閉鎖確認

岩崎さんはゆっくりとロープ伝わりながら、綾音さんの船体にたどり着いた。

膝を軟らかく使って、船体の壁にあるバーに着地をした。

反発力に負けないように左手で船体外部に取り付けられたバーを握りしめる。

そして解放された気密扉からエアロック内部に入っていった。

そして僕に対してハンドシグナル、右手を握りしめ親指だけを立てる。

成功の合図だ。僕も了解の意味を込めて、同じハンドシグナルを送る。

宇宙服同士での無線通信の距離を離れているからハンドシグナルを送りあった。

さっきまでは琴音さんの非常用通信系を使って連絡を取り合っていたから、個人同士の無線のチャンネル番号も分からない。そして艦内にのみ通信が行える非常用通信系は琴音さんの船体の外に出たから使えない。

ここで油断したらだめだ。まだ任務が残っている。

それに古典ピンチになれば古典20世紀末のSF漫画になる。

それは嫌だった。

琴音さんにまだ通じる無線を使って話しかけた。

「一度外に出て、ロープに安全帯で体を固定してほしい。ドアを閉めるよ」

少し迷ったみたいだけど、琴音さんは船体から体を乗り出しロープに安全帯のフックを引っかける。

その事を確認すると、ゆっくりと気密扉を固定しているドアチェーンを外した。

「気密扉閉めるよ」

琴音さんも拳を握りしめて、親指を立てるハンドサインで、了承してくれた。

僕は足に力をこめながら、ゆっくりと気密扉を閉める。

ゆっくり閉めるのは無重力なので変な方向に力が作用すると大きな事故になるからだ。4分の3だけ気密扉を閉めると体をのりだし船外の右がわにあるバーに安全帯のフックをかける。今度は右がわのバーを右手で掴み、足はゆっくりと船外に設置された四つバーの気密扉から見て、下がわにあたる部分においた。

そして力まかせに扉を閉めた。ここまで来たら後は琴音さんと僕の帰還だけだ。


                                つづく

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