第18話 地下格闘家Sさんのこぼれ話


Sさんの地下格闘技試合でのこぼれ話・・・



会場は墨の入ったヤカラで溢れかえっていた。そのせいか屈強なセキュリティーたちがいたる所に立っていた。



1階の会場の出入口には、筋肉隆々の黒人が明らかに2、3人殺ってんだろ!的な目付きでこちらを見据えてくる。入場するときに受付で青い紙のリストバンドを手首に巻かれた。たぶん入場料を払っている証明になるのだろう。



イベントは一律4000円の自由席だけだと聞いていた。



これだけヤカラが多かったら、調子にのる馬鹿がいるから屈強な男たちを配置しているのだろう。



相変わらず、試合会場に入場しようとしている私を黒人はジッと見据えてくる。



私も元ボクサーのはしくれ。



試合でメンチの切りあいでは目を逸らした事は一度もない。



(か、か、金払てるし、な、な、なんやねん!)



と、黒人の威圧感に負けそうになる自分を奮い立たせ、横を通って中に入ろうとした。勿論、その間も目を逸らさず黒人を見据えたまま。



すると、私がまさに黒人の横を通り過ぎる寸前に、黒人の丸太のような腕が伸びてきた。私はネックブリーカーでもされるのかと、表面上は微動だにしてなかったと思うけど、心の中ではビクッとした。



「ん~NO!!」



黒人に何か言おうかと思ったけれど、ホンマにネックブリーカーをされたらヤバいと、即、踵を返して受付に聞きに行った。いかついけれど、黒人に比べたらまだましなお兄さんに聞いてみる。



すると、1階はVIP席で特別料金らしい。私は無事に2階の自由席で、ネックブリーカーされることなく試合を見ることができた。



あ~怖かった。



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