気密扉を閉めてから
僕たちはブリッジを出て、気密扉を固定していたフック付き鎖を解除し、ブリッジに入るための扉を閉めた。
自動的に独立した電源で動く気密扉の鍵がかかる。
それも琴音さんの自己防御システムである対海賊警報を解除できていないからだ。
それでも船を放置するのには約に立つと思う。
僕はロックの確認をする。
扉はまったく動かない。
つなげっぱなしの船内通話システムを利用して、琴音さんに話しかける。
「気密扉の固定を確認してください。岩崎さんもお願いします」
「目視で確認しました。問題ありません。艦長はどうですか?」
「私も確認しました。宇宙服のカメラで記録しました。なんて言うかお役所仕事は面倒くさいわね」
「所有権の確認もかねていますからね」
「琴音はイジワルね。分かっているわよ」
「楽しい会話も酸素の無駄になりますよ。岩崎さんが先頭で次に琴音さん、最後尾は僕で進みます。岩崎さん、先頭の安全確認をお願いしますね」
岩崎さんと琴音さんとする会話も楽しいけど、今はそんな場合じゃない。
「そうね。酸素の無駄よね。順平君は私についてこれるかしら?」
「急ぎすぎも、酸素の無駄使いと危ないですよ」
「心配してくれているの?」
「もちろん」
「運命の出会いとか感じてるの?」
僕はめちゃくちゃ恥ずかしくなる。
「そう言う意味じゃありません!」
「あわてて否定しなくても良いのに。お姉さん、傷つくわ」
「岩崎さん」
「酸素の無駄使いよね。からかっただけよ。でももう、私たちは順平君の奴隷なのよね。逆らってお仕置きされるのも、酸素の消費も気になるし、進みましょう。ついてきてね、海賊さん」
岩崎さんは、そう言ってエアロックに向かって、床を蹴るようにして、推進力を得ながら進んで言った。
僕は追いかける様に進んでいく。
無重力空間で進むのも大変だけど、実は止まる方にエネルギーがいるし、難しい。重力も空気抵抗も路面との摩擦もどれも利用できないからだ。止まる方法は船内に設置されているバーを掴んで、全身の筋力を使って強引に止まるだけ。
岩崎さんの動きを見ていると、宇宙生活者としての力量が分かる。
完全に無重力生活を送っていた人の動きだった。お役所仕事的な作業はあるけど早くすみそうだなと僕は思う。脱出作業の本番だ。
続く
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