけど仕方ない、とそれを諫めた。
すると、いつの間にか自分だけアルミの扉の内側に居た。気付かぬうちに店内に入ってしまったのかと思い、店員に頭を下げて急いで出る。
外の天気はどんよりとした曇り空だった。
そこへ、後ろから人がやって来た。どうやらそれは女である。そして、それが先ほどの誰かの正体だったのだと気付いた。
×××は何処にあるか知っているか、と女に訊ねられ、知らない、と答えた。女があまりにひどく大きな溜息を吐いたのを見て、必要ならば調べようかと言い募ったが、女は首を振って、大丈夫、とだけ言った。
その際にばさばさと広がる髪から水飛沫がとんできて、そうかこの女はシャワーを浴びてきたのだな、と気付いた。だって、到着は夜遅くなるからな。
自分たちは、どこかへ出かける前だったのだ。
地図を持って車の運転席に乗る。
走り出して間もなく、具合が悪かったのを思い出す。
途端にそれまで出来ていた運転が出来なくなってしまった。手が滑る、足が思うように動かない、加えてブレーキまで分からないとくればまったくお手上げである。
車を停めよう――はて、ハザードランプはどこにあるのか?
そんな状態でも、ワイパーだけは正常に動かすことが出来た。可笑しい。そんな場合ではないのに、それが面白くて笑ってしまう。
右左、右左、慌てふためく自分達を余所に、
右左、右左、規則正しくワイパーは動く、
右左、右左、時に速度を変えて。……それは反則だ。
それより早く車を停めなければ、と笑いながら何かのボタンを押した。
ぼすりという音がして、車は停まった。
パンクしてしまったタイヤでは、もう何処にもいけないだろう。
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