第3話
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だんだんと友也くんが遠のいていく。
彼は妹から呼び出されたらしく、今日はここでお別れ。
久しぶりに、ひとりが寂しいと思った。
本来ならいつも通りひとりだったはずの秋祭り。今年もそうだろうと思っていたけれど、友也くんと出会い、今年の私の世界は大きく変わった。
たぶん、彼はまだ気づいていない。
だからこそもっとも恐れているのは、今日のように、明日もまた私を見つけてくれるかどうか。
明日の彼には映るだろうか──私の存在が。
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「おにぃ、遅い。5分も待った。」
「5分くらい許してくれよ…」
僕はまた、賑やかで光の揺れる世界に戻ってくる。相変わらず賑わっている河川敷をよそに、令奈は土手で僕を待っていた。
「ん、とりあえずバナナチョコ行こう!」
「はいはい」
上機嫌で前を歩く令奈に僕はついていく。
そういえば令奈は小さい頃からお祭りが好きで、僕はいつも振り回されていた事をふいに思い出し、変わってないなと思わず笑ってしまう。
「あ、そういえばさっき何してたの?」
「ん?さっきっていつ」
「んー、さっきここら辺でおにぃ見たの。ひとりで何してるのかなーって」
「は?……あぁ、たぶん焼きそば買ってた。あそこの店の焼きそば、結構イケるよ」
「ふぅん?確かに焼きそばの屋台って当たりはずれがあるよねー、じゃあ次来た時に行ってみる」
そういって令奈はお目当てのバナナチョコの屋台を目指して歩き続ける。
僕はほんの一瞬、血の気の引くような感覚に襲われたけれど、言葉を紡いで行くうちにそんなもの無かったかのように消えていた。
─
「あー、疲れた」
令奈とチョコバナナを食べながら帰り、家に着く。自室の柔らかさにこだわっているベッドに横たわると溜まっていた疲れがどっと押し寄せ、吸い込まれるようなうたた寝の浮遊感を感じる。僕と同年代くらいの見た目を持っている女の子、ましてや普段あまり絡むようなことのない美人な女の子と秋祭りを回るなんてかつて無いことだったからか僕の体はいつも以上に疲労し、気づけば僕の意識は徐々に夢へと落ちていった。
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