第7話「ここにいる気狂いじみたお嬢様が、私の娘なら両肩の間に痣があるはず」


「あの人は魂を持ってない、

わたしがよかったのかしら。


わたしはあの頃に戻れない、

また戻りたいとも思わない。



わたしはただ、

傍にいられたら、

それだけでいい。



あのベルタルダは、

魂を持たなかった、

わたしに似ている。



もともと魂を持ってるベルタルダが、

魂を持ってなかったわたしに似てる、


それってなんかおかしなはなしよね」



そう思ってクスリと笑う。

さみしい笑いだった。






さて、そもそも俺が魔の森なぞに、

入らねばならぬ原因になったのが、

ベルタルダという貴婦人のせいだ。


美しいが風変わりに、

気位が高い女だった。



ベルタルダにとって、

俺の帰還はともかく、

伴った花嫁ついては、

面白かろう筈がない。


ウンディーネへの優しく、

親切にみせた振る舞いは、

素性を探るためであろう。



世なれぬウンディーネは、

すっかりたぶらかされて、


自分と彼女とには、

前世からなる縁が、

あったに違いない、


などと俺にもらす始末だ。



魂のなかったお前に、

前世からの縁などは、

あるわけもなかろう。


内心ではそのように、

嘲笑っていたのだが、

どうやら縁はあった。



自分達の生んだ娘は、

水に落ちて死んだと、


漁師夫婦は思い込んでいたが、

その娘がベルタルダであった。



俺はそれが公衆の面前で、

暴かれるように仕向けた。


養い親である貴族よりも、

さらに高い地位にあると、

信じ続けていた実の親が、

貧しい漁師夫婦であると、

告げられたベルタルダは、


とりみだしてみ苦しく喚き、

みっともない顔で卒倒した。


そしてそのあまりの驕慢さ故に、

どちらの親からも見捨てられた。



リングシュテッテンの城に、

あの女をつれていきたいと、

ウンディーネが願ったのは、

俺にとって都合がよかった。


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