クエスト終了、そしてユニの森






「そぉいっ!」


 バキャッ!


《キャウンッ!?》


 六尺棒で頭を殴りつけられたオーナレスドッグが、また1匹悲鳴をあげて光と化した。


「しゃあっ終わったぁ!」


 あの後、俺とミクは掲示板を覗いて3つのクエストを受けた。


《ワシの畑を守ってくれ》

《美味しいスープが食べたいの》

《研究資材の調達》


 それぞれオーナレスドッグの討伐クエスト、ラビムーの兎肉収集クエスト、ジェリースライムの核収集クエストだ。

 オーナレスドッグとラビムーのクエストは比較的楽だった。

 うん、比較的。

 問題はジェリースライムだ。

 ジェリースライムのクエストは壊れてない核が3つ必要らしく今まで必死に戦って分かった事がある。




 核を壊さないためにダメージの入りにくいスライムの水の部分を攻撃しなければならなくて超めんどくさい!




 必死こいてようやく完了までこぎつけたが、ここまでくるのが本当に大変だった。

 スライムを17匹、ひたすらに倒し続けたのだ。

 体力的には問題ないが、核に当たらないように攻撃するのに精神を使い、ちょっと疲れた。

 ならば魔法を使えばと思ったが、ティアバレットの水滴は逆にジェリースライムに吸収され、ほとんどHPに影響せず。

 結局棒で水部分を殴り続けるしかなかった……。

 火魔法を使えるミクがいなかったら、もっと大変だっただろう。


「ありがとうな、ミク」


 ミクの両頬を挟んでウリウリ、ミクは尻尾をブンブン振って大喜びである。

 そして2人で町の掲示板まで走って帰り、クエスト完了の証として掲示板にアイテムボックスから《犬の牙》を20個、《兎の肉》を5個、《スライムの核》を3個トレードする。

 アイテムボックスの選択画面を見て思い出したけど、昨日の丸焼きに《スライムスターチ》使うの忘れてた……。


『congratulations!!

《ワシの畑を守ってくれ》をクリア!

 75Expを獲得!

《ミク》は75Expを獲得!

 250ティムを手に入れた!

 お礼に《ラディカ》を5個貰った!



 congratulations!!

《美味しいスープが食べたいの》をクリア!

 50Expを獲得!

《ミク》は50Expを獲得!

 300ティムを手に入れた!

 お裾分けに《スープの入った瓶》を貰った!



 congratulations!!

《研究資材の調達》をクリア!

 60Expを獲得!

《ミク》は60Expを獲得!

 350ティムを手に入れた!



 LVが4になりました!

 自動割り振りステータスポイントを1入手!

 ステータスポイントを1入手!

 SPを1入手!

 メニュー画面よりステータスポイントを振り分けてください。


《ミク》のLVが3になりました!

 自動割り振りステータスポイントを1入手!

 ステータスポイントを1入手!

 メニュー画面よりステータスポイントを振り分けてください。』


 このゲームで『召喚魔法』取得者や従魔を従えるガチ勢は少ないと聞いていたが、クエストの経験値も半分こになるからだと今理解した。

 確かにこりゃ自分のレベル優先のヤツは嫌がるよ。

 だが、俺は召喚魔法をやめない。

 さて、クエスト中にもレベルが1上がり、またクエスト達成報酬の経験値で1レベ上がってしまった。

 ミクも今さっきので1レベ上昇である。

 で、俺たちのステータスはこうなった。



 ユースケ

 ♂

 LV4


 HP:107(+2)

 MP:58(+1)

 STR:12(+1)

 VIT:10

 INT:12

 MND:10

 AGI:11

 DEX:11(+1)

 LUK:10

 hng:47/100

 tirs:26/100


《スキル》

《召喚魔法LV1》《調教LV1》《杖術LV3》《水魔法LV2》《魔力回復速度上昇LV1》《革鎧装備LV1》《鑑定LV2》《調合LV1》《料理LV1》


 9/10


 SP:4




 ミク

 LV:3

 子狐

 ♀


 HP:74(+1)

 MP:21(+3)

 STR:7(+1)

 VIT:6

 INT:8(+1)

 MND:6

 AGI:9

 DEX:5

 LUK:6


 親愛度18/100


《スキル》

《火魔法LV2》《幻魔法LV1》《噛みつきLV2》《爪LV1》《回避LV1》《野生の勘LV1》





 杖で殴りまくってるからか素振りを始めたからか、《杖術》の上がりが早い。

 こりゃ予想よりも早く杖を変えないといけないかもしれない。

 でもまだ大丈夫みたいだし、森に行ってみた後でいいかな。

 あと、クエストでもらった物を出して鑑定してみよう。


『《ラディカ》

 食材アイテム。

 普通に畑で育てられる、赤い色をした根菜。

 調理しても美味しいが、生でもボリボリ食べられる。

 ラビムーの大好物でもあるため、野犬の他にラビムーもこの野菜の畑を荒らしにくることがある。

 hng:−5』


『《スープの入った瓶》

 ラビムーの肉をコトコト煮込んだシンプルなスープの入った瓶。

 温かいままでも冷えてしまっても美味しい、優しい味のスープである。

 hng:−13

 tirs:−20』


 取り出してみたけど、《ラディカ》ってもう明らかに人参だったよ!

 スープの瓶はガラスの水筒みたいなのだった。

 できてすぐなのかめちゃくちゃ瓶がアチチ……。

 ていうかちょっと待て、なんでNPCの1人も動かなかったのに出来立てのスープがお裾分けされたんだ?

 ……まあいいか、そこはゲームシステムのお話ということにしておこう。

 しかしなるほど、マリカさんがあの時コスパがどうとか言ってたのが少し分かった気がする。

 確かに兎の肉と調味料だけでこの具沢山スープに匹敵するだけの空腹減少度ならコスパがいいといえる。

 実のところ、飲み物は道具屋に売ってる『皮の水筒』にそこら辺の川で水を汲めば『水入り水筒』という飲料アイテムになるらしく、それで喉を潤せば何ら問題ないようだからな。

 しかし、一回の動作で空腹も満たせて喉も潤せるスープの方が俺はすごいと思うんだけどなぁ。

 さて、気を取り直して今日の目標『ユニの森』探索に行こうと思う。


「森のクエストも受けてから行ってみようか」

「クゥッ!」


 正直こんな低レベルから次の地形に入っていいものかと昨日は思ったが、その時にゲームのサイトで調べた結果その森の適正レベルが5だったため、一つ下ならまだギリギリいけるだろうと思ったわけである。

 まあそんなわけで、


「ふんぬぁっ!」


《ギュウッ!?》


「キャーーッ!!」


《キャンッ!?》


「『(略)撃ち抜け』ぇっ!」


《キュ〜……》



 スライムに棒を振り下ろし、野犬を燃やし、兎を撃ち抜きながらようやく目標地点『ユニの森』の入り口に到着した。

 ここから先の森は火魔法がよく効く虫系統のモンスターがよく現れるらしい。

 時々道にあるクモの巣に引っかかると若干の行動速度低下デバフがつくので注意だそうだ。

 さらに、俺を殺したPKがまだ何処かにいるかもしれないのでそっちも注意である。


「となると、ミクが頼りだな」


《火魔法》という点においても、レベルは低いが《野生の勘》を持っているというところでもミク頼りな森の探索になりそうな事に今気づく。

 よろしくなと頭を撫でると、気を良くしたミクが森にトコトコ入り始めた。

 俺も慌てて周りを見回してPKに注意しながら森に足を踏み入れて、『ユニの森』の探索が始まった。


「クゥー!」

「おっ、楽しそうだな!やっぱり緑が嬉しいか」


 見渡す限りの木、木、木。

 俺の腰まで生えた草むら、時々小鳥の鳴き声が聞こえる。

 木々の間にできた隙間から差し込む太陽の光が柔らかく地面におりてきて、すごくマイナスイオンが出てそうな風景を演出している。

 やっぱり自然が嬉しいのか、ミクのテンションもうなぎ登りだ。

 なんかもう俺、異世界に来てるって言われても信じるわ。


「おっ、いい感じのキノコ」


 目の前の木の幹にキノコが生えているのを見つけ、《鑑定》を行使した。


『《ピルルタケ》

 ピルの樹に生えるキノコ。

 ごく一般的に流通している普通の食材。

 プギギルグの好物で、ごくたまに食べに現れたりするため、注意。』


 見た感じシメジに近いこのキノコはピルルタケというらしい。

 食材らしいので、もらって行こう。

 プギギルグってのがちょっと気になるけど。


「おお、薬草の群生地だ!」


 下を見て歩けば薬草や魔力草の群生地を発見し、上を見て歩けばリンゴみたいな果物のなる樹を発見した。


『《アッポの実》

 アッポの樹になる果物。

 そのままかぶりついても美味しいし、お菓子に調理すれば砂糖の塊かというくらい甘みが増す。

 食べ過ぎて晩御飯が食べれなくなる子供も多い。

 hng:−9

 tirs:−5』


 もうリンゴでいいじゃん……と思いながらアッポの実をアイテムボックスに放り込んだところで、目の前の木々の影からガサッと物音がした。

 ビクッとそっちを向くと、暗がりからでっかいアリが姿を現す。

 もしかして、アッポの実狙い?


「《鑑定》!」


『《バイトアント》

 ユニの森に生息する、大きなアリの戦闘種。

 これがいるということは、近くに採取種もいるということ。

 持ち前の強靭な顎で標的を噛みちぎる。』


 違う、俺たち(の命)狙いだった!

 ダダダッと駆け寄って来て俺に食いつこうとするバイト蟻を避けてからミクに回り込むように指示をする。


《シャッ!》


 バイト蟻の口の横についているレの字型の牙が開き、その奥に小さな牙が大量に生えた口が開いた。

 咄嗟に杖を口の中に突っ込むと、ある程度の長さが蟻の口の中に入って奥に当たる。


「うりゃうりゃ!」


 嫌がらせに喉の奥をガツガツ突いてみると、少しずつだけど明らかに蟻の頭上のHPバーが減った。

 外側は硬そうだけど、こうやって内側から攻撃するのは良さそうだな。

 さて、ミクの詠唱ももうちょっとかかりそうなので自分も水魔法使いますか。


「『質は水、形は…』」


 詠唱しながら片手で持った杖でガツガツ口の中を突いて蟻のヘイトを稼ぐ。

 蟻は怒って口をガチガチ言わせてるが、口の中に杖を突っ込んでるので俺に攻撃が当たるはずもない。


「キャッ!」

《キシャーーッ!》


 そうこうしている内に詠唱が終わったミクの《パイロキネシス》で燃やされて大ダメージを負うバイト蟻。

 俺がティアバレットを複眼にぶち込んで蟻のHPバーが無くなった。


《キシューー……》



『《バイトアント》を倒した!


 12Exp獲得!

 15tm獲得!


《ミク》が12Exp獲得!


 ドロップアイテム《蟻の脚》《噛付蟻の大顎》を獲得!


《水魔法》LVが3になりました!

《リキッドヒール》を覚えました!

《レインフォール》を覚えました!』


 おっ、今さっきのティアバレットで水魔法のレベルが上がった!

 やったねミクちゃん、新しい魔法だよ!

 しかも待望の回復魔法、これである程度の傷も安心。

 しかしこのレインフォール、名前からして効果の想像はつくけどどんな用途で使うんだ?

 ……まあ、そこら辺は町に帰ってから調べないと。

 メニュー画面に夢中になって、こないだの野犬の時みたく囲まれてたんじゃあ目も当てられないからね。


「よし、どんどん探索しよう!」


 とミクに言って歩き出すと、すぐにまた蟻を見つけた。

 またバイト蟻じゃないかと警戒したけど、どうも牙が短い。

 バイト蟻と違うのかと《鑑定》をかけると、面白い鑑定結果が出た。


『《コレクトアント》

 ユニの森に生息する、大きなアリの採取種。

 戦闘種と共に活動し、護衛されながら果物や樹液を採取する。

 尻に甘い糖液をため込んだ袋があるため、よく他の生物に狙われる。』


 尻に糖分の袋、食材アイテムだ!

 甘党の母さんにあげると喜びそうだな。

 普通に菓子でも作るときに使えそうだし、狩って糖分袋だけでも貰いうけよう。

 しかも、口の中にアッポの実とかオレンジ色の実とかいっぱい詰め込んでるところからして、あの中にいっぱい食材アイテムがある!

 流石に蟻の腹からでた食材は使えないけど、鑑定して特徴を覚えれば自分の目で採取も可能なはずだ。


「行くぞミク、食材調査だ!」

「キュアッ!」


 結果、バイト蟻程の戦闘能力のない採取蟻は何の苦労もなく倒せたのだった。



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