第3話『神様、彼女は『不明』』

 「で、何をさっき聞こうとしていたの?」

 彼女、神無マリアは当たり棒で手に入れた新しいカリゴリ君を慎重に食べながら聞いてきた。

 「ああ、それは⋯⋯神無さんは神様を信じるか?って聞きたかったんだ。」

 ────そう。僕は、それが知りたかった。

 きっと彼女自身しか知らない『不幸』もたくさんあっただろう。それも偶然とは言いがたいほどの仕組まれたかのような必然を、彼女はどう思っているのだろうか。

 「神様か⋯⋯信じないよ、そんなあやふやなモノ。」

 さっきの彼女とは明らかに違う雰囲気がそこにはあった────冷徹にして冷酷。

 「どうして?」

 余計な詮索だったことかもしれない。言ったことに後悔してしまった。

 「そりゃあ、神無だけに神は無しってね!」

 彼女は笑顔で応えた。

 「そうか。」

 はぐらかされた。と言うよりも僕がこれ以上踏み込めないように防衛ラインを敷かれたのだ⋯⋯誰にでも聞かれたくないことはあるのだろう。それが彼女にとっては、『神様』だったのだろう。

 彼女は、残りのカリゴリ君を一気にほうばった。

 「じゃあ、私はそろそろ帰るね⋯⋯また明日、学校でね!バイバイ。」

 「おう、またな。」

 彼女は、小走りしながら帰って行った。途中、何度か何も無いところで1回転んではいたが大丈夫だろう⋯⋯とてもだが、送らせてくれ。などと言える雰囲気ではなく、それは雄弁にも彼女の後ろ姿が物語っていた。

 正直、有難かった。あの雰囲気でこれ以上そばに居るのは僕としても、耐えきれなかっただろう。

 しかし、僕は後悔する事になった⋯⋯彼女をどうして、あそこで1人帰させてしまったのかと。

 ────彼女は、失踪した。いわゆる行方『不明』というやつだ。

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