5.6 偽りを背負う少年と


 君に出会ったときに、運命を感じた。


 入学式の日に、君と肩がぶつかって振り返った。文字通り、言葉を失った。一目見た瞬間に、体に電撃が走った。

 自分はこの人のために生まれてきたのだと思った。こんな気持ちは初めてだった。


 けれども君は、こっちなんか見向きもしない。まだ、運命に気づいていない。それでも自分には、君を幸せにする役目がある。だから懸命に、この気持ちに蓋をして、心の奥底に封じ込めた。ずっとずっと、このままでいい。君さえ幸せになってくれれば、それで――。


 ある日君は、運命の人を探し始めた。君と話をしたときに、すぐにピンときた。

 自分がその運命の人だと知ったら、君はどんな顔をするだろう。君の驚いた表情が目に浮かぶ。


 でも、君に一つだけ嘘をついてしまった。

 それは、自分の弱さが招いた嘘だった。


 全てが終わったら、真実を打ち明ける。

 だからどうか、この嘘を許してほしい。


 好きな人に嘘をつくのは、とてもつらいことなんだ。

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