帰り道

僕は琴音さんに船体外部側にある気密扉の確認をお願いした。

もちろん、簡単なハンドサインだ。

琴音さんは拳を握り親指を立てる。

気密扉の閉鎖の確認だった。琴音さんは機械だから間違えないし、記録も残る。

僕は琴音さんを一度、指差し、綾音さんの船体に向かって指を向ける。

琴音さんから行って欲しいと言う合図。

僕は船同士をつなぐ命綱を回収しながら綾音さんの船体に戻らないといけない。

危険な任務だけど船外作業要員に課せられた仕事なのだから仕方が無いし、琴音さんに何かあった場合、僕が助けないといけない。

琴音さんは数秒間、琴音さんの船体を見つめ、何か決断し方の様に体の向きを変えて、宇宙服に設定された安全帯からフックをロープにかけた。

そのまま、すっとジャンプする。

人型インターフェイスにしかできない生活な角度と速度で綾音さんの船体に到達する。綺麗に膝の関節を使い、慣性力を打ち消し、バ-を掴み綾音さんの船体に入っていった。

次は僕の番だ。


ここまでは冷静だった。


ふと、岩崎さんの酸素残量の事が頭によぎる。


命綱はあるけど、変な慣性力を着けて、まげてはいけない。


人の命を預かる不安。


いけない。


僕はみんなのために帰還しないといけない。


僕は一度目をつむる。


覚悟はしたはずだ。


僕は飛ぶ。


そして僕は琴音さんの船体を蹴りだした。

                                続く

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