第4話 秘密


 あの後、やっぱり喫茶店は居心地が悪くなり、近くの公園へと場所を移す。

 やられたなこりゃ。あそこには客が少なくなった時ぐらいしか行けなくなったわ。

 そして俺は桜井に当然の疑問をぶつける。


「桜井、なんで後輩連れてきた?」

「実はな、今事件の捜査中なんだよ」

「それはさっき聞いた。置いてくればいいだろ」

「それが昔の知り合いに会うって言ったら聞かなくて」


 なによそれ。それってつまり俺のファン?別に嬉しくないなぁ。

 ていうかそれって後輩に俺のことが伝わってるってことだよな?


「俺のことを後輩に広めてるのって」

「あぁ、俺だ。昔いたやつのことを言って悪いか?」


 いや悪いだろ。昔なんだから。今は

部外者無職なんだから、たぶん。

 でも悪気がないことが分かるから何も言えないんだよな……

 その肝心の後輩はそわそわしながら俺たちに並行して歩いてるし。


 ……まぁいいか。俺たちはさっさと日避けの屋根がついたベンチに腰掛ける。


「あ、葉山くんは立っててね。このベンチ、2人用なんだ」

「……」


 そう言うと葉山は本気でしょげた表情をしながら立つ。

 それは罪悪感を感じますよ?


「嘘だって、座れよほら」


 そう言って葉山をさっさと座らせると俺は早速本題へ入る。


「桜井、ついでに葉山くんも。聞いてほしい話がある」


 そう言うと、2人の表情は先程とは打って変わって真剣なものとなった。

 さすが現役。少し怖いくらいだ。


「実は、俺、タイムスリップしちゃったみたい」


 ◇


 沈黙、誰も言葉を発さない。ただ目の前の人は「何を言っているだ」とでも言いたそうなめをしているが。

「言っておくが大真面目だ。目が覚めたら老けてるし、腕がないからびっくりだったわ!」

「そ、それでか……」

「なんだよ桜井」


 桜井が疑問に答えが得られたような表情をする。


「いや……実はちょっと違和感があったんだよ。西川のテンションが、ちょうど10年前みたいな」

「そう、そーだよ!ドンピシャ!俺は10年前から来た、西川 誠だ!」

「う、嘘だろ……」


 桜井が信じられないといった表情をしているが、もう一押しだ。きっとあとちょっとで信じてもらえる。


「そうだな……よし、10年前の事件の全貌を詳しく欠かすことなく説明しよう!それなら信じてくれるな?」

「あ、あぁ、そうだな、信じよう」


 そして俺は事件の概要を欠かすことなく省くことなく全部説明しきった。

 どんな事件かって?察しろよ。機密なんだ。


「お前は……本当に10年前から来たのか……」

「だからそう言ってるじゃないか」


 まぁはっきり言って信じてもらえる方が異常だが。ここは友情に免じて1つ、ってところだ。


「す、すごい……タイムルーパーがいる……!目の前に!」


 葉山くん、は説明不要のようだな。

 無条件で信じてくれてる。

 こりゃみんなに好かれるだろうな。

 良い人にも悪い人にでも。


「信じてくれるみたいだな。じゃあ早速聞きたいが左腕が無くなった理由分かるか、桜井」

「分かるぞ、トラックに轢かれて左腕がズタボロ。そのまま切断、だ」


 桜井はすでに落ち着きを取り戻したらしく俺の質問にすらすら答える。

 そしてその内容は伊藤の話と一致する。

 ただ今回はもっと踏み込む。事情を知ってもらっている分、聞きやすい。


「じゃあさ、そのトラックに轢かれた理由まで、分かるか?」

「一応分かるが……それ聞くか?」

「なんだよ?その含んだ言い方」


 桜井は「まぁいいか」と言って話し始める。

 ……思えばこれがきっかけだった。


「お前、庇ったんだよ。女の子を」



「は?」

そりゃ当たり前だけど驚いた。


「女の子を庇った……?」

「そう、轢かれそうになってるところをな。だけど代わりにお前が轢かれちまった」

「そういうことか……やっぱり俺が警察を辞めたのは?』

『あぁ、その怪我が原因だ。……でも俺はお前のその後の行動に驚いたな」

「え?俺、何したの?」

「まず、お前が庇った女の子には身寄りがいなかった。諸事情でな。で、お前がその子を助けたからお前と女の子には接点ができた……分かるよな?」


 おいおい、まさかだよな?

 いくら俺でもそこまでは……まぁ、やりそうだが。


「そう、お前、その子を養子に引き取ったんだよ。養子むすめとして」





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