第3話 2点の男

ある夜のお客様。


30代の普通の体型の男性。


「こことここ、二点だけ押してくれますか?」


30分コースだったそのお客様は両耳の下のくぼみを指差して私に言った。


お客様がそう仰られるので、最初からその二点を片方ずつ親指で押し始めた。


「もっと強めでお願いします。」


私は耳の下のくぼみなんて痛いだろうから、5割くらいで押していた。


そう言われて、7割くらいで押し始めた。


「あの~もっと強くできます?」


「わたくし力は弱い方じゃないですけど、よろしいでしょうか?」


今度は自分のMAXで押し始めた。


「お客様、これくらいで大丈夫でしょうか?」


「はい、丁度いいです。」


私はもっと強くって言われたらどうしようかと、内心不安だった。それ以上は無理だったので。


しかし、親指のみ二点を全力で30分。


普通、指が痛くなったら、肘とか掌底で指を休ませるんだけど、場所が耳の下のくぼみだけに指以外使えなかった。


いつもとは違う汗のかきかただった。



なんとか30分乗りきった時には、親指は完全にぶっ壊れていた。


しかし、あのお客様痛くないのかな~?


世の中にはいろんな人がいるものだな~。

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