第17話 地下格闘家のSさん ⑥

なんとか1Rが終わり、2R目。



もうその頃には、肩で息をしなくてはならない程スタミナが切れていた私。



本当だったら、攻めこまれてもおかしくなかった。



幸いな事に、私の前に出る圧力に、Sさんも引いたのか攻めてこず、下がり気味だった。



途中、ヘッドギアがなければ倒せていただろうという位、ジャストミートしたコンビネーションが当たった。



ブランクがあったけれど、体が覚えていた。



なんとか面目を保ったまま、2R終わった。



スパーが終わり、精魂尽き果てて、座り込んでいた私の元に、代表者の方が近づいて言った。



「コブシさん、Sはコブシさんとやるんだって言ってから、凄くくパンチの練習したり、頑張ってきました。キックルールでやっていただきありがとうございました!」



私の方こそ、いい緊張感を持てた時間を過ごさせてもらった。



私はSさんに、思っていた事を話した。



もしかしたら、気分を害する事を言ったかもしれない。



しかし、Sさんは真剣に聞いてくれた。



何なんだろう?



このさんざん殴りあった後の、ハンパない相手の事をわかりあえた感。(笑)



この麻薬があるから格闘技はやめられない。



「パパどうやった?」



息子の反応を楽しみに聞いてみた。



「真っ赤な顔で、泣きそうな顔になってたよ。歳なんだから無理しないほうがイイよ。」



心外である。



泣きそうな顔って。(笑)



Sさん!いい経験をありがとう!


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