黎明編上〜ライトノベル萌芽期

 私は本屋で働き始めました。

 あちこちに支店のある大きな書店、その本店の理工書売場に配属されました。


 微妙にSFと近そうででもあまり関係なかったのはさておき、そこには本好きでボクっ娘の先輩がいました。

 はい、もちろん爆発するような事態にも関係にもなりませんでしたよ?


 その人からお薦めされたのは、『パーンの竜騎士』シリーズ、著者はアン・マキャフリでハヤカワ文庫(絶版(T_T))。

 青背なのにファンタジー小説か? っていう出だしというか中盤までそんな感じなんですけど、最後の方でしっかりSF。

 シリーズ続刊はもう少しSFらしさが出てますが、このアン・マキャフリって人、SF界のハーレクインとか呼ばれている(もはや過去形か?)人で、今にしてみるともしも海外のSF作家がラノベ的なの書こうとしたらこうなるんじゃない? って感じ。


 惑星パーンには火炎を吐く竜に乗る竜騎士って職業があって、それを敬う伝承がなんだか最近人々から軽んじられている時代。

 そこに竜騎士の出番たる事態が近づいてくるのですが、誰もそれが本当に起こるとは信じてくれない。

 そしてヒロインは……


 ね、今どきっぽくはないにしてもラノベっぽくないですか?


 同じ作者で創元SF文庫の『歌う船』シリーズ(こっちも絶版(T_T))はもっとSFっぽくて、そして恋愛小説っぽい。


 どっちも電子版でもいいから、復刊してくれないかなぁ。 

 いや、自分は全巻持ってるけど、布教用に。


 布教といえば、今アニメ化されてる『バーナード嬢曰く。』3巻目が出たばかりなんですが、1,2巻より切れ味が増した気がします。


 話は変わって、大学時代に『丘ミキ』を貸してくれた人から『十二国記』の存在を教えてもらったのもこの頃だった記憶。

『十二国記』いいですよねぇ。

 特に各巻の(上下になってる時は下巻)そっけない終わり方! あれだけ苦労したのに、このあっさり風味っぷり。


 茅田砂胡さんの『デルフィニア戦記』を教えてもらったのはどちらからだったかな?

 この頃大陸書房って出版社が倒産して、当時はまだ出版社の倒産って大事件だったからわりと騒ぎになりました。

 で、後から知ったのだけれど、『デルフィニア戦記』は最初大陸書房から1冊本で出てて、中公ノベルスから出る際に長編として書き直したらしいです。

『デルフィニア戦記』と『スカーレット・ウィザード』はライトノベルって言葉ができる寸前のラノベ的な作品、この2シリーズはぜひお薦めしたいなぁ、今は中公文庫でも出てます。

 カクヨム読んでる人なら、8割くらいの確率で「面白かった」って言ってもらえる自信がある。

 会話の軽妙さ、ってラノベの特徴のひとつですけど、そういうのってたぶんこの『デルフィニア戦記』が最初と言っていいんじゃないかと。

 でも、この後の作品は…微妙。

 超気に入った人だけ読んで下さい、理由は次の終章で。


 村山由佳さんの『天使の卵』を読んだのもこの頃。

 こういうのは「切なく甘い」って表現すればいいんですか? ハッピーエンドじゃないむしろバッドエンドに向かって突き進んじゃう恋愛小説。

 その村山由佳さんの『おいしいコーヒーのいれ方』シリーズも赤い表紙の方はコバルト文庫を卒業した方や恋愛もの好きな男性とかにお薦めしたいところですが、時代背景がなぁ…今読んだら「昔の小説」っぽく思えてしまうかもしれない。


 谷甲州さんの『航空宇宙軍史』シリーズを読んだのは学生の頃だったか、就職してからだったか?

 もう本格SFなんだけど、舞台が舞台なのでやおい本でもないのに男しか出てこない(笑)。

 その谷甲州さんの『エリコ』って本が出た時はぶったまげましたね、ぇろい。


 当時、新井素子さんの『いつか猫になる日まで』の舞台である上石神井に住んでいたんですが、近所に古本屋さんが2軒あって、うち1軒のご主人とは通いつめてるうちに世間話とかするようになって、いろいろ教えてもらったなぁ。

 サイン本は純文学の物故者でないといい値段はつかない、とか。

 中野あたりではまた違う価値観で買い取りするんでしょうけれど。



 やがて、とある地方都市の支店に転勤しました。

 職場にしか知り合いはいないけれど、小売業だから休みが一緒になることはなく、休みの日はぼっちです。

 いや、東京にいたってぼっちでしたけど、会おうと思えば学生時代の友人で東京で働いているやつもいるし、映画館や美術館とかあちこちにあったし、東京ぐらしは楽しかった。

 それで地方暮らしに自動車は必需品、どうみても事故車って値段の中古の軽自動車と温泉ガイドを買って、休みのたびにあちこちの温泉に行っては帰りにブックオフ行って、100円コーナーで文庫やコミックずいぶん買いました。


 いや、都心の大型書店で働いて異動前の1年は文芸書売場にいましたから、当時出回っていた本はたいてい(背表紙だけでも)見たことがあるわけですよ、なので古書店の棚は古いけど初めて出会う本たちがたくさんあって新鮮だったのです。

 近所にも1軒古書店があって、そこにもよく行ったけど。

 行ったけど、ブックオフ! 倒産した大陸書房のコミックがブックオフにはたくさんあった! つづき春とか東城和実とかとりうみ詳子とかそれで見つけた!

 あれ? とりうみさんは違う出版社から出てたかも。


 エヴァンゲリオンをレンタル(まだビデオテープの時代だった)で見たのもこの頃でした。

 ナデシコはテレビ地上波でダイジェスト版を見た記憶。

 ガンダム以来の衝撃でしたよね、どっちも。


 わりとブンガクしてるのから、ミステリ、SF、スニーカー文庫とか、かなり乱読でした。

 あとマンガ。

 って、今考えてみるともう人生の半分くらいを本屋の店員として生きているのです、そしてその前半の半分くらいはまだ子供だった!

 自分の稼いだ金で、好きな本を買う。

 人生後半の方が本読んでるじゃん!>自分 章立ての割り振りまちがったかも。

 というわけで、一章長くなりそうです。



 そしてこの街に住んでいたときです、買ったけど活用されていなかったマッキントッシュでパソコン通信を始めたのは!

 ぼっちだったからね。

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