第20話 米倉涼子?似のIさん  ②

「は~い、大丈夫で~す!」



お~っと!最初のツンデレ系の雰囲気とはうって変わって可愛らしい返答!



思わずホッと胸を撫で下ろした。90分間の施術が終わり、Iさんの反応は・・・



「すっっごく良かったわ!エレジーさん!これからもお願いします!」



「こ、こちらこそ、ありがとうございます!」



先程までのツンと澄ました表情とは違う、Iさんのなんらかの基準をクリアしたのかにこやかな笑顔で言ってくれた。それからというもの、Iさんは私をヘビーローテーションで指名してくれるようになった。



ただ・・・ただ1つ、Iさんに止めてもらいたい事があった。



それは私を「先生!」と呼ぶ事だ。



予約の電話をする時から「今日、先生います?」とやるもんだから、他のスタッフからいじられてしまう。



「先生!Iさんの予約入りました!(笑)」



「もう、Iさんはコブシさんの信者やな。」



私が指名客で施術できない時、他のスタッフがIさんを施術した。するとIさんは急に機嫌が悪くなった。



「もういいわっ!」



そう言って、残り時間を切り上げて帰られた。その施術したスタッフは当店のナンバー1、県内のランキングでも3位以内の実力者K君だった。



こういう世界は、実力主義なので、簡単に指名の乗り換えがある。だから私も内心ヒヤヒヤしていた。



(もし、K君の方がいいわ!なんて言われたら・・・)



でも、そんな心配は杞憂に終わった。



「もう、エレジーさん勘弁して下さいよ~!自信なくすわ!」



K君は冗談とも本気とも思える口調で言った。他のスタッフは、その1件以来、Iさんが来店の予約をされる度に戦々恐々としていた。



「なんで先生がナンバー1じゃないのか不思議でしょうがないわ!」



その件以来、Iさんは私以外の施術者は受け入れられなくなった。



(ふっ、俺は陰のナンバー1なのさ・・・)



・・・いかん、いかん、ただでさえ木に登りやすい性格の私。謙虚に、謙虚に・・・



私は他のスタッフと違って、昼間は自分の治療院プラス他の仕事。週3日、夜の5時間マッサージ屋に出勤する。



だからランキングにもはいらない。私自身、ランキングなんかどうでもよかった。出勤した時間フルでお客様がついて稼げれば、それで良かった。



それから、Iさんは来店されるたびに差し入れをしてくれる。果物やお菓子など。バレンタインにもチョコを持ってきてくれたりする。



「まるで、貢いでもらうホストやな!」



そう揶揄される始末。



「先生!ウチの母の膝治して下さい!」



そう言って、お母さんを連れて来たりもした。本当は治療行為はご法度なんだけど、自分に出来ることで頼まれたら嫌と言えない性格の私。



まぁ~そこまで頼られたら治療家冥利につきるというものだ。悪い気はしない。



ただ・・・この手のお客様は気を付けなければならない。良いときは良いんだけれど、一度こじれると諸刃の剣。



その剣で襲われるはめになる。



まぁ、人間なんて何処に踏んじゃいけない地雷があるかなんて、その人にしかわからない。目の肥えているIさんに、こんなに気に入って頂いている。ただこの一点だけを素直に喜ぶ事にしよう。



そして、題名の米倉涼子?の意味。



Iさんのスタイルは抜群だった。出るとこは出て、引っ込むところは引っ込んで。



ただ、おフェイスは・・・



でも、不思議なもので、段々とIさんが米倉涼子に見えなくもないと思うようになっていた。これが『あばたもえくぼ』というやつか・・・失礼。(笑)

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親指エレジー エレジー @ereji-

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