「らしさ」の効用

 問題は「郡上らしさ」がどうこう言う以前のところにあるような気がする。そこに生きるということは、何があろうと骨の髄までその地の土や空気と共にあることなのだと思う。そうやってひとつの土地に暮らす人は、「らしさ」など気にはしない。

 ところで、学校教育のうえでまことに便利な言葉がある。たいていの学校の校則にある「学生らしさ」という枠に類する文言だ。

 なぜ便利かというと、言葉による具体的な定義、つまりルールなしに「悪ガキ」を弾き出せるからである。そいつらがいわれなき差別に拙い言葉で抗議しても無駄だ。本来は当人が自覚すべき「中学生らしくない」「高校生らしくない」という言葉を他人の基準で浴びせられて、すごすごと引き下がるしかないからである。

 それも仕方がないといえば仕方がない。悪ガキどもの自業自得というものだ。頭髪の長さが何センチまでと定められれば数ミリの誤差まで切り揃え、より世間を不愉快にさせる髪型を開発する連中なのだから、世間の暗黙の了解をルールにして、問答無用でつきつけてやるしかない。

 

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