第七夜【時計】
こんな夢を見た。
ひどく縦長の部屋だ。
そこに、二人ばかりの人と共に途方に暮れて立ち尽くしている。
今が何時なのか、時間がやけに気になった。
向かって右側の壁にかかっている時計が正しいのであれば三時だが、自分の嵌めている腕時計はそれとは違う時間を示している。ただし、文字盤はよく見えない。
他の二人に時刻を訊こうとして、自分だけになっていたことに気付く。
どうやら置いて行かれたようである。結局、今が午前か午後かさえも分からないままだが、恐らく午後だろうと勝手に決めつけた。
縦長の短辺に両開きの扉が現れたので、開いてみる。
その先の部屋はもう縦長ではなく、だだっ広かった。壁際でカーテンがそよいでいるが、しかし窓は無いように思える。
そよぐカーテンに近づき、捲り上げる。やはりその裏に窓は無く、何故か、それはとても悲しいことのように思えた。
この状況と似たような本を読んだ気がして、思い出そうとするが、思い出せない。カーテンを下ろすと、それはもう、ひら、とも動きはしなかった。
気持ちを切り替えるためにカーテンも替えてしまおうと思い至り、長さを図るためにメジャーを探す。
うろうろしているうちに二つ目の扉に気付き、その先の部屋で小さな引き出しが並ぶ棚を見つけた。片っ端から開けては閉め、開けては閉める。しかしメジャーは無かった。分度器もコンパスも三角定規さえ揃っていたが、探し求めるメジャーはとうとう無かった。
諦めて、捜索の途中で見つけた水笛を取り出す。
それは小さい頃に行ったお祭りの輪投げの景品だった。記憶の中でのそれは桃色だった筈だが、どうやらこうして見直すと真っ赤だったのだな、と思い直す。
水を入れてピョルル……と鳴らしているうちに、これが時計だ、と閃いた。
それは自分にとって天啓のような閃きだった。
そうとなれば、時間によって鳴らし方を変えなくてはいけない。そんな使命感に駆られつつ、笛を鳴らすいくつかのパターンを考える。
やがて水が尽きたことに気付き、もう一度水を入れようとして、先程に水を入れた時にはどこでどうやったのか覚えていないことに気付いた。
水が尽きた水笛の色は、いつしか透明になってしまっていた。
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