乱読編〜体育会系男子はラブコメな夢を見るか

 大学生になりました。


『ライトノベルにおける料理のリアリティ』なんてのをこのサイトにあげておいてナンですが、中学高校と部活の朝練とかやってた昭和の男子ですから、ほぼ家事能力ゼロのまま一人暮らしを始めました。


 一人暮らしを始めるにあたり、泥縄式に付け焼き刃な感じで母から多少は教わりましたが、ほぼゼロからのスタートです。

 その経験が先の創作論的な話の最後につながるのですが、それはさておき。


 趣味や読書傾向などのクラスタ的には、高校以上に濃縮されていたはずです、キャンパスライフ。

 でも、SF研究会の門を叩いてはみましたが、あまりにも濃ゆすぎました。

 数日で、自分にはムリって思いました。


 アパートのすぐ近くにレンタルビデオ店があって(まだビデオテープの時代です)、なんか小難しげな映画とかも時々借りてきては観たりしてました。

 ジョディ・フォスターの「君がいた夏」って確かこの頃観た気がする。


 転機は学部に上がって研究室に所属してからでした。

 他学部から編入してきた女子と仲良くなりました。


 ……こら、そこ! 爆発しろ! とか言ってんじゃねぇですよ。

 2節前にも書きましたところの「私の中の少女」と彼女の趣味っていうか読書傾向が共鳴したのですよ。


『丘の家のミッキー』って知ってますか?

 久美沙織さんって人の少女小説、表紙イラストはめるへんめーかーさん。

 どちらも最近お見かけしないですね。

 寂しい限り。

 コバルト文庫が無双してた頃の作品です。

 80年代の普通の女の子の恋愛観、今読むとたぶん時代の変化にクラクラすると思います。

 そうですね、細田守監督の「時をかける少女」を観て筒井康隆の原作を読んでみようと思って原作読んだ人なら、この感覚がわかるかと。


 松田聖子が「ブリっ子」とか言われてた時代です。

 資料的価値を求めるなら読むのを止めはしませんが、ケータイどころかポケベルもプリクラもない時代。

 今思うとどこに価値観というか恋愛観というか倫理観というか、そんな感じの転換点があったのかわかりませんが、っていうかはっきりとエポックメイキング的な何かはなかったんでしょうが、90年代のどこかで何かが変わる前(ぶっちゃけバブル景気ってヤツで潮目が変わったのだと思いますが)の物語です。

 たぶんカクヨムユーザーの皆さんには理解できない性的潔癖性が、まだ時代の空気として共有されていたころの「胸キュン」なのです。

 私自身、過去の美しかった記憶のままにしておきたいと思っているので、古書店のゾッキ本コーナーで見かけたとしてもきっと手は出さないでしょう。

 そういうのがあったんだ、くらいに思っておいてくださいな。


 大学時代、単発バイトを含むといろいろアルバイトはしたのですが、わりと長くやっていたのがコンビニの夜勤でした。

 いくつか面白いエピソードもあるのですが、それはここでは関係ないので割愛して、バイトに対してゆるい店だったので、深夜の暇な時間にはマンガ雑誌読み放題でした。

 少年誌、青年誌はもちろん読み尽くし、ついに「YoungYou」に手を出しました。

 前節で触れた小椋冬美さんの作品との再会です。

 つまり、そういう雑誌です。

 かつて「りぼん」を読んでいた世代が、女子大生やOLになって読むような大人向けの少女マンガ。


 そして榛野なな恵さんの『Papa told me』との出会い。

 単行本の既刊は速攻で全部買い揃え、実は掲載誌を変えながら今でも続いているので買い続けているのはちょっと横に置いておいて、『丘ミキ』貸してくれた彼女とか、同じ研究室にいたなんか女子力高めの友人(男子)とかに貸して回し読みして、「いーよねー」とか言ってました。


『Papa told me』はバブル期の空気に上手く乗った、イケメンパパとおませで賢い娘(小学生)の父子家庭の話です。


 このエッセイ、次節で終わるかもう一節ぶん長くなるか自分でもわからなくなってしまいましたが、『Papa told me』は最後のまとめで書くつもりの長続きする作品の典型的な例なので、もし続きをお読みいただけるのでしたら、記憶の片隅にでもとどめておいてくださいな。




 というわけで、乱読派だったのと高校時代に引き続き話の合う女子の友人がいたので、さて就活となった時、本が好きそしてコンビニバイトは楽しかった、結果就職先としては書店を狙い、最後の社長面接で「最近読んだ本で面白かったのは何ですか?」と訊かれたときに、「大橋歩さんの『おいしい おいしい』というエッセイ集です」と答えた私は、見た目の老け顔と女子力高めな本のチョイスのミスマッチ、無事採用してもらえてよかったな、と今更ながら思うのでした。


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