第5話 いざ、ギルド加入
周囲の目が痛い。
それもそうだ。10歳の可愛い少年が勢いよくドアを開けたのだ。誰でも見てしまう。
「なんだあいつ?」
「建物間違えたのか?」
「可愛いお子様じゃないの。もらってこうかしら」
様々な声が聞こえた。
隼人は一目散に受付と思われるところへ行き受付のお姉さんに話しかけた。
「こんにちは!ギルドに加入します!」
元気に大きな声で言った。
カウンターの下に埋まってしまってる為、ギルドのお姉さんには見えていないが…
「僕ちゃん、いくつかな?もう少し大人になってから来てほしいかなぁ?」
「ダメなの…??」
声を震わせながら、畳み掛けた。
これでお姉さんもイチコロだろう。そして、
「しょうがな…」
と、同時に周りからカッと目が集まる。
「じゃなくてじゃなくて!ダメだよー!まだまだ子供すぎるわよ」
「どうすれば加入できますか…??」
「さっきも言った通りあと10年したら、また来てほしいかな?それか…」
「それか…??」
「うちのギルドのエースと戦って勝ったらいいわよ?」
これぞ、少年の望んだ展開だ。中堅冒険者並のステータスをもつなら、戦って示せばいいと思っていた。ただ、そこまでどう持ち込むかが問題だったが、向こうの方から言ってきたのだから都合がいい。
「うん!それでいいよ!」
元気よく返事をした。
「そう…??じゃあ…ザック?いる?」
「あいよ」
ザックと呼ばれる青年は立ち上がると隼人に近づいてきた。
「おい、ガキ。あんまりいきがんなよ?ここは大人の仕事場だ。お前みたいなガキは母ちゃんのお乳でも吸ってろよな?」
「「「ハハハハッ」」」
周りの冒険者は当たり前のように笑った。
挑発だ。それもそうだ。さすがの隼人もカチンときて
「んだよ、勝ってから言えよ?」
可愛い顔から放たれる威圧感とは思えないプレッシャーがギルドを襲う。
「っ、なんだよ。調子のるなよ。その装備だってパパやママに買ってもらったものだろ?いっちょ前に装備だけ揃えやがって。あまあまに育てられてるんだな」
一瞬その威圧感に押されかけたザックだったが、余裕を再度取り戻し
「おい、ガキ。表出ろよ。大人の世界の厳しさをこのザック様が教えてやるよ」
ザックがそのように言うと、すぐさま表でた。それに続いてギルド内にいた者達もこぞって表に出た。
最後に隼人もふぅとため息をつき表に出た。
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外では、案内してくれた女の子が、突然たくさんの大人達が出てきたためにアワアワしていた。
そして、最後に出てきた隼人を見つけると
「ね、ねぇ、隼人くん…これって…」
「あ、うん。ちょっとね。これからそこのザックさんっていう人とたたかうんだ」
へーそーなんだー。となるわけもなく
「え!ザックさん?!それってダーナの街で1番の冒険者で…B級も近いって噂だけど…」
「ふーん。強いんだね!」
「強いなんてもんじゃないよ!怪我しちゃうからやめときなよ!私も一緒に謝るから!っていうか、何をどうしたらこうなるのよ!」
「まぁ、大丈夫だからみててよ!ね、お姉ちゃん!」
そう言って隼人はギルドの人達が円形になって囲まれた真ん中にやってきた。
「おい、どっちが勝つと思う?」
「んなの、ザックだろ?」
「だよなー。賭けるワクワクさもないからなー」
「ま、せいぜいガキが大人の世界を知るのを見届けてやろうじゃん」
野次馬からは明らかにザックが勝つというムードで隼人が勝つと思う人など誰もいなかった。
「ガキ、来たか。ルールは俺がきめる。いいな?」
「あぁ」
「けっ、少しは怯えろのよな。それでだ、ルールは…そうだな…致命傷を与えた方の勝ちってのはどうだ?」
ザックはニヤニヤしながら、目の前のガキをいたぶることだけを考えている。
「うん。いいよ。この街での居場所無くしてやるよ」
「口の減らねぇガキだな…」
その2人のやり取りを他所に
「ダメだよ!僕!危ないよ!ほら今からでも遅くないから!ね!やめよ!」
女の子が騒いでいる。
するとザックが
「男の決闘に女が口出すんじゃねぇよ。このガキが」
「う…」
思わず泣きそうになる女の子
「大丈夫。お姉ちゃん。僕に負けないよ?」
周りはまだかまだかと楽しみにしている。
そして、なんだかんだで賭けをしている。
大穴である隼人に掛ける者は2人しかいなかった。
「審判は私が務めます。お互いの命が危なくなったら止めさせていただきますので。思う存分やりあってください」
そう現れたのは先ほどの受付のお姉さんだ。
「両者構え!」
少し驚いた隼人だったが、すぐに敵を見据え腰の刀に手をやった。
対するザックも背中から一振りの片手剣を抜き出し構えた。
「それでは…」
「3」
「2」
「1」
「始め!」
隼人が異世界に来て初めての戦いが始まる。
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