悪夢のエンドレスリピート
妹の死をみとってから時が流れた。
彼は明晰な頭脳の青年となり、
大学で知り合った
可憐で美しい令嬢と婚約した。
あの時の事は心の隅に
追いやっていたはずだった。
あの少女と出会うまでは…。
1
街で白いドレスの少女を見かける。
まるで妹が美しく成長したかのようだった。
この寒空に、何故あのように、
薄い透き通った衣裳なのか。
他の人々は、何故それに、
違和感を覚えず、眼に留めることなく、
行き過ぎるのか。
それは現実の中にあって、
非現実的で、妖精めいていた。
彼は恋人のことも、何もかも忘れ、
人込みをかき分けて、狂ったように、
彼女を追う。
けれど、見失い、
ふと気がつくと、
雪が降り始めていた。
白い鳥が――。
2
少女、白い鳥の幻想。
狂気、殺される人形。
幻にみちびかれておもむく、
その先々に待ちかまえる死。
青年は犯人が自分で
あることを知らない。
3
あのとき、彼は
妹の裸に淫らな
欲望を抱き、
怯える彼女の
首を絞めた…。
「お忘れなさい。
あなたの妹は、
熱病で死んだのよ」
美しい女医はほほ笑む。
「――でも、いつか
あなたは白い鳥をみる。
そのとき、あなたは――
――――
私の名はノゥスィンカ」
4
青年は警察に追われ、
時計塔に身を潜めた。
そして、彼を信じ
気づかって訪れた、
婚約者を絞殺する。
だが、令嬢の屍は
壊れた人形の姿へ
変わった。
人形は繰り返しつづける。
「…ノゥスィンカ、
私はノゥスィンカ、
私は――」
彼はあとじさって
よろめいたはずみ、
巨大な歯車に
首を挟まれ――。
5
――少年が目ざめると、
妹が着替えをしていた。
部屋のほの暗い闇に、
妹の白い肌が浮かび、
彼は淫らな欲望にかられ
――。
6
――悪夢のエンドレスリピート
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