気を取り直して、生産タイム!
気がつくと、「始まりの町」の噴水広場に立っていた。
隣にミクもいないし、何もかも唐突すぎて頭がついて行かない。
ていうかもう驚きすぎて冷静になってしまった。
何が起こったんだコレ?
「……ああそうだ、ログを見れば状況が掴めるかもしれんな」
メニューからログ機能を呼び出して死に戻りする直前のログを見る。
『《ミク》は『ミラージュ』を使用、《ラビムー》は幻に包まれた!
《ラビムー》に
《ラビムー》の弱点部位が《鑑定》の結果及びモンスター図鑑に記されました。
《ラビムー》を倒した!
5Exp獲得!
2tm獲得!
《ミク》が5Exp獲得!
ドロップアイテム《兎の肉》・《兎の角》を獲得!
《水魔法》のレベルが2になりました!
《???》による
《???》による
あなたは《???》による《ツインシュート》で派生した
あなたは死にました。
109Expを失いました。
143tmを失いました。
LV1HPポーションを2本奪われました。
LV1MPポーションを2本奪われました。』
ふむ……ミクの魔法がミラージュって名前だったのかーとか水魔法がレベル2になったぜイェーイとか色々あるけど、今はそれは後に置いておこう。
まず《???》ってどういうことか。
確かB&Rの攻略wikiに《隠蔽》というスキルがあって、その効果がステータスを隠すだった気がする。
「つまりステータスを隠したプレイヤーって事か」
あと、《ツインシュート》ってのは確か飛び道具のスキルだった。
なんだったっけ、弓か?銃か?投げナイフか?
ヘッドショット……遠距離攻撃スキルで各部位を狙うと上手くいくと部位破壊が起こるとwikiに書いてあったが、これは1番下に即死攻撃として書いてあったな。
統合すると、《隠蔽》スキルと何か遠距離武器スキルを持ったプレイヤー……恐らくPKにどこかから頭をぶち抜かれて瞬殺されたんだろう。
スキルを使う亜人系モンスターはまだ実装されてないらしいからな。
ポーション……は、まだいいか。
クイックポーションを奪われて味を占められ、標的にされ続ける方が辛い。
今回はまだ運がよかったと思おう。
あと、経験値も金も半分失うって意外とキツイ。
総合的に、
「ああ、俺一回死んだのか……」
一周回ってなぜか思考がクールになってしまっている俺は呟いた。
しかも、それはモンスターではなく悪意ある人間によって為されたという事に腹が立ってくる。
でもなにより、
「この世界の俺は死に戻りが効く!」
これが分かったのが1番嬉しかった。
そう思うと、安い買い物だったのかも知れないな。
「さて、どうするミク?今日はもうレベリングやめとくか?」
「クゥ……」
とりあえずで召喚魔法を詠唱し、死に戻りした事で送還されていたミクを呼び出して意見を聞く。
なんだか耳も尻尾もくんにゃりしてる、今日はもうやめて生産活動に移るかな。
……てかもう魔法詠唱暗記しかけるレベルだな、側から見たら完全痛い人だけど大丈夫か俺?
「とりあえず、そこの端っこに行こうぜ」
俺が立ち上がって歩き出すと、ミクもトボトボと付いてきてくれる。
やっぱり可愛いなぁ。
とりあえず人の邪魔にならないように道の端っこに座って、まずはアイテムボックスの素材確認。
《スライム水》
スライム属の体液。
色によって含まれている成分が異なり、それぞれ色々な薬の効能を強める効果がある。
《スライムスターチ》
スライムの体液が乾燥してできた粉。
万能粉として奥様達の戦場に常備されている、食卓の主役。
《スライムの核(破)》
スライム属の核。
本来なら魔法研究や魔導具作製にも使われる魔法使いの必需品だが、この核は強い衝撃により破壊されたようだ。
《兎の皮》
名は体を表す、そのまんま兎の皮である。
モフモフフワフワ、しかも数を揃えて鞣すと結構いい服の素材になる。
冬服にピッタリ。
《兎の肉》
よく肥えた兎の肉。
鍛えられた後ろ脚には肉がギッシリ詰まり、しっかり調理すると柔らかくて美味しい。
《兎の角》
ラビムーの角。
ラビムーは攻撃されるまでは逃げ回るが、攻撃されると怒って突進してくる。
この時、角を硬質化する事で威力を増幅させるのだ。
非戦闘時に倒すと柔らかくて役に立たないが、戦闘時に倒すと硬い三角柱の固まりが手に入る。
《犬の皮》
ゴワゴワしているが、丈夫な犬の皮。
これで作った服は、初級冒険者御用達のお得服である。
《犬肉》
スジが多くてあまり食用には向かない肉。
だがしっかりスジを切ると意外と食えた物。
《薬草》
《魔力草》
MP30秒毎に1回復、3分持続
クールタイム5分
食べると草の中に含まれた魔力が少しずつ体内に移っていき、ほんの少し魔力が回復していく草。
ただし苦味がひどく、加工しないと口にできた物ではない。
この中から《スライムスターチ》と《兎の肉》を取り出して、更に道具欄から《初級料理セット》と《調味料セット》を取り出した。
「あ、ちゃんと骨とか取り除かれてる」
兎の肉を手に持つと、骨とかが取り除かれているみたいでヘニャンとした。
元々そんなに兎の肉の加工は難しくないと捌き方が書いてあったホームページに書いてたけど、その工程も省けたのはすごく便利だ。
「とりあえず、最初は丸焼きかな?」
大丈夫だと思うけど念のため『ティアドロップ』で兎肉をサッと洗って《調味料セット》に入ってた塩と胡椒を適当に揉み込み、初級料理セットにくっついてた某狩猟ゲームの肉焼きセットみたいなのに肉を取り付けた。
「ミク、火を頼むよ」
「キャッ!」
ボッ
同じく料理セットにくっついてた携帯コンロみたいなのにミクに頼んで火をつけてもらって弱めに調整、肉をゆっくりクルクル回しながら焼いていく。
「そういえば、ミクの魔法リスト見てなかったな…」
自分の使える魔法は確認していたけど、ミクの方は確認してなかった。
連携を取る上でまず仲間の戦闘能力を知るのは定石……これは失策だ、忘れない内に見ておこう。
左手で肉を回しながら右手でメニュー画面を開き、ステータスからミクの魔法を開いた。
《幻魔法LV1》
『ミラージュ』
相手に催眠をかけ、僅かな間幻影を見せる。
度々見る、相手をアタフタさせる魔法だ。
かけられた側はどんな光景を見ているのか、少しだけ気になる。
《火魔法LV1》
『イグニッション』
任意の体の部位で発火現象を起こす。
対象に直接叩きつける必要がある。
反撃を食らう可能性もあるが、威力がパイロキネシスより若干高く発動が早い。
尚、発動者は燃える事はなく、熱くないらしい。
ミクは爪で引っ掻く時に爪に使い、引っ掻き焼き切って相手に重大な傷を負わせてるようだ。
ミクぇ……。
『パイロキネシス』
視界の物を発火する。
目で見るだけで対象を指定できるため命中しやすく反撃を食らう可能性もないが、威力がイグニッションより劣るし発動も遅く、何より誤爆も多い。
生産時にミクに炎を頼むと使っているのがコレ。
殴るプロセスがメンドくさいらしい。
幻魔法の方はあまり魔法のレパートリーが多くないのかな?
ちなみに、俺の水魔法はこうだ。
《水魔法LV2》
『ティアバレット』
毎度おなじみティアバレット。
水滴が弾になるから、水筒でも持ち歩けば空気中から水分を集めるプロセスが省けそうな気もする。
今度家で実験してみるか?
『ティアドロップ』
生産に一役、ティアドロップ。
地味に助かってます。
でも、どちらの魔法も戦闘で使えそうな火魔法と違って水魔法は戦闘と生産の分け方がシッカリしてるな。
あと生産以外にも、リアルで転けた時の消毒にも使えそうだ。
レベル2でも魔法が増えてないなぁ…どの位で増えるんだろう?
あと、謎なのが召喚魔法だ。
今はまだレベル1だから《召喚》と《送還》しか使えないけど、新しい呪文は…そして仲間はどのタイミングで増え、どういう基準で種類が決まるんだろうか。
思えば謎が多い魔法である。
「クゥ!クゥー!」
「ん?おお有難うミク、いい焼き色に焼きあがったね」
考察しているところをミクが膝に肉球パンチしてきたので前を見ると、左手で回す兎肉がいい焼き色になっていた。
火を止めて棒から肉を外して料理セット付属の皿に乗せるとポップアップメニューが表示される。
『《兎の丸焼き》
兎の肉をシンプルに塩と胡椒で味付けし丸焼きした、完全なる漢料理。
弱火でじっくり焼き上げて肉汁を閉じ込め、肉の素材の良さが手伝って普通に美味い肉料理になっている。
少し焦げも付いているが、それもまた漢の料理らしさである。
hng:-20
生産プレイヤー:ユースケ
ランク2』
へー、なんか本当に説明文に柔軟性がありすぎる……スゴイね!
色々工夫とか考えると何万通りものアイテムができることになるだろうし、スタッフの人も説明文作るの大変だろうに……ほんと、お疲れ様です。
さて、とりあえず実食タイムだ!
料理セットからナイフ&フォークを取り出して、いただきま
「こんにちは、料理作ってたの?」
「!?」
と思ったら女性アバターのプレイヤーさんが話しかけてきた!
誰だ?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます