脱出作業

「データ移行作業を終わりました」

外付けのハードディスドライブにメモリーと言うか思い出のデータ情報を詰め込んだ琴音さんは僕に作業を終わった事を伝えてくれた。

「琴音さんも脱出するのに文句はないね」

「はい。順平さん」

「岩崎さんはどうかな?」

「いきなり高飛車になったわね、順平君、ふふ」

高飛車なつもりでも無かったけど僕は言い返した。

全く酸素の無駄使いだった。

「一応海賊なものですから、岩崎さん、琴音さん、僕の順番で脱出します。無粋な海賊にされたのだと思ってあきらめてください。琴音さん?気密扉を閉めたら自動的に設定されたパスコードが気密扉の鍵を閉めるんだよね?」

「はい」

「密閉状態ならまた動かせるよね。また、船を取りに来よう」

「はい」

少し低く、綾音さんに似た甘い感じの声で答えてくれた。もうあきらめとか絶望感とか持っていないようだった。

「岩崎さんもいいですね?」

「良いわよ。海賊さんだから、やっぱり強引なのね?お姉さん、困っちゃう♪順平君の好きにして、私たちは君の奴隷なんでしょ?」

岩崎さんがきれいな声で無線機越しなのに、ささやく様な声で僕にささやきかけて来る。

そんな雑念を振り払う様に言う。

「脱出しましょう。鍵は僕が閉めていきます」

僕達の脱出作業の始まりだ。


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