●3日目 06 夜『高阪美咲という圧倒的な存在』

 生徒会会議が終了後、生徒会室には沙希と梶原、光沢の三人だけになる。いつもここに入り浸っている理瀬は事前の説明に清掃担当チームのところに行っている。副会長になった高阪もまだやることがあるといって出て行った。


 光沢は会議中立ちっぱなしで疲れたのか、窓際に置いてある椅子に腰をかけ足を組むと、


「いやはや高阪さんは噂通りでしたね。間近で見たのは初めてですが、これまた美しいことで」

「そういうことを言うと女子生徒に刺されても知らないわよ」


 沙希はそう溜息をつく。何度か梶原と光沢を引き連れて校内を歩くと、たまに女子が光沢と沙希を交互に見て妙な視線をぶつけてくるのが気になっていた。知らないところで変な恨みを買っていそうだ。


 光沢は苦笑しながら、


「ですが、僕が知る限り結構彼女の黒い噂も耳にしますね。援助交際を頻繁にしている、とっかえひっかえで男子生徒と付き合っている、教師に便宜を図ってもらうためにいろいろやっている、ケンカが強くて気に入らない相手をたたきつぶして回っているなど挙げればきりがありません」

「確かにあたしもそういう噂は耳にしたことがあるけど……」


 生徒会長に選出される前から彼女にまつわるそんな話はよく聞いていた。ただ今までも生徒会関係で何度か話したことがあるが、そんな腹黒さがあるとはとても思えない。ああいう人気の高い人には妬みからあることないこと流す人間も出てくるだろう。


「あのタイミングでお前に権力の一部をよこせと迫ってくる奴なんて腹黒いに決まってんだろ」

「それはまあ……」


 梶原の指摘に沙希も軽く同意した。女子トイレでひどい状態になっている最中に沙希に話しかけてきたのは明らかに計算済みの行動にしか見えないのも事実。

 ここで梶原が補足するように、


「だがケンカの件ならデマだな。万一本当に片っ端からボコっているなら俺のところにも来ているはずじゃねぇか。今まであいつとは口も聞いたことねぇよ」


 授業はサボる、しょっちゅうケンカすることで有名な梶原と接触がないのは確かにおかしい。その部分については悪意のあるデマと見るべきだろう。


「よくわからんわね。でも、知りもしない相手の腹の中を探ったところでどうにもならないじゃない。高阪の能力がめちゃくちゃ高いのは疑いようがないし、だったらそれを利用しない手はない。腹黒い相手でも巧くコントロールすればいいだけの話よ」


 結局沙希が出せる結論はこれしかなかった。

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