今日まで、五

 暗く静かな部屋、光と音はPCのディスプレイとファンの回転だけだった。何十回も開いた求人情報のサイトは、もうその配色を見るだけで俺の神経をすり減らす。新しいタブを開いてニュースサイトで記事を閲覧するが、時間はあの日に関連する情報を紙媒体の情報からは面積を奪い、ウェブ上では情報数を削っていた。

 PCを落とさないままベッドに体を投げ出すと体の節々が痛んだ。定期的に入れている、運送会社での延々とベルトコンベアで流れてくる荷物を仕分けする日雇い労働は、三十歳になったばかりの体に疲れを蓄積させる。ダメージと回復の割合が逆転し始めてきたようだ。年寄りの同僚などが腰にコルセットを巻いてまで勤務していたのを見れば、長く勤務すればその後の生活に支障をきたす事は考えるまでもなかったが、それでも職探しをしている一方で何らかの形でも仕事に向かうのは、親にはもちろんのこと、自分自身に対しても後ろめたさが付き纏うからだ。そのコルセットを巻いた同僚と勤務明けに話した時、生活保護を受けているという彼はバスを安く使えるという証明書を気さくに見せてくれ、そしてそういう形であっても自分の一部をさらけ出して人と何らかのコミュニケーションを取りたいのだろうということが、年配者との付き合いが長かったせいかよく分かった。けれどその一方で、最近の俺はそういう高齢者と接する時に別の感情を抱くようになってきていた。街でホームレスを見ると、その姿に将来の自分を重ね合わしたりもする。大地の揺れで足場が崩れ、できた割れ目に何の成す術なく落ちてしまうのは、決して歳のせいだけではない。多くの人が職を失う一方で、原発関連の記事を扱えば飛ぶように雑誌が売れると皮肉を言っていた当時の父を思い出す限り、落ちるか落ちないかは立っている場所がたまたま違っただけなのだと。元々、世界には理不尽への入り口がぽっかりと開いているのだ。

 枕元にあった封筒を取り、トランプを切るようにぼうっと眺め続けた後、一番新しい封筒を開いた。

 

 前略


 眞鍋様

 

 お手紙間が空いてしまってごめんなさい。そして突然だけれど、お手紙を送るのはこれで最後にしたいと思います。けっして眞鍋さんが嫌いになったとかじゃないんです。今でも眞鍋さんのことは尊敬してますし、わたしにとっては大切な方です。

 お返事に時間がかかってしまったのは、お別れをどんな言葉で綴ろうか迷ってしまったからです。東京でお会いする前の手紙に、友人の叔父さんが亡くなったと書いていたことを覚えてらっしゃいますか?もう察してらっしゃるかもしれませんが、亡くなったのは友人のではなくわたしの叔父さんなんです。

 昔から叔父の本屋はわたしにいろんなことを教えてくれる、わたしにも叔父にも大切な場所でした。でもその大切な場所は津波で流されて、叔父は人生そのものをなくしてしまいました。大げさかもしれませんが、長い間一つのところにいると、人ってそこが人生の一部になるんです。叔父が仮設住宅でふさぎ込んでる事は母から聞いてましたけど、そこまで思いつめてるなんて知りませんでした。

 どうしてでしょうか。生き残ろうとがんばったのに、生き続けようと決めたのに、どうしてそれを手放してしまうんでしょうか。

 わたしにはあの日を乗り越えた強さがあったかもしれないけれど、この日々を受け入れる強さはありません。だからあなたのその強さがつらいのです。今のわたしに必要なのは、こんなわたしを受け入れてくれる人ではなくて、あの日をなかったことにしてくれる場所なんです。きっと眞鍋さんと一緒にいると、あの日に向かい合わなければならないことになると思います。自分でもわかるくらいに勝手な言い分です。でも、これからの日々を生きていくために、どうしてもこういうやり方が必要なんです。

 さようなら。いつかすべてが過去になって、そんなこともあったねとお互い言えるようになったら、またお会いしましょう。


 草々


園田美里


 いつか、か。最初から終わっていたことだった。履き慣れない靴を履いていた俺たちは、いつかはどこかではぐれていたのだろう。

 暗い部屋の中、けれど腕でまぶたを覆い隠さなければいけないくらいに闇が眩しかった。

 俺たちは地震でできた割れ目から這い上がろうとしているのか、それともただ落下し続けているのか。ただ出来るのは、光が、たとえそれを感じられるのが自分だけだろうとも、その方向へ手足を動かすだけだ。それが降りだろうと、そこに光があるのなら、そこへ行くほか仕方ない。

 部屋の闇と、ディスプレイの目では感じられないほどに微細な光の点滅と、混沌とする意識が混じり合う中で夢を見た。それはあの日の正確な記憶かもしれなかったが、同時に演出された曖昧な幻想でもあった。

 被災地から引き揚げの日、ハイエースに乗り込む前に、俺はなんとはなしに旅館の裏にある河原に足を運び、そこに誰が声をかけたわけでもなく、舛添さんと吉岡さん、梶原さんとモッサンが集まってきた。対岸に見える山は地震で土砂崩れを起こし、鮮やかな内臓のような赤色の土を晒していた。川になだれ込んだその土砂は水に溶け、土の中に含まれた細かい鉱物の粒がサラサラと乱反射しながらせせらぎを多彩な音にする。

「国破れて山河ありっ、てところかな。」

 舛添さんが腰に手を当て、絶え間なく目を射す光に嬉しそうに顔をしかめながら言った。

「どういう意味っすか?」

「何かこう、山とか河は滅多に無くならねぇってことだよ。」

「おお、深ぇ……。」

 男達の顔の汚れは皮膚の一部となり鈍色に顔はくすんでいたが、しかしその色は動物のそれが不自然ではないように、ここでは必然のある色合いだった。風景に溶け込む舛添さんを横に感じながら俺が言う。

「地震のあった当日覚えてます?俺、電車なかったから六本木から渋谷まで歩いたんですけど、その時の光景が今でも忘れられないんすよ。……すっげぇ大変な時だってのに、みんな行儀良く列作って、ぶつかって邪魔にならないようにお互いの進行方向確保して、みんながみんな無言で今日初めて見ただろう他人のこと気づかってて、日本人も外人も……。そん時思いましたね、きっとこの国は大丈夫なんだって。」

「大丈夫っしょ?俺らみたいな底辺労働者がこんだけのことできんだぜ?出来るって、ふっこー。」

 そう言うと舛添さんは他の三人の方を向いた。

「つぅかさー、このメンツで集まってまた何か出来そうじゃね?」

「まあまたこっちで肉体労働ってのもアレだし、ここが復興したらみんなで遊びに来たいっすよね。ほら、あそこにバーベキュー場なんかもあるじゃないっすか。」

「お、いいねぇ。」

 太陽と川が放つ光の中にいる仲間たちを眺めながら俺たちは笑った。

 吉岡さん(一年後にすい臓癌で急逝。国民健康保険を長年払っていなかったため病院に行かず、判明したときには既に末期だった)は石を拾っては川にそれを投げ込んでいた、オーバースローだったため一度も石は水面を走らなかったが。高齢の梶原さん(会社が2012年度から定年制度を設けたため定年退職という名目での解雇)は子供のように、水際で靴の先端を濡らしながら遊んでいた。そしてモッサン(半年後、受注先が彼を不審な人間だと会社に訴えたため常駐していた施設から転属させられ、その後はデモ対応などの各支社の応援を転々とさせられている)はというと、その場に動かず全身で光を浴び、そのまま白昼の日とともに消えていくようだった。

 そうだ、もし皆が集まることがあったのなら、きっとここに帰ってこよう。ここから震災の記憶がなくなって、人々が日常を取り戻したその時に。お互いの傷のかさぶたの痕さえも消えて、ここで生まれた悲しみも数ある昔話の一つとして語り合えるようになった時、決してそんな日は来ないのだけれど、けれど全てが終わることがあったらきっと戻ってこよう。この河原は舛添さんの言うように、何十年も変わらずに俺たちを待ち続けてくれるのだから。そこにはきっと、俺も同僚も、そして彼女だっているはずなんだ。

 意識がなくなる寸前、追憶が完全に夢に変わろうとしていた時、何ヶ月もマナーモードから解除していない携帯電話が震える音で目が覚めた。

「……何だよタカ。今日?大丈夫だけど?……え、エガが?そうか。……うん、そうだな、向こうが良いってんなら別に良いんじゃね?で、結局どれくらいいたんだっけ?……そっか、一年しか経ってないんだ。どっちにしろあっという間だな……まぁそこんところはお前に任せるわ。とりあえず余計なことは言うなよ。……なにが?自覚ねぇのかよ。マチャには連絡……してんのね。……ああ、分かった。じゃあな。」

 面倒くさい所はあるものの、タカは最後には誰かのそばにいてあげるような奴だ。正義感とかじゃなくて、何とはなしの情があいつにはある。誰かがうなだれている時、何も言わずに、ひょっとしたら本当に何も考えていないのかもしれないけれど、すっと隣に座ってあげるような類の、そんな情だ。そしてそれはタカに限らず、俺たちの唯一の共通する価値観であり行動原理なのかもしれない。

 携帯を枕元に置くと、PCにまた向かおうと思ったもののすぐに思い直してやめた。見たところで、エガのツイートは「放射脳」と罵られ炎上した半年前から止まったままだろうから。俺はジャージからジーンズに履き替え、上にはいつものグレイのパーカーを着込み鏡で自分の顔を確認することもなくいつものファミレスに向かった。

 自宅のドアノブ並みに握りなれたファミレスのそれを、いつもとは想像もつかないくらいに緊張して握る。扉を開ければ当然鳴るはずのチャイムに、まるで警報のように身をこわばらせてしまった。入店した店内は夕食前だったので、課題をやっている学生の集団がドリンクバーで粘っている程度で、ほとんど空いている状態だった。俺が、俺らがいつも陣取っている店内の一番奥、窓際の四人がけのソファー席へと向かうと……いつもの三人がいた。

「よお。」

 俺は横目でエガを見ながら半笑いで言う。

「久しぶり。」

 エガは斜めに俺を見ながら少し口を気難しいように歪めて言った。少し痩せたように見えた。それは体型の問題ではなく、以前のエガに比べると、幾分か表情や目の光に自信が失われているからだろう。こんなに探るように俺を見る奴じゃなかったはずだ。

 タカとマチャはやはりぎこちのない笑顔を作っている。二人はエガの正面に座っているので、俺が必然的にエガの隣に座ることになった。

「……土産は?」

「ないよ、旅行じゃないからな。」

 ふん、と笑いながらエガが言う。

「気が利かねぇな、マカデミアンナッツくらい買ってこいよ。」と俺は上から目線でつっこむ。

「そりゃハワイだろ。」と、近頃は若白髪はハゲないという民間伝承の根拠のなさを自身の体を使って実証してくれているタカが重ねて乗ってくる。

「なめんなよ、マカデミアンナッツはどこにだって売ってんだぜ?京都にもパリにもな。」

「なめんなの意味が分からんし。」

 こういうパスワークは長年の付き合いだ、一年のブランクなどものともしないですぐに乗ってきてくるだろう。

「つかあんまり焼けてないな、ボビー・オロゴンみたいに真っ黒になって帰ってくるかと思ったぜ?それくらいいかなくても、せめて全盛期の松崎しげるくらいには焼けとかないと。」

「別に、肌の黒さが松崎のパラメーターって訳じゃないだろ。」

 タカがエガに投げている球を元気のいいレトリバーみたいに横からキャッチしまくる。

「同じ日本だし、なにより農作業してたわけじゃないからさ、別にそんなには焼けないよ。」

「そっか、沖縄どうだった?可愛い子いっぱいいた?」

「別に普通だよ、那覇とかには若い子はいたけどさ、割合的にそこまで目立って可愛い子がいるわけじゃない。」

「そうなんだ、山田優クラスがゴロゴロいるのかと思ったんだけどな。」

「偏見すげぇな。そんなにいないよ、山田優も仲間由紀恵も。」

「ハブはいた?」

「山田優から飛ぶな。俺が住んでた付近にはいなかったぞ。」

「山田優もハブもいないんか……。」

「いやハブは探しゃいるよ。」

「じゃあ山田優も探せば……」

「いないって。同じ感覚で話すな。」

 エガがようやく普通の感じに笑ってくれた。ちょっとピッチを変えてみることにする。

「そういうもんか……。それよりさぁ、タカ、お前が紹介してくれた出会い系サイト、やたら女が西荻窪で会おうとか言ってくるんだけどアレ何で?」

「ああ、あれ業者だよ。それか個人で売りやってる女な。」

「どうりで、みんな一律2万なわけだ。」

「なんだよお前ら、出会い系とかやってんのか?」計算通りエガが乗ってくるので、俺は「やっぱさぁ、俺らが女と出会おうってんなら出会い系か街コンでもしなきゃ無理っしょ。」と言う。

 認めたくはないが、婚活サイトで伴侶を見つけた舛添さんに影響されたところがあったのも事実だ。がっつくというのはある意味でタフだということでもある。小馬鹿にせずに見習うところは見習うべきだろう。

「いや、そっから先につなげていくのは難しくないか?」と、心配と呆れを交えたようにエガが言う。

「ま、誰も相手してくれなくて、そのうちコイツ男にでも手を出すようになるんじゃねぇの?」

 タカがコーラに挿したストローで俺を指しながら言う。

「大丈夫だタカ、そん時ゃお前がケツを貸してくれる。」

「俺もかよ。」

「お前ら、相変わらず汚ぇ話してんじゃねぇよ、ファミレスだぞ。」

「あれ?でも亮ちゃん仙台で出会った彼女はどうしたの?」

 思わぬマチャの死角からの投球。

「何だよそれ、聞いてないぞ?」

 エガが生き生きとして反応する。

「いや、なんていうか……ほらね、分かんだろ?皆まで聞くなよ。」

「いやいや、そこは全部話してもらわないと、今日のおかずはお前の失恋話に決定な。」と、タカが広々とした農場で健康的に育った鶏みたいに首をクイクイ動かしながら他の二人に同意を求める。

「失恋じゃねえよ、始まってもいなかったんだから。」

「よけい惨めじゃねぇか。」

 そんなにも面白かったのか、タカが身をよじらせる。

「で、その子のことはどれくらい本気だったんだよ?」

 反してエガはインタビューを受けているコンサルみたいに机に肘をつけ、掌を組んで食い気味に聞く。

「いや、どれくらい本気かって言われたら……」と、喋ってる途中で意外とそのエガが本気なまなざしで俺を見ている事に気づいた。「ぶっちゃけさ、もう理想とかなんとかよりも、色々逆転してて、いけそうな女を好きになるって感じだからさ、んで、その子もしょーじきいけそうだから行ってたんだよね。」

「なんだよ、誰でも良かったのかよ。」

「んなビッチ野郎でもねぇよ。いや最初はさ、そういう感じで行けそうだから行くって感じだったんだけど、だんだんと自分の中の本当の気持ちに気づいていって、まるで街中で流れてるラブソングが自分のために歌われているのかと思うくらい浮かれたもんさ。でもそれが本当に恋だと分かった時には全てが終わっていたみたいな……。なんだか当たり前だと思ってた自分の一部がぽっかり亡くなった気分だよ。」

 一瞬の沈黙。全員がフルスロットルの罵声を俺に叩きつけるようと溜めに溜めているのがよく分かる。

「うわぁ赤い実弾けたって感じだね。どっちかと言うと腐って落ちたっていう方がいいかな。」

 マチャは意外と毒を吐く。

「進研ゼミとかでみる、中学生が投稿したポエムかと思ったぜ。」

 羽が生えて手首に包帯巻いて涙流してる女子のイラストとかが添えられてるやつか。

「磯臭い童貞臭と乙女チックな甘さのマリアージュでエグミが増してほんとキツイわ。」

 タカは人をディスる時だけ語彙が豊かになる。

「お前らここが学校なら俺登校拒否になってるからな……。」

 三人は声をあげて笑った。まあ別に、俺がババを引いて廻りが回るんならそれでいいのだけれど。

「やっぱ難しかったんだろうな、仙台だろ?体の距離がそのまんま心の距離になるわけだからさ。会おうにも現実的に時間と金とかがなぁ。」エガが言う。

「まぁな、西野カナなら引きつけを起こしてるレベルだったぜ。」

「いやいや、あきらめてんじゃねぇよ。本当に好きだったんなら彼女の前で『ちょ待ぁてよ』って言いながらトラックに飛び込めや。」

 現実的な問題を話すエガと違いタカはいつでも本能と煩悩だ。

「色々混じってんじゃねぇか、キムタクのモノマネか?似てねぇぞ。」

「ちょ待ぁてよ。」

「繰り返しても似てねぇって。」

「でもさ、タカちゃんの言うように本当にそれでいいの?」

「どういう意味だよ?」

「亮ちゃんが勝手にあきらめてるんじゃないの?勝手に終わったってさ。」

「それはさぁ……」

 こいつらにあの手紙を見せようとは思わないけれど、でもあんなものをもらったら普通の奴は踏ん切りがつくはずだ。彼女は俺なんかが抱えきれそうにない荷物抱えていたんだから。

「実はさ、彼女とより戻したんだ。」

 俺とタカが「おお~~」と感心する一方で、エガが「え、別れてたんだ?」と驚く。

「いや、おめでとう。今日は飲むか。ギャルソン、この店で一番上等のワインを!」俺は従業員に向かってスナップを打ったが、「ペヒンッ」と気の抜けた音しか出てこなかった。

「百円だろ。」と、エガが気取ったように嘲笑する。

「亮ちゃん真面目に。」

 マチャに諌められるように言われてしまった。

「すまんな。」

「……元々、彼女が沖縄に行きたいってのを僕が受け入れてあげなかったから険悪になっちゃったかと思ったけど違ったんだよね。震災の当日、電話が全然つながらなかったじゃない?皆それでツイッターとかミクシィとかで生存確認し合ってて……でも僕SNSとかやってなかったから、りっちゃんとしばらく連絡取れなかったんだよね……。」

 俺は金欠で仕方なく買ったくず煙草の「わかば」を取出し、葉が内部で均等になるようにフィルターをテーブルに数回叩きつけ、それから中華料理屋でもらった紙マッチを擦って火をつけた。空気の流れを、少し緩くさせる必要があった。

「……でもさ、何だかんだ言って僕ら東京にいるわけじゃない?そりゃあ東北の方は大変だったかもしれないけれど、こっちは津波も無かったんだからお互い大事は無いだろうって思ってたんだ……」

「お待たせしました。」と、ウェイターが本当にワインを持ってきたが、哀れなそのウェイターは理不尽に俺たちから険悪な眼差しを受けてしまった。マチャは律儀に「どうも。」と、それをテーブルの真ん中に置いた。

「それで?」

 エガが俺の吐いた煙から体をそらすように言う。

「ああうん。それでね、数日後、二日くらいたった後かな、りっちゃんから電話が掛かってきて、何気ない会話をずうっとしてたわけ、それこそこの二日間どうだったとか。結構話すんだけど、ちょっといまいち向こうの意図が分からなくてさ、思わず聞いちゃったんだよ、『どうして電話してきたの』って、そしてらりっちゃん『心配だからでしょ』って怒っちゃってさ。」

「あ~~。」

 俺とエガ、タカが思い思いに渋い顔をした。

「うん、何と言っていいか……」

 俺が腕組みをしながら天井を見上げ、タカは何かを言いたげだった。俺たちだったらお互いのキャラクターを知り尽くしているわけだから、マチャのそんな気の抜けた返事もマチャだからという風になるのだけれど、彼女視点ならまた別なのだろう。するとエガが組んだ腕をテーブルに置くようにして身を乗り出しながら切り出した。

「多分こういう事だろ、彼女はマチャが心配だったから連絡を取りたかったし、マチャは彼女を信用してたから無理に連絡を取る必要がなかったと。あの時はな、どっちも正しいなんて悠長なことを言ってられる事態じゃなかったからな。……それがきっかけで彼女との間に溝が出来たんだ?」

「うん、僕はそれがそんなにもりっちゃんを傷つけてたなんて分からなくてさ、それがきっかけで僕の振る舞いとかが信用できなくなったみたいなんだよね。」

「でも結局よりを戻したんだろ?」

 鶏っぽいままのタカが再度首を動かす。結論だけを聞きたがるのはこいつの悪い癖だ。

「どうして戻したかがキモだろ。」

 それに対してエガが突っ込んでいく。

「時間がたって落ち着いてからもう一度話し合ったんだ。あの時は混乱してて皆がバラバラだったけれど、それこそエガちゃんが言うように、僕がりっちゃんを信じてたからって……。もちろん、そんなんじゃあの時の不信感をぬぐえない事は分かってるけど、それでもまた一からやり直そうって。……皆がそうしてるように。」

 マチャの純真の濃度が強すぎて胃がもたれそうになった。お前たちの愛は強度を確かめ合う価値のあるものだったかもしれないが、俺の場合は元々ヒビだらけで、軽く小突いただけでも音もなく虚しく壊れる類のものなのだから。引き合いに出されてもあまり役に立ちそうにない。

「そりゃさ、マチャとりっちゃんは震災の前に積み重ねてきたものがあったかもしれないけど、俺はそんないわゆる貯蓄みたいなもんがないんでね、こればっかりはどうしようもないさ。」

 俺は話の打ち切りと言わんばかりに、煙草を灰皿にクシャクシャにこすりつけた。

「あきらめ早いな、それで次は出会い系ってのもフットワークが軽すぎないか?」

 エガが俺の肩を小突く。

「タイプ的にはアウトボクサーなんだと思う。リカルド・ロペスみてぇだろ。」

「しらねぇよ。」

「マジか。伝説のチャンプだぞ、ミニマム級で生涯無敗だった……」

「興味ねぇっつうの、つかさ何でそんなに女にこだわるわけ?」

「まぁなんつーの?人生変えたいなら、決意とか意欲とかは意味ないって言うじゃん?本気で変えたいなら、住む所か仕事か人間関係変えるしかないって。住む所は先立つもんがないし、仕事は辞めたけど駄目な意味で変わっただけ、後は人間関係だけど、お前らとの関係断つわけにもいかないだろ?としたら後は女しかなくね?」

「でもそんな、数撃てば当たるみたいな感じで亮ちゃんはいいの?最初は誰だって些細な関係で、それを育てていくんだよ?」

「そこのコスパがさぁ、そこまでやる価値あんのかってのがあるんだよ。」

「まあな、正直どうなるか分からない女ずっと追い回して時間と金を浪費するよか、ぶっちゃけ無料サイトポチって右手の世話になるほうがはるかにコスパ優れてるからな。」

 唯一タカが俺のサイドについてくれている、援護射撃としては的を射ていないが。

「確かに、女体は好きだが女は好かんな。あいつらと話してると、最初はババ抜きしてると思ってたら最後にはそれがストⅡだったって気づくんだ。がっつきゃ勘違い野郎で用心深くなりゃ草食系だし。」けれど俺は同意するように言う。

「そんなこと言うなら、なんで亮はそんなに人生変えたかったのか?そっから本気じゃないならどうしようもない気がするんだけど。」

 少しばかり三人、特にマチャとエガの攻めがきつくなってきて、うまく捌ききれなくなってきた。俺は遠慮のないど真ん中への剛速球を体を丸めるように受け続ける。

「たまにな、考えるんだよ。このまま何もしなかったら、俺の前の道はただ下っていくだけなんじゃないかって。女がその救いになるかどうか知らんが、思いつく手段がさっき言ったように他にないんだよ。意識高い系みたく純粋じゃなけりゃYOUTUBE炎上させるほど鈍感でもないんでね。」

「大体おおげさなんだよオメェは、地震でも日本が変わんなかったのにたかが女ひとつで何か変わると思うか?」

 用心深く回していた繊細な空気の循環を、タカがぶっきらぼうに破った。俺とマチャは思わず「やりやがった」と顔を見合わせる。

「いや変わっただろ、回り見てみろよ、報道番組は増えたし都心部じゃしょっちゅうデモやってるぞ?」

 長年聞き慣れた声だ、交響楽団の指揮者並みに些細なトーンの変化に俺たちは敏感になる。一人が外れた音を出し、引きずられるように他の楽器も調子を狂わせ始める。

「いやいや俺が言ってんのは、もっとグローバルな視点の話ね。そんなデモやらが変化だってんなら、地震とかなくても毎日なんか変化があるって言っちゃっていいだろ。」

 “グローバル”、地球規模の視点の意味は分からないが、俺たちはそれが大きな視点でものを見るというこいつなりの表現なのだということで補完しておいた。

「デモやってるってことは意識が変わってるってことだろ。それが大勢いるなら十分な変化ってことなんじゃないのか?」

「大勢デモやってるっつっても日本人全体からしたらメチャ少ないじゃん。大体意識変わったからって何だよ、さっき亮も言ってたろ、意識変えた程度じゃ何も変わらないって。」

 いきなりタカが俺を加担させようとしたので「まぁ、一番初歩的なものは意識だからな、それだけじゃだめって話で。」と距離をとる。

「だろ?それだけじゃだめなんだよ。」

 しかしそれはタカの都合の良いように解釈されてしまった。タッチを拒否したのに強引に手首を掴まれた。

「帰ってきて分かったろ、一年も経たずに節電もやんなくなったし食い物だって普通にコンビニに並んでる。オシムなんてサッカーファン以外覚えちゃいねぇよ。」

 ソファーでふんぞり返っているタカだが、体の真ん中はエガから逃げるように反らしている。

「こっちはな、でも福島はまだ収束してないぞ。まだ原発は動いてるし、放射線量だって上がってるじゃないか。」

 相変わらず、インタビューを受けているコンサルみたいな姿勢だが前のめり、オフェンス気味に食い入ってエガは話す。

「問題ない量だって言ってんじゃん、それにそんなにヤバけりゃ政府のやつらだって逃げてるだろ。」

「マスコミが本当のこと言ってると思ってんのか?震災からずっと嘘ばっかりだっただろメルトダウンしてないって言ったの誰だよ?最近じゃ震災を風化させようと報道の数も時間も減らしてきてるのが分からないのかよ。」

「そうやって何でもかんでも悪いように取るなよ、全身性感帯かっつぅの。前みたく大事が起こってないだけだろ。」

「起こってるかもしれないし起こるかもしれないだろって話、起こってからじゃ遅いんだよ。」

「なぁんかお前らアレだよな、さも事が起こって欲しいみたいな言い方するよな。嫌なニュースほど嬉しそうにばら撒いてさ。」

「それこそ悪い取り方だろう?」

 俺とマチャが機会を伺いながらお互いを見る。会話の切れ目にうまく突っ込みたいが、中々切り取り線が見当たらなかった。下手に切り取ってしまうと、修復に向かっていたものまで切り開いてしまうかもしれない。

「せっかくエガちゃんが帰ってきたのにやめようよ。そういう話しに来たんじゃないでしょ?前みたいにみんな仲良くやればいいじゃない。」

 時に、真っ直ぐさが何よりの特効薬だったりする。こういう役目はやはりマチャが一番適任だ、これに本気で意見するってことはマチャの心を蔑ろにするという一種の脅迫めいた効能すらある。俺がこういうことをやっても、「ふり」が強すぎて反論する余裕を持たせてしまうからだ。

「……元々振ったのはエガだぜ、なぁ亮?」

 タカは周りが見えなくなると世界が自分中心に回りだす。自分が仕掛けられた側で、周りが自分の味方をするべきだと思っているのだろう。悪いが、お前の天動説にはつきあえない。

「いや、元々は俺の恋バナだったはずだな。お前ら俺の将来の心配をしろよ。」

「いやまぁそうだけど、ここいらでキチッとすっきりさせられるもんはさせとこうと……」

 タカが口を尖らせながら言う。

「どうして政治と宗教の話を飲み屋でしないか分かるか?それはな、その話題はお互い主張を変える気がハナから無いからだよ。どうせ変えるつもりがないなら笑える話だけにしとけ。」

「それはもっともなんだけどな亮、俺はそんななあなあな日本の雰囲気も良くないと思うぞ?こういう一つ一つが日本人の意識を変えていくんじゃないのかな?」とエガが言う。

「それはそういう奴とそういう場所でやる、ただそれだけだ。気を抜いて駄弁りたいなら俺らとドリンクバーで、愛を気取りたいなら彼女とベッドで、政治を語りたいなら同士と選挙事務所でだ。お前の理想は選挙の帰りにみんなでドリンクバーでチンコから膿み出た話をしながら時折小粋なジョークを交えて安倍の悪口を言うことか?そりゃどこのどいつの話だ?」

 タカは「分かったよ」と言うように軽く肩を上げた。しかしエガは何かしら不満があるようだった。とりあえず、俺がやったのはその場を納めるだけの方便で、こいつを納得させることはできないのだろうとは感じてはいたが。


 タカとマチャが明日仕事だと言うので早めに切り上げ、俺とエガが残された。入店した時はほとんど客がいなかったものの、日も暮れて飯時になったので客が段々と増えてきていた。俺たちの隣には子連れの若い母親が座っていた。軽く消しゴムをかけたクロッキーの肖像画みたいな女で、スマホを弄りながらメニューが来るのを待ち、たまに騒がしい子供を叱っている。待つということに慣れきっていて、すべてが目の前に現われてから手を出すことしかしなくなったような生き方が、面倒くさそうなスマホのフリッキングと画面を見る苛立たしげな眼差しから滲み出ている様だった。きっと忙しさに追い立てられ時間を忘れ、時間が空いたならばそれに寄り添うことができないせいで暇つぶしばかりに心を奪われ、気がつくと一年が高速で過ぎ去っていき、そして鏡で自分の顔に新しい皴ができているのを見る時、多くの時間が流れていたこと愕然とするのだ。ふと、亜梨沙も今ではこういう風に時間や金を、ただ流れに任せて浪費しているのだろうかと思った。そうなった彼女を俺はどれくらいまともに見ることができるだろうか。あの日の夕焼けが、輝いているからこそ今を鈍らせるし、残った瓦礫が、かつてそこにあっただろう建物を思い出させるからこそ、その瓦礫がよりいっそう惨めなのだ。

「まさか、俺とお前が無職になるとはな。」

 エガが、俺とは同じ方向だろうだが恐らく違うものを見て言う。

「そうか?まさかはお前くらいだろ。俺はあんな仕事だったからな、いつ辞めてもおかしくなかったぞ。」

「そうか……。」

 そう言うとエガはメニューをパラパラとめくり始めた。

「ここは本当に変わんないな……。」

「あの時は大変だったな。震災から間もないころにさ、ここ来た時はドリンクバーやってなかったからな。俺、世界が石器時代に戻ったかと思ったし。」

「すげぇ基準だな。」

 エガが力なく笑う。

「ジェットタオルが止まってる時なんてな、どうやって手を乾かして良いか分かんなかったからさ、だから手は常にびしょびしょで。」

「んなわけねぇだろ。……一時は色んな飯屋で復興支援メニューみたいなのがあったし、節電すらもやってたのに。今じゃ皆忘れようと必死になってる。」

 やはりエガは終始力ない。職を失い貯蓄も恐らくそんなにも残っていないということがそこまで人の自信を失わせているのだろうか。だがそれは俺も同じことだ。残るはそれ以上に、出戻りしてきたということが大きな後ろめたさとなっているのかもしれない。さすがのタカも遠慮して言わなかったが、エガが結局戻ってきたということはこいつのある種の敗北であり、そしてそれが、本人がいくら否定しようがどうしようもなくエガに影を落としているということだ。

「……震災の時な、驚くほど暴動だの何だの起きなかったろ。パニック映画みたいに人間同士の争いが起こるかと思ったらそんなでもなくって、渋谷駅なんて、皆ハチ公が乗り移ったみてぇにじっと駅のアナウンス待ってたくらいだったよ。俺はそういうこの国をおかしいとは思わないけどな。」

「でもさ、それって同調圧力ってやつじゃないか?本当は叫んで逃げ出したい気持ちを、無理に押さえつけるなんてのは、個人を殺して全体の利益しか見てないだけなんじゃないか?あの時にずっとこの国が隠し続けてきた欺瞞がさんざん明るみになったのに、でも今じゃ被災地や原発から日本中が目をそらして、それだけで何かが解決してるみたいになってるだけだぞ?」

 全体的に力は無いものの、そのエガの言葉の芯はしっかりと重かった。被災地の瓦礫を日本中で処理することに反対した時も、子供たちの甲状腺の異常が増えているという医師の発言を拡散した時も、エガは見えない誰かに罵られ、そして次第に発言を減らしていった。こいつにとってその同調圧力というのは肌で感じられるレベルのものだったのだろう。

「だろうな。でもなエガ、これはこの国の副作用みたいなもんだよ。“他人様”って言葉があって、殺人よりも行列に割り込む方が罪が重いと思ってるこの国のさ。あの日あの時、暴動起こして焼き討ちとか略奪とかやってるような国なら何かが大きく違ったかもな、クーデターだって起きてたかもしれない。でも、日本人はお行儀良く列を作ることを選んだんだ。お行儀よく列を作って何かに耐えて、空いた穴は速攻で修復させた。」長い間、エガは自分の中で問い続けたものを言葉にしているのに比べて、俺の言葉は幾分か曖昧だった。「それで救われたものもあれば損なわれたものもある……それだけだよ。まぁつまりだ、ジャイアンは母ちゃんの奴隷で俺たちゃあ運命の奴隷なんだよ。」

 隣の母親が、子供たちに「静かにしなさいって言ってるでしょっ!」と、きつめに叱る。俺は一瞬、自分に言われたのかと思い身をこわばらせ、エガが「まいったね」と言いたげに、やはり力なく笑う。

「……なぁ、亮の言ってるのは「そういうもんだ」ってことだろ?俺が言いたいのは「どうあるべきか」ってことなんだ。被災地で色々と見てきただろ?そして帰ってきて、何かおかしいと思わなかったか?」

「こうあるべきなんてものが本当にこの世にあるのか?あるべき国とか、あるべき人間とか、どっかにあったことがあんのか?」

「……あるはずなんだ。たとえ今はなくても、それを目指さなきゃさ……。」

「そりゃあそうかもしれない。けどな、多くの正しさがこの世にはあるんだよ。そして皆が一つ一つそれを拾っている最中でさ、それこそマチャみたいに。ただ、問題がでかすぎて時間がかかってるんだ。」俺はわかばの紙袋を探り、もう一本も入っていないことを確認するとそれをクシャクシャに握りつぶした。「みんな、お前が思ってるほど馬鹿じゃない。もちろん俺が思うほどそんなに賢くもないかもしれないけどさ。いつかみんなが欠片を拾い集めて続けて、それこそ教科書なんかにこの事が載る頃に、俺たちが知らなかった新しいやり方を見つけるのかもよ。」

「達観してるつもりか?被災地で悟りでも開いたかガウタマ・シッダールタ?」と、エガが皮肉と感心を交えたように言う。

「ガウタマ何だ?くだらねぇ。もう、この話は終わりだ。メロンソーダが温くなっちまう。」

「さっさと飲めばいいのに。」エガはため息とまではいかないが、荒れた調子を普通のものに取り戻すように、やや長めに呼吸をした。自分自身で何かを納得させたのか、少し表情が穏やかになった。「……じゃあ被災地はどうだった?やっぱり死ぬ思いだったか?」

「そうさなぁ、死ぬ思いだったし二度と行きたくはないよな。」と、俺はふぇっふぇっとふざけて笑い、しばらく考えてから「……でも次は次でどこに行っていいのかが分からなくてな。」と改めてから言う。

「どこって、どこか行かなきゃいけないのか?」

「なんかさぁ、死ぬ思いして人間以下の扱いうけてもう散々って日々だったのに……それなのに、ウンコ製造機みたいな毎日を送ってる今の方が堪えるんだよ。」

「デモ行くか?」

 エガがにやりと笑った。

「連れションみたく言うなよ。」

 エガはきっとこれからも正しさを一つ一つ拾い集めていくのだろう。こいつはそういうやつだ。あの日から俺たちからは何かが欠けている。誰もが何かを欠いていて、誰かはそれから目を背け、誰かはそれを別の何かで埋めようとしている。そしてエガはこれから正しさでその欠けたものを埋めていくのだろう。こいつはそういう奴だ。変わったのではなくて、こいつには元々そういう「種」があって、それが割れた地面から顔を出したんだ。じゃあ俺はどうだろう。俺はずっと空っぽで、それを日常で取り繕っていたけれど、地震でその空っぽの穴がパックリと真っ暗な口を開いて、そしてその穴にあの日々と河原と彼女の笑顔が入り込んで、でもそれらはもう無くなっていて、けれど「何かがあった」という痕跡だけが間違いなく残っている。真っ暗な穴に暖かさだけを残して。

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