第2話 絆の象徴

 夜伽巫女よとぎみこになってから約一ヶ月。布団に入ったら、毎晩のようにアイツがやってくる。

 別に毎日ハードな夜伽というわけではなく、疲れているときはこっちの体調にあわせてくれているみたい。それに、毎日寝落ちするわけでなく、「じゃあ、また明日」と終わらせてくれることも多い。テレビの電源ボタンを押すと映像がなくなるように、終わりにしよう、と思うと夜伽が終えることができる。


 ソフトなときは、寝ている布団の隣にアイツが一緒に転がってるだけ。もちろん抱きしめられるけど。部屋が暗い設定ということだと、部屋全体をイメージする必要がなくて、布団と、必要なら近くの明かりだけを考えればいい。最悪、布団の中にアイツと完全に潜りこむか、目を閉じた設定にするといい。そうすると脳への負担も少ない。


 アイツが以前、説明してくれた。

「考えてみろよ。人の子の脳や体はそもそも俺たちと夜伽をするようにできていない。念話くらいなら大して問題ないが、激しいことをやると負荷が大きい。だからこそ、ガッツリやるときは最大限に楽しまないとな。」


 さらに、布団、枕やパジャマ、下着をうまく使うことで夜伽がもっと楽しめることもわかった。実際の体の触覚が夜伽に強く影響を与える。

「実際の体の感覚と夜伽の体の感覚が近ければ近いほど、脳への負担が減るんだ。

 たとえば、下着姿で抱かれる夜伽をする場合、下着だけ身につけて布団に入るのが最も効果的だ。俺の愛撫は、彩佳の肉体が布団にこすれる感覚に近いから、それを活用する。このあたりは、夜伽をやっていくうちに体で覚えていくよ。

 覚醒状態をうまく管理することで、肉体を能動的に動かしつつ、夜伽をしっかり楽しむことができる。

 催眠さいみん術とオナニーを組み合わせる変態プレイが開発されているが、夜伽もそれの親戚みたいなものだ。ただ、録音してある音声をもとに楽しむのではなく、俺がリアルタイムで相手しているという違いがある。

 もちろん、夜伽のほうが圧倒的に楽しいぞ?」

 言うは易し、なんだけどね。

 夜伽をやればやるほど、私が人間でなくなっていく気がしてしまうけど、それより衝撃的だったのはこの話。

「人の子の気の流れを一時的に書き換えて、特定の能力や機能を強化することも可能だ。ドーピングのようなものだな。

 スポーツ選手は『ゾーンに入る』って言うんだっけ? 火事場の馬鹿力をむりやり、狙って起こすようなものだ。人の子の今の技術だと数値として測定できないから、ドーピング規定には絶対にひっかからない。もっとも、体に負荷はかかってるから、やりすぎると反動がきつくなる上、時間制限もある。だから、やるなとはいわないけど、程々にな。

 必要な状況になったら俺がサポートするから、彩佳あやかは安心して俺に身と心を任せてくれ。場合によっては強制的に発動させてもらうが、それは彩佳のために必要だからだ。」

 これ、スポーツ選手が聞いたら大騒ぎになるよね? と聞いたら、

「一部のエリート選手はこの技術を手に入れてるようだな。それに、スポーツ選手以外にもゲッフンゲッフン。」

 だって。そのうち、私も美味しい思いをできるのかな?


 そして、ハードな夜伽のときは、主に例の神社の一室みたいなところで、体をなで回されたり、抱きつかれたり、あの布団の中で現実ではありえない襲われ方されたり。心なでなでとか。

 そうそう、あの部屋、徐々に置物が増えてるけど、何で? って聞いたら、

「新婚の夫婦がいろいろ物を集めてるみたいでいいでしょ?」

 とからかわれた。後で教えてくれたけど、本当は、夜伽巫女としての修行の一環らしい。より複雑な光景を認識する脳の訓練だとか。

 絵描きの才能があるから彩佳は上達が上手い、そしてこの訓練で絵がもっと上達する、と言われたけど、まあ、複雑な気持ちがするけど、ほめられるのはちょっとうれしいよね。

 和歌子わかこのエロノロケがあったら、それに近いプレイをすることが多いんだけど、何故か、必ず着衣プレイなのがアイツのこだわりみたい。コスプレ好きというか、そういう性格なんでしょ。変態。エロ狐。


 毎晩のキスは絶対に欠かさない。もちろん、舌をからませる、ねっとりしたキス。ディープキス以外はキスじゃない! というくらい、激しいというよりは濃厚なキス。口の中を犯されている感じがする。

 そして、キスをするたびに、幸せに、そしてアイツから離れられなくなっていく気がする。恋人なら当たり前だよね、とバカップル脳な感じについ考えてしまう自分に自己嫌悪じこけんおを感じつつ、それでもちょっと幸せを感じる。照れくさいけど。


 さて、昨日の夜、アイツが

「彩佳、明日の土曜日はデートだからしっかり休んどけよ!」

 と変なことを言っていた。

 私に彼氏はいないからデートしようがないんだけどね。そして、今日は家族もいないし、ゆっくり受験勉強……じゃなかった、休もうとしてた所、アイツの声がした。

「おい彩佳、そろそろ出かけるから、かわいらしい格好に着替えてくれ。」


 まだ午前中だよ? 夜伽にはまだ早いよ?

 それに、出かけるって、デート?

「昨日予告しただろ? 三山みつやま駅のショッピングセンターまで買い物に行こうぜ。誕生日にもらった五千円、まだ残ってるでしょ?それ持っていけよ。」

 おーい。なんでアンタがそれを知ってるのかなあ?

「お前の脳の中はいつでものぞけるからな、お前のことは誰よりも知っている。

 それに、彩佳が幸せに毎日を過ごせるよう、彩佳の心のメンテも俺の仕事だ。」

 乙女のプライバシーは尊重しなさい! と叱ろうと思ったけど、心のメンテは美味しいかも、と現金なことを考えてしまう。


 それにしても、脳を覗けるということは、もしかして、もしかしてですよ? 私がお風呂に入って体を洗っている時の体の感覚と鏡に映っている泡だらけの体とか、このスケベ狐はじゅるじゅるとヨダレを垂らしてゲヘゲヘとやらしく笑いながら堪能しているわけですね?

「ギクッ。」


 お風呂覗きに着替え覗き、トイレも覗いてるんだ!

 その上、む、胸の形をやさしく手で整えながらブラジャーをつけているところも、こいつは絶対に味わっている!

「ギクギクッ。今日の彩佳はやけに鋭いな。

 それにしても、夜伽に期待しながら悶々としている昼間の彩佳なんて最高だぜ。」


 ねえ。いい加減怒るわよ?

 そういえば誰か言っていたっけ。人の心を読むサトリだっけ? サトラレだっけ? っていう怪物の撃退方法。サトリが心を覗こうとしてきたら、普通の人なら吐気がするような思いっきり気持ち悪い妄想をしてやるんだって。そうしたら、サトリは心が耐え切れなくなって逃げていくらしい。

 ヒカル様? 覚悟はできているんですか?

「彩佳、お前が自爆したら意味ないんだからな?

 それに、俺は必要なら彩佳からの感覚を自由に切れるんだよ。盗聴みたいなものだ。 彩佳がいい思いをしている時だけ繋いで、やばくなったら遮断するか、最低限にする。たとえば、だ。彩佳が不味い飯を食ってる時は彩佳の味覚の情報を遮断して、うまいものを食ってる時はしっかり繋ぐんだ。

 彩佳が夜伽で俺を求めてくるときは全力で繋ぐ。決定権は全て俺にある。」

 ずるい! ずるすぎるよ! そんなのアリ?

「こ、この話はこ、これくらいにしておこうぜ。」

 あー!! やっぱり! この変態覗き魔、逃げようとしてる!


 やっぱりヒカル様は実にいやらしいエロ狐なんだね。今度、一回厳しく叱りつけてやらないと。もし裁判長が私の彩佳裁判があったら、変態被告狐のヒカル様にどんな刑を宣告しようかな。

 ヒカル様の恥ずかしい姿を見せてもらおうかな。そうだ、犬ってお腹を上に向けてクーンクーンって鳴きながら転がるんだっけ? ヒカル様にもこのポーズとってもらおう。そして、上から乗りかかって脇腹をいっぱいくすぐってやるんだ。「彩佳、参った!」と言っても許してあげないんだから。狐の脇毛って高級品なんだっけ? 堪能してやる!

「本物を触ったことがないから感覚がわからないくせに。

 さて、無駄話はこれくらいだ。

 本題に入るが、今日は、俺との絆の象徴を買って欲しいんだ。」


 絆の象徴って何よ。

 嫌だ……といっても、いつものように拒否権はないんだよね。


「さすが俺の彩佳だ。この現実にだいぶ慣れてきたようだな。

 さて、デートと言っても、俺がお前にプレゼントを選ぶんだ。一人でプレゼントの買い物してても、デート前に彼氏にプレゼントを買う様子だったら、誰も怪しまないでしょ? 実際は俺がお前の買い物をじっくり見ながら、こんな感じでお前の脳に囁きかけるんだけどね。

 デート前と見せかけつつ、実はデート中、というのも俺達だけの秘密として盛り上がれるね。」

 でも、友達に見られたらどうするのよ。

「ずっと黙ってたけどついに彼氏出来たか?」

 とか学校で噂されちゃうよ?


「俺を誰だと思ってる? 人払いくらいはちゃんとやるさ。

 俺と彩佳のまわりに、友達とかお前の知ってる人は来ないようにするし、そして周囲の人間は俺達のことを特に気にならないと感じてしまうようにする。

 彩佳も、ちょっと通りすがった通行人の顔なんて、誰も気にしないだろ? 他の人も同じだ。何か幸せそうにしている恋してる乙女がいたなー、と感じて、それでおしまいだ。それが彩佳だと誰も思わないさ。

 親も夕方まで帰ってこないだろうけど、それまでにはちゃんと家に帰ろう。」


 恋してる乙女って誰よ。

 で、人払いとか、ずいぶん便利な力を持ってるけど、本当なの?

「何度も言ってるだろ? お前の幸せが俺の幸せだって。

 彩佳が学校中の噂になって困ったら、彩佳は俺のことを一生許さないだろ? 俺もそれは御免だ。彩佳は俺が好きで好きでたまらない、大切な夜伽巫女からな。そこのところは俺を信用してくれ。

 それとも、あれだ、何か奇跡でも見ないと信じられたいというのかい?」

 いまいち信じられないな。


「俺達が人の子の行動に干渉するにはどうすればいいと思う?

 もちろん、俺達には肉体がないし、人の子の世界の法則を捻じ曲げることはできない。」

 ……どうみても無理でしょ。

「人の子の脳をいじるんだよ。

 夜伽できることでわかったと思うけど、俺達は人の子の脳に干渉することができる。

 たとえば、冷蔵庫に肉と魚があったとする。

 今日の夜ご飯、どちらにしようか迷ってる人に、

『今晩は肉だ』

 と俺がその人の無意識に強く囁やけば、その人はぼ確実に肉を選ぶね。


 でも、実現可能性が殆どないことは無理だ。

『電車で1時間のステーキハウスに行け』

 と俺が操ろうとしても、まず不可能だな。

 確率はある程度いじれるけど、実現可能性がほぼ皆無の結末は実現できない。万能ではないんだよ。


 人払いは、彩佳にとって都合が悪そうなことをしそうな人に、その選択をさせないよう囁くことで可能となる。彩佳にとって都合がいい確率を選択するんだ。」

 よくわからないけど、じゃ、わかった。信用する。


「せっかくだから、この機会に彩佳にもう少し教えておくか。

 人の脳をいじることで、何かに気づかせたり、また、何かに気づかせなかったり、という操作もできる。変な思い込みをするように誘導したりとか。

 また、人の子に直感的に危機を回避する行動を取るように仕向けさせたり、また逆に都合が悪い行動をとって痛い思いをさせたりすることも可能だ。

 そして、人の心だけでなく、確率で決まるような話なら適応できる。天候とかもな。台風を急に消すとかは無理だけど、雨雲をほんのちょっと逸らす、雨の降り始めをほんのちょっと遅らせるくらいなら、かなり上位の者ならいけることもある。

 神による思考操作、確率操作、結果の操作が、いわゆる神の加護とか祟り、神罰の原理だな。」

 天罰が偶然でなくてわざと引き起こされるって、なんか怖い話。


「もちろん、下級の神使に頼んでも無理だ。干渉の原理を把握し、人の子の世界の理を知り、そして干渉する対象の本質を理解しないことには、干渉はできない。子供に難しいお使いを頼むくらい、無理な話だ。

 何に干渉するかにもよるけど、いずれにせよ、俺達の誰もが簡単に発動できるようなスキルではないことは知っておいてほしい。」

 ヒカル様はすごいのね。


 さて、デートの服も一緒に選ぶとか言うんでしょ? 変態コスプレマニアとして。

「さすが彩佳、俺のことをよくわかってくれてるじゃないか。

 彩佳は夜伽巫女だから、巫女っぽい格好がいいと思うけど、さすがに巫女装束みこしょうぞくはアウトだよな。そもそも持ってないし。」

 当たり前でしょ?

 それとも何? 巫女装束を通販で買えというの?

「少なくてもこの家には置けないよな。」

 わかってるじゃない。で、どうするの?


「そうだな、清楚な感じがいいよな。

 特に、下はふんわりしたスカートに限る。どれがいいと思う?」

 迷うなあ、と言っても、選択肢はこのへんかな?

 あの変態が好きそうなものを選ぼう……って、別にアイツの喜ぶ顔が見たいなんてことはない。

 よし、この白いひざ下チュールスカートなんてどう? ふんわりしてるでしょ?

「グッジョブ彩佳! 俺の好みをよくわかってるな!」

 えへへ、褒められちゃった。嬉しいな。


「で、上はどうする?」

 どんなのが好み?

「そうだな、何かさわやかな感じでよろしく!」

 あちゃー。アイツに好みを聞いてしまったよ。何やってるの私。心が汚染されてる。

 じゃ、上はこのちょっとウォッシュの入ったデニムジャケットで。暑いから、下はキャミソールかな。どの色がいい?

「せっかくだから下着と同じ色で。

 彩佳がこのキャミソールと同じ色の下着を着て俺とデートしてる、って、俺と彩佳だけが知ってる。俺が彩佳のキャミソールを見るたびに、彩佳の下着を想像して萌える。こういう秘密っていいよね!」


 やはり変態だ。といっても、アイツが喜んでくれたほうが、やっぱりうれしいよね。

 よし、フリル付きの水色のキャミソールにするか。パステルカラーでかわいらしいし。

 親指立てて喜んでる誰かさんが近くにいるような気がするけど、気のせいだよね、うん。


 髪はツインテールにしよっと。コスプレマニアって妙にツインテールが好きなんだよね。でも、髪の毛が頭の上のほうから垂直にでているのは、ガキ臭いからアウト。この歳だと「あざとい」を通りすぎて、キモい。頭の低めのところで髪が下を向くように結んで、髪はほんのちょっと巻く。縦ドリルとか、リアルでやってる人はいないよね。さりげなくが重要。

 そうそう、夜伽巫女になったから、髪を少し伸ばすようにしたんだ。ヒカル様、喜んでくれてるかな?

 滝のような嬉し涙を流している誰かさんが近くにいるような気がするけど、気のせいだよね、うん。


 さて、お気に入りの腕時計をして、出かけますか。

 大人っぽく、ちょっとだけヒールのある白いサンダルを選んで、ヒカル様と二人でお出かけ、と。えへ。


 ……ちょっと盛り上がりすぎてるかも。これって恋なのかな?


 ◇ ◇ ◇


 そういうことで、最寄り駅の南大玉みなみおおたま駅から電車で三駅の三山駅のショッピングセンターに出かける私。三山駅は路線が分岐する駅ということもあり、交通の要衝だ。長距離を走る特急の停車駅でもあるから、駅前に大きいショッピングモールがいくつかあったり、結構栄えている。


 ヒカル様は正しかった。知ってる友達は誰もいないし、私を不審者のようにジロジロ見る人もいない。もちろん、ナンパしにやってくるようなキモい男もいない。携帯会社の宣伝やってるティッシュ配りの人からティッシュもらったけど、他の人と同じように配ってたし、私の横にもう一人いるような素振りも全く見せなかった。


 そういえば今日のヒカル様は声だけなのね。

「最初のデートだし、声だけにしておこうと思ってね。だってさ、頻繁ひんぱんにキョロキョロ横見てたら、はたから見たら変な人に見えるでしょ? 俺は、彩佳に恥ずかしい思いをしてほしいわけではない。照れてる姿はかわいくて萌えるけどな。」

 気配りしてもらってる、んだよね?

「彩佳は俺の大切な夜伽巫女だからな。」

 心の底から愛されていることが、心の底から嬉しい。

 数秒後、そう感じてしまった自分がちょっと怖くなった。


 ◇ ◇ ◇


 で、指示通りのショッピングセンターについたけど、どうするの?

「そうだな、俺からお前にプレゼントを買いたい。もっとも、実際に買うのは彩佳で、使うのは彩佳の金なんだが、しょうがないだろ。俺、肉体も金も無いんだからさ。」

 ほんと、変な関係だよね。

「女の彩佳が彼氏にプレゼントを買うふりしてプレゼントを買うんだが、実際は男の俺が彼女である彩佳のためにプレゼントを選んでる。変な感じだが、それもまた貴重な、倒錯とうさく的な経験だろ?」

 貴重で倒錯的というけど、これが私達にとっては普通なのね。

「物分りがよくて助かるぜ。」


 で、何を買うの?

「俺と彩佳の絆の象徴だ。

 何回も言ってるけど、俺は彩佳の世界に物理的に存在できない。だから、人の子の世界に存在する何かを、俺の象徴として、できるだけ身につけて欲しいんだ。

 お守りみたいなものだ。他の人にはお守りに見えないけどな。」


 で、具体的にどんなものを考えてるの?

「俺は銀狐ぎんぎつねで、銀にこだわりがある。

 幸い、ここにはシルバーアクセサリーの店があるだろ?

 値段も手頃だし、そこに行ってくれ。」


 ◇ ◇ ◇


 シルバーアクセサリーのお店に到着。

「いらっしゃいませ!」

 と店員が声をかけてくれる。

 店内に客が5人。みんな知らない人。誰もいない店に入るのは気が引けるけど、人に紛れることができたら少し安心。店員が粘着してくることもなさそうだし。


「いいタイミングで来れただろ?」

 言われてみたら確かに。

「彩佳のために頑張ってみたんだぜ。」

 ある意味不気味だけど、これがヒカル様の力なの?

「まあな。

 夜伽巫女を幸せに出来るだけの力がないと、夜伽巫女を持つ資格が無いと俺は思う。」

 調子いいことばかり言いながら、しっかりしたプロ意識のようなものがあるのが凄い。コイツは自称・上級神使だし。


 で、具体的には何を見たいの?

「恋人は指輪を交換し、左手の薬指につけるのが人の子の習慣と聞いている。となると、選択肢は一つだ。左の薬指につける指輪をお願いね?」

 うわ! 無理! 絶対無理! 恥ずかしすぎるよぉ。

「できるだけ身につけてほしいからね。結婚指輪みたいで自然でしょ?」

 ちょっと、本気なの? 学校に指輪つけていけというの? さすがに怒るよ?

「えー? だめ?」

 まだ早いよ、じゃなかった! 何か違うものにして!

 ……まだ早いって、何考えてるのよ、私。もう。何か変なことばかり考えてる。

「ちぇっ、残念。彩佳がそこまで反対するならあきらめるか。グスン。」

 ……アンタ、嘘泣きするキャラだっけ?

「冗談だよ、冗談。俺は彩佳が本気で嫌がることはしないから。」

 そう? よかった。


「おう、そこにいいものがあるじゃないか。

 シルバーアクセサリーのモチーフの意味一覧。」

 へぇ。こういうのがあると、私みたいによくわからない人でもプレゼントを買いやすいよね。

 ……って、何で私がヒカル様にプレゼント買わないといけないのよ?

 今日は逆よ、逆!

 なんかよさ気なものは、えーと、……

「男性でも女性でも問題ないようなモチーフがいいよな。

 だってさ、彼氏へのプレゼントを装って買うのに、最終的に自分が使うのだろ? 彼氏に贈ってもおかしくないモチーフで、自分が使えそうなのを選ぶといい。」

 無駄にアドバイスをくれるヒカル様。妙に頼りになる。

 この時点でハートとかリボンとかは消えるよね。


「俺とお揃いで持っててもおかしくないの、どれだろうな?」

 お揃いって……買うのは私の分だけだよね?

 鍵と鍵穴もよさそうもしれないけど、おそろいにならないよね。

 クロスとか?

「悪くない。ただ、もうひと捻り欲しいところだ。」

 え?

「クロスにそっくりな、このダガーのペンダントだ。

 クロスの意味、『まもり』だな、これにさらに『剣』の意味を重ねる。

 俺から彩佳への、破邪はじゃの護り刀の贈り物だ。

 これが、俺による、夜伽巫女のお前への護りの象徴だ。」

 私が護られる? ……ちょっとうれしいかも。

「ということだから、お前が気に入る、何か手頃なものを見繕ってくれ。」

 うん、わかった。ということは、このコーナーね。

「別に大きかったり、高いものでなくてもいいけど、首からかけてもおかしくない大きさにしてくれ。」

 ゴツいものが多いけど、アウトだよね。大きいと高いし、女の子向けじゃないし。

 意外と見つからないんだよねー。


「でもさ、考えてみろよ。いいものが無いのなら、そもそもお前は今、この店にいないぞ?」

 なんか、ずいぶん怖いこと言ってますけど。

 となると、ここではない、まさかセールコーナー?


「いいタイミングじゃなかったら、お前は今、ここに来ていない。」

 まーた、変なこと言ってるよ。


 ……って、ちょっと、30%オフのタグがついているこれ、ぴったりじゃない!

 長さが4センチくらい? 500円玉よりちょっと大きいくらいの長さ。ちゃんとチェーン通す穴があって、無骨ぶこつというよりは、何か優しい感じ。

「ちゃんと見つけてくれたじゃないか。

 あとは、チェーンだ。実は、こっちのほうが本命なんだが。」

 え? 何で?

「さすがに常時、ダガーのペンダントつけてるのは厳しいよな? 学校にも持ち込みにくいし、寝る時も邪魔だし。

 でも、チェーンはいける。手首にも巻けるし、足首に巻いて靴下で覆うこともできる。

 そういうわけだから、銀の細いチェーンをセットにしてくれ。」


 はいはい。この、セールコーナーの50%オフのでいいよね?

「本当はショーツにチェーンとペンダントつけてくれてもいいけど……」

 このエロ狐! せっかくのいい雰囲気をぶち壊さないでよ!


 ショーツの横にチェーンを巻きつけてペンダントをぶらさげる自分を想像する。ダガーのペンダントが素肌を撫でる。エロ狐にエロいことをされている気分になりそう。

 もう、スケベ! 変態! 変なところをクンカクンカされてるみたいで嫌!

「まあ、チェーンだけでも護りになるけど、できるだけダガーもつけてくれ。

 じゃ、会計だ。」


「これ、お願いしまーす。」

「2点で5800円ですね。

 お客さん、ラッキーですよ。2つとも、おとといからセールになったんだから。」


 ……え?ちょっと。何よこの偶然?

「プレゼントとしてお包みしましょうか?」

「……はい、お願いします。」

「この後彼氏にプレゼント? 頑張ってね。」

 何か照れるんですけど。

 それにプレゼントは私から彼じゃなくて、彼から私へのプレゼントです。

「はい、5800円ちょうど頂きます。商品はこちらです。」


「ありがとうございましたー!」


 ねえ? ちょっと、あれ何よ?

 おとといからセールって。ただの偶然じゃないよね?

「だから言っただろ? 今日はデートだって。

 ちなみに、今日出るのがもう少し遅かったら、親が帰ってくる前に家に戻れない。明日の日曜に来たら、午前中はお友達が5人くらいでこのショッピングセンターに遊びに来て鬼ごっこ状態、昼頃にはあれは売れて無くなっている予定だ。

 今日の午前中に出かけるしかチャンスなかったんだよ。」

 そう、なの? そういえばクラスで誰か言ってたっけ。みんなで買い物に行こう、とか。


「足出ちゃってごめんな。

 でさ、早速つけてよ、俺からのプレゼント」

 わかった。

「やっぱり似合うなー。彩佳にぴったりだ。」

 そう?

「お手洗いかどこかの鏡で見てみろよ。きれいな夜伽巫女がいるぞー。」


 ……これって、うれしいことだよね。きれいってほめてもらえた。


 ◇ ◇ ◇


 このまま帰って一人で食べるのもちょっとさびしいので、お昼をここで済ましちゃいますか。

「牛丼! 牛丼! 特盛り牛丼!」

 あのね。食べるのは私なのよ?

 特盛りなんて無理でしょ! 私、そこまで大食いじゃないんだし。


「じゃ、フードコートできつねうどん大。」

 トッピングのせると一気に普通の値段になる、格安に見せかけて実際は格安じゃない讃岐うどんの店ね。

 でも、フードコートでぼっち飯って、哀愁ただようから嫌なのよね。おしゃれしてると特に、デートでふられてやけ食い感がして。

 あと、ヒカル様的に「大」は外せないのね。


「ちゃんとツッコミいれてくれる彩佳がかわいいなー。」

 おだてられてるとわかっても、ほめられると少し嬉しい。

 胸のダガーペンダントも、これまた少し嬉しい。


 一人でも怪しまれないとなると、あの喫茶店あたりどうかな? テイクアウトでもいいし、店内で飲食もできる。タバコ吸いのオッサン御用達の喫茶店とはぜんぜん違う、おしゃれな内装がポイント高い。軽食も売ってるし。よし、そこにしよう。

「今日のところはこれで手を打つか。」

 あ、絶対何か企んでる。


「すいませーん。アイスコーヒーの『L』……じゃなかった、Sサイズと、このベーグルサンドください。」


 おーい。ヒカル様?

 私に「L」って無理やり言わせたでしょ?

 私はそんなに飲めないの。

 え? もしかして聞いてない? 都合悪い時だけ消えないでよね。もう。嫌い。


 ◇ ◇ ◇


 お昼を食べてる時、アイツの気配がしなかった。いたずらを怒られていじけてたのかな? それともベーグルサンドあまり好きじゃなかったのかな? 気に入らないことがあると感覚の共有を勝手に切れるっていってたっけ。ほんと、便利すぎる設定だよね。


 あれこれ、いろいろアイツのことを考えていたら、気づいたらお昼を食べ終わってた。なんだかなー。


 ◇ ◇ ◇


 ここのショッピングセンターには、ちょっと大きめのスーパーがある。保存の効くもので珍しいものがいろいろ置いてあって、近くではここでしか買えないものも多い。ネット通販で簡単にポチれる年じゃないので、ここで買うのがベストだったりする。

 お菓子とか、レトルトカレーとか、珍味とか、すごい種類のお酒。醤油だけで10種類くらいとか、調味料もいろいろ揃ってる。お菓子でも、ポテトチップスとかせんべい的なものが多いから、どうみても酒飲み向けの品揃え。だけど、クッキーとか、あと和菓子も多少は売っている。

 お茶類も地味に充実しているので、リラックスするというのがウリの、香り付きの紅茶を購入することに決定。ついでに夜食用に輸入物のチョコバーも。勉強していると甘いものが欲しくなる。


 カートに欲しいものを入れて、もうすこし店内を見ながらレジに向かおうとしている時、お約束のように声がした。

「俺が後ろからお前を抱えてカート押してるところを想像してよ。」

 いつの間に戻ってきたんだろう。

 後ろから抱かれるとちょっとうれしいけど、正直邪魔だよね。


 ……そして、なぜか私がカートをお酒コーナーに向けたくなるようにしむけるの、どうにかならないかな?

「お神酒みき! 大吟醸だいぎんじょう! お神酒! 大吟醸!」

 はいはい、わかりました。ここまで来ると駄々っ子の相手をしているお母さんの気分です。

 でも、私は未成年なので買おうとしたら捕まりますよ?

「じゃ、せめて日本酒コーナーの前を通ってくれ!」

 だから、未成年がお酒コーナーをうろうろしたら、店員にマークされるでしょ?

「せめて、他のコーナー行くふりして前を1回だけ通って!」


 ……しょうがない。これで妥協しておくか。

 放っとくといつまでも駄々こねるんだろうし。

 結局、指輪買わなかったから、これでおあいこよね。

「サンキュー彩佳!」


 ◇ ◇ ◇


 それにしても、あまり重たいものを持ち帰りたくないので、結局、スーパーで買ったのはここでしか買えないものを少し。ここから牛乳とか、ネギとか、かさばる野菜とか持って帰るのも嫌だしね。デートで生鮮食料品買うのって、ちょっと照れくさいし。今晩、ご飯と一緒に私も食べてね、って感じで。

 って、何考えてるのよ私。

 ショッピングセンターを出る前に、白シャツに青デニムパンツ、黒っぽいスニーカーを着ているマネキンがいて、何故か、「ちょっとかっこいいかも」と思ってしまった。


 ◇ ◇ ◇


 今日の収穫は、食べ物少し、画材少し、そして、シルバーアクセサリー(ダガーモチーフペンダントとチェーン)。最後がなんか嬉しい。

「少し早めだけど帰るぞ!」

 と言われたから、素直に帰ってきたんだよね。もう少し遊んでたかったけど、

「俺が支えきれないぞ!」

 と強い口調で言われた。

 支えるって何よ? と思ったけど、たぶん人払いの確率操作が厳しくなるのね。

 まあ、無理なことを言って私自身が嫌な思いするのも嫌だからね。

 結局、友達には誰にも会わなかった。ヒカル様すごい。


 家に帰って、改めて自分の姿を鏡に移すと、ついにやけてしまう。ヒカル様の好みの服を着ている私。そして、私とヒカル様との絆の象徴である、ダガーモチーフのペンダントがチェーンからぶらさがってる。こうすると、ヒカル様がそばにいて、護ってくれてる気がする。好きな人との秘密を身に着けている感じが、ちょっとうれしい。

 ペンダントに頬ずりしたら変態だよね。

「すればいいのに」

 雰囲気壊さないでよ! もう。

 でも、大切にするからね。ありがと。


 ◇ ◇ ◇


「おやすみなさーい!」

 結局、部屋にいる間はずっとペンダントを首にぶらさげてた私。さすがに親と夕ご飯食べる時は外してたけど。

 これからも、できるだけペンダントを身につけてよう。

「ショーツに巻きつけとけ」って、本気だったのかな? でも、寝るときはチェーンを左手首に二重に巻いておこう。45センチだから、ちょうどいい。


 ◇ ◇ ◇


 夜伽は今日のデートの帰り道から始まる。

 隣にヒカル様がいる。

 いつもの銀髪に、白いシャツを当然第二ボタンまで開けて、青デニムパンツ、そして黒っぽいスニーカー。

 これ、ショッピングセンターで見たマネキンの服だ!

 私はデートのときに着ていた服をそのまま着ている。


「さて、早く帰ろうか。冷凍食品、溶けちゃうし。」

 彼の手にはスーパーの袋。牛乳とか卵のパックとか、キャベツとか。ネギまで刺さってる。

「ランドセルのリコーダーと買い物袋の大根かネギは外せないよね。ごぼうでもいいけど。上級者は長芋だ。」

 荷物持ってくれてる優しさがうれしい。


 ……ってなにこれ?私達、同棲どうせいしてることになってるの?

「当たり前だろ? そういえば、気づいてた?」

 え?

「俺達、変則ペアルックだね。」


 どういうこと?

 あ、よく見たら!

「彩佳が、上から黒髪、青デニムジャケット、白チュールスカート、銀色っぽいサンダル。

 俺が、銀髪、白シャツ、青デニムパンツ、黒っぽいスニーカー。上下ひっくり返したら色が同じだね。」

 言われてみたらそうだ!


「普通のペアルックもいいけど、こういうのも、悪くないでしょ。

 一緒に服を選ぶくらい仲が良くないとできない芸当だよね。」

 そうだね。言われてみたら。

 通行人はいまいち気にしてないみたいだけど、こういう関係って、何かうれしい。

 でも、普通のペアルックなのも一つだけあるよ? シルバーのペンダント。これはペアルックというより、おそろいだね。


「さて、ただいま。買ったもの、冷蔵庫に入れないとね。」

 帰った家は、いつも住んでる家。ヒカル様と二人で住んでることになってるのかな?


 ◇ ◇ ◇


 部屋に戻ったらヒカル様がベッドに座ってる。

「おいで、彩佳。」

 隣に座る私。ヒカル様が肩を抱いてくれる。


「そうだ、彩佳。俺の着てるシャツ、お前が着てくれないか。」

 いきなり脱ぎ出すヒカル様。

 ちょっと、照れくさいよー。どこに目をやったらいいかわからない。

「大丈夫。俺はちゃんと上を着るから。」


 こういうとき、ブラなしで肌の上に直接着たほうがいいのかな?

 って、何を言ってるのよ、私。そんなことあるわけないじゃない。

 ジャケットとキャミソールを脱いで、ヒカル様の脱ぎたてのシャツを着る。

 何か温かい、不思議な感じ。


「どう?」

 ヒカル様はさっきと同じシャツを着てる。シャツが複製されるなんて変な気がするけど、夜伽の世界だからなんでもできるのだろう。

「こうやって見ると全身白で、花嫁さんみたいだね。」


 ……うわっ、ヒカル様かなり攻めてきましたよ!

 確かにシャツは白いし、下は白いスカート。

「サムシングブルーだっけ? 水色の下着をつけてるし。」

 あ、どの下着を着ているかまで知られてるんだっけ。

 ウェディングドレス姿の私をヒカル様が楽しみにしてるなんて、ちょっとうれしいかも。

 ……って何流されてるのよ、私。最近の私の考えかた、おかしすぎるよ。

 もう少しで隣に白のタキシード着て立ってるスケベ神を想像してしまうところだった。

 思考停止気味に凍ってたら、いきなり抱き寄せられた。

 また、いつものような、口の中をいじられるようなキス。

 ヒカル様、そんなにキスが大好きなのかな?

 少し、頭がぼーっとする。


「彩佳、お願いがある。」

 何よ? 改まって。

「俺が後ろ向いてる間に、裸ワイシャツやってくれないか?」

 い、いきなり何言い出すの?

「次は、俺とペアルックになって楽しもうぜ。

 あ、ダガーのアクセサリーはつけたままでね。

 恥ずかしかったら、裸ワイシャツになったら布団の中にいてよ。

 布団の中だと、恥ずかしく無いでしょ?

 パジャマの上だけ着てる感じで。」


 相変わらず言ってることがずれてるけど、

「彩佳、俺のことが好きだろ?」

 その言い方、ずるい。ずるすぎる。


 やるしかない、わよね。

 衣擦れの音が伝わってる気がする。

 大好きなヒカル様に喜んでもらえるかな?

 一回全部脱いで、あらためてワイシャツだけ羽織る。


 もう、いいよ。布団のなかだからよくわからないと思うけど。


 私をいろいろなでなでして、本当に裸ワイシャツか確かめるヒカル様。

 布団をどけて見ないで、いやらしく手で触って確認するところがヒカル様らしい。


 恋人つなぎで擦り寄るヒカル様。

 腕枕してきて、体をぎゅーっと引き寄せてきたと思ったら、私の髪をいじる。

 太ももを外側も内側も両方撫でる、耳を舐める、首筋にキス、頬を私の顔にすりすり、と徹底して優しく攻める。スキンシップが大好きなヒカル様。

 ヒカル様にはヒゲが全然生えていないので、すりすりしても痛くないどころか、気持ちいい。


 今日、私はヒカル様に抱きつくことが許されていない。

 枕を抱きしめて、一方的に攻められているところを抵抗せずに耐えるよう要求されている。こうすると、無理やり犯されている感じがしてゾクゾクする。

 ヒカル様は自分が攻めたいところを攻められるように、私の体の向きを横に転がすように変えていく。枕と一緒に何度も転がる私。気持ちよさで酔いそう。


 ついに私の体の下にあるヒカル様の右腕が、私の胸を触ってきた。

 ボタンを器用に一つ外して、その隙間から入り込んでくる手。

 なぜか乳首を狙わず、胸を揉んでばかり。

 たまには乳首も……って思ってしまった私。

 いきなり胸から手を横にもっていくヒカル様。

 そして、私の胸の横をなでる。

 いや、なでる、じゃなくて、指をすべらせるヒカル様。

 私の肋骨を一本一本、実感するように指を動かす。

 体の上から下へ、下から上へ。

 だめだよ、肋骨は上下に動くようにできていないから。

 くすぐったいよ。やめてよ。

 そう思ったらやっとやめてくれた。

「ごめんな、彩佳。」

 お詫びに乳首を指でこねるヒカル様。変態。


 ヒカル様に徹底的に攻められてヘロヘロになった私にとどめを刺そうとするヒカル様。

「さて、彩佳のお腹を直接、気持よくしちゃおうかな?

 シャツの下から彩佳のお腹を撫でている俺の手が、彩佳のお腹の中をだんだん温めていくイメージを感じてね。」


 ハードじゃないように見えて、実はすごいハードなことやってるのかも。

 頭は混乱してるけど、正直な体は気持ちよくなる一方。

 お腹が気持ちいい。


 え? もしかして子宮を直接触ってるの?

 赤ちゃんができる大切なところを犯されてる私。

 子宮を外側からなでなで。


 次は……え?膣を外側から撫でるの?

 子宮からアソコにつながる筒。それを筒の外側からくにくに、もみもみされる。

 変態すぎる。いやらしすぎる。

 普通のセックスだと膣の内側をこすられるけど、今は外側をこすられる。

 膣の外側は性感帯じゃないんだろうけど、体内を犯されている感覚が気持ちいい。

 なにこれ。すごいかも。


 次は卵巣もなでられる、というか、揉まれる。

 卵巣は気持ちがいいというよりは、アブノーマルなシチュエーションにドキドキする。

 現実だとありえない陵辱に頭がショート寸前。


 手が子宮に戻る。

 深く考えちゃダメ。

 今は、とにかくこの温かい優しさに身を任せよう。

 もっと気持ちよさに身を委ねたい。


 ヒカル様に身も心も捧げる。

 頭の中に優しさしかなくなる。

 幸せで涙が出そう。


 もっと、今の気分を味わいたいけど、あっ、もうだめかも。

 脳がこれ以上の刺激に耐えられなさそう。

 お腹撫でられてるだけなのに。

 子宮が気持ちいい。

 膣の外側がきもちいい。

 大好きなヒカル様、おやすみなさい。

 気持ちよすぎて気絶しそう。

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