健忘症

 昔々

 海がもっと海だった頃

 森がもっと森だった頃

 神様がまだ見えていた頃


 誰もが言葉を必要としなかった

 誰もが疑う必要がなかった

 誰もが争う理由を持たなかった


 神の吐息が風の囁きに変わり

 天使はいつしか鳥となる

 精霊の想いをイルカはうたにして


 長い長い朝と夜

 ぐるぐる廻って同じトコ

 生まれ変わって死に変わり

 僕らは何を受け継いだだろう


 まだ何も見えない霧の彼方で

 貴方は優しく笑っているの

 天使のような残酷さで

 ほら 僕は手を伸ばしているのに


 天使のように鳥が舞い

 精霊のようにイルカはうたう

 天上には昔から変わりなく

 昼に夜にと慈愛の光


 そして僕らは悪魔のように地を這って

 自分の毒で死んでいく

 みんなみんな道連れにして

 それは淋しくならぬよう

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