羅侯星娘

 

“混沌の指輪”は、星と運命の女神の寺院の結界にあり、女神像の処女なる子宮に匿(かく)されていた。

 土、水、火、風の四つによってなされた封印を解くには、魔族と妖精の混血である未通女(おとめ)が必要だ。

 しかし、相反する両者を混ざらせる為には、人の血を触媒としなければならなかった。


 光と清浄さに由来する霊的種族を精霊といい、闇と穢れに由来する霊的種族を妖魔という。

 何れにもよらない中間的な存在を妖精といい、希には両者を合わせてそう呼ぶこともある。


 人の形なす精霊を妖精といい、人の形なす妖魔を妖鬼という。

 精霊は五つの属性に分かれ、妖魔はより曖昧だが同様である。

 即ち、地、水、火、風、空などの領域である。

 これに光と闇を加えて七つともされる。


 神々もまた光や空の上級精霊であるといえなくはない。

 二つの混成領域に属する者もあるが、三つに属するのは神にすら稀である。

 七つの領域を有するは星の乙女達(ウィアレーン)のみという。



 或る村に美しい娘がいて、二人の若者が彼女を争った。

 一方の若者は貧しく、もう一方は裕福だった。

 娘は孤児で養い親は裕福な縁組を望んでいた。

 貧しい若者が遠くへ旅立ち、娘は自分の気持ちを知った。


 やがて死を告げる消息がもたらされる。

 娘は呪(まじな)いで彼に会おうとし、水魔王エッヘ・ウーシュカは恋人の死霊の姿をとって娘と交わる。


 同時刻、裕福な若者が水死し、屍は娘の飾りを握っていた。

 娘は父無子(ちちなしご)を妊ったが、人々は彼の子だと思った。

 恋人が生きて帰ったとき、娘は気が狂って川へ身投げた。

 娘は死んで引き上げられたが、孕子(はらみご)は生きていた。


 不吉な生立ちを持った男児は、裕福な「祖父母」の家へ引き取られ、陰鬱で美しい少年となった。

 だが、叔母である少女を喰らって姿を消した。


 魔王は己の子に憑依し、風妖の乙女を犯す。

 乙女は懐胎の法により妊(みごも)らされ、穢れゆえ追放を受けてあてどなくさまよう。

 

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