第4話  外国人のお客様

深夜のマッサージ店にて・・・


私についたある外国人のお客様の話。


そのお客様は30分のコースを選ばれた。


「今日はどこを重点的にマッサージすれば宜しいでしょうか?」


「ん~あ~ショルダー・・・ア~ンド・・・こしっっっ!!」


どうやら日本語はカタコトしか話せないみたいだ。


腰の言い方が、エラい力強かったので、多分、腰がお疲れなのだろう。


言い方に、少し笑いそうになってしまったけれど・・・。(笑)


うつ伏せになってもらい、足の方からほぐしていった。


「・・・エスッ・・オ~・・・」


(ん?)


外国人のAさんは、どうやら何か呟いていた。


耳を澄まして聞いてみた。


「オ~イエスッ、・・・オ~イエスッ!」


何か聞いた事あるフレーズだなぁ?


あ!高校生の頃に見た、洋ピンのAVの男優と同じセリフだ!


そう気付いたら笑けてきてしょうがなかった。


まぁでも、気持ちがいいんだろう。


しかし、その反面、ゲイちゃうやろな・・・?と、不安になった。


結構、ガタイがいいので、ねじ伏せられたら抗えないかも・・・なんて事を考えていた。


下半身が終わり、背中に移った。


30分しかないから、せわしなかった。


「・・・ット!オ~・・・ット!」


(ん?)


気が付くと、呟いているフレーズが変わっていた。


また、耳を澄まして聞いてみた。


「オ~シットっ!・・・オ~シット!」


え、これって日本語でいうと「クソッタレ!」みたいな意味じゃ・・・。


「ア~Aさん、オーケー?」


私は英語調の日本語で聞いてみた。


「アン・・・オーケー・・・。」


まぁ、本人がエエって言うてるから、そのまま続行した。


「オ~イエス!」から「シットっ!」に変わるって、どゆ事?なんて疑問を抱きつつマッサージしていた。


すると、Aさんが急にムクッと起き上がった。


私は掘られるんじゃないかと、一瞬身構えた。


「ア~スミマセ~ン、ココの~ブブ~ンと~ココを・・・」


Aさんは、右の足首を指差し、次に左のふくらはぎを指差して説明しようとしていた。


でも、私はAさんに悲しい現実を告げなければならなかった。


「Aさん、スミマセン・・・後、2分しかありません。」


私が言った瞬間、一連の私と外国人のやり取りを笑いをこらえて見守っていた回りのスタッフから、思わず笑いが起こった。


「アン・・・オーケー・・・。」


Aさんは、これぞ外国人っていう肩をすくめながら、悲しそうな顔でそう言った。


しかし、「オ~イエス!」から「シットっ!」に変化した心境は何だったのだろう?


わからない・・・。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る