第6話「魂なぞ、捨ててしまえ。我らのもとに帰り来よ」


白い水魔キューレボルン。


(自在に変化するが大抵は、

背の高い白い衣の男の姿。


ウンディーネの叔父であり、

彼女の庇護者をつとめいた。


魂を得たウンディーネは、

彼を忌み嫌うようになる)




フルトブラントに連れられ

王都に赴いたウンディーネは


ベルタルダという美しい

貴婦人と仲良くなった。



ベルタルダは力ある貴族の養女であったが、

彼女と同じく拾い子であった。


ベルタルダの養い親が失脚して、

身を寄せる処がなくなったとき、


ウンディーネはフルトブラントの居城である、

リングシュテッテンへとともなうこと願った。



魂を持ってからウンディーネは、

思慮深く淑やかな女性になった。


だが、そんなウンディーネから、

騎士の心は次第々々離れていき、


ベルタルダの周りをさまよった。



フルトブラントにはかえりみられず、

ベルタルダは我がもの顔に振る舞い、


ウンディーネは悲しみに胸ふたがれ、

水をやらぬ花のように悄(しお)れ、


ただそれを諦観しながら涙にくれた。



やがて城に様々な異変が持ち上がり、

悪夢のような魔物達が跳梁しだした。


姪が蔑ろにされるを侮辱と取った、

水魔キューレボルンの仕業である。



そればかりではなく、自らたびたび、

ベルタルダの前に異様な姿で現れて、

恐ろしさの余り何度も床に就かせた。


いっそのこと城から出ていこうかと、

ベルタルダは本気で考えたはしたが、


まだ騎士の愛を確かめてはおらず、

どこへいこうにもあてもなかった。



ウンディーネは彼から、

ベルタルダを守るため、

中庭にある清冽な泉に、

大きな大理石で蓋させ、

水の秘文で封印をした。



そして、キューレボルンの

本体である滝が凍りついた。


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