ハードポイントに向かって
ブリッジを出て、船外作業要員室に入ると僕はドアを閉めた。
そして自分の宇宙服の電源を入れて、点検作業を始める。
自分には焦るな、恐怖に飲み込まれるなと言い聞かせる。
恰好を着けて出て来たけど、本当は怖い。
酸素供給系異状無し。
宇宙服の破損個所は無し。
バッテリー及び充電率異状無し。
確認が終わると宇宙服を着る。
「光帆さん聞こえますか?」
「はい。聞こえます」
「通信系に異常の無い事を確認したよ。もう廊下に出ても大丈夫かな?」
「綾音ちゃん、大丈夫?」
「はい、大丈夫です。減圧は完了しています。エアロックでの減圧を行う必要はりません。それとこれから海賊との交渉を行いますから、チャット機能で連絡を取り合います。それと光帆さんは私のサポートに回ってもらって私が順平さんに指示をだします」
「音声入力を起動。通信をチャットモードへ。綾音さんよろしくね」
綾音 はい。よろしくお願いします。
順平 行きます。
そう言うと僕は船外作業員質のドアを開けた。すでに廊下は真空の状態になっており、船外作業員質のドアから外に引っ張りだされる力が働く。無理やり転倒しない様のこらえると、力任せにドアを閉めて、迎撃ミサイルシステムの一番近いエアロックを目指して走り始める。階段を上り、廊下を走った。本来重たい宇宙服だけど、そんな事を気にしている余裕は無かった。
「光帆、通信回線を開いて」
高飛車な工藤亜里沙の声が聞こえる。
ブリッジの様子が音声データで流れる設定になっている。
確かに無音の宇宙空間、それも一人で戦闘下に船外作業を行う事はは怖いと思う。
「お、女ばかりじゃないか。宇宙船を譲り渡せ。命だけは助けてやる。俺様が楽しんだらどこかよその海賊に高く売りつけてやるよ」
「あんたモテないでしょう?」
「そんな事は無い。俺にかわいがられた女はみんな惚れるぜ」
「艦長、本当の事を言っては気の毒と言うものでしょう」
「げ、ビショップ型アンドロイド」
「そんなうれしそうな声を上げないでください。海賊行為をやめて私の指導を受けたいのでしょう」
ビショップ先生まで。でも時間稼ぎにはなりそうだ。
エアロックに到着する。僕は内側のドアを閉めると、エアロックに備え付けられている命綱を取り出した。外のドアを開ける。
「ビショップ型アンドロイドをそこで破壊しろ。そして船を明け渡せ。そうすればお前ら全員かわいがった後に慈悲深い海賊に売ってやるぞ。お前らみたいな子供殺すほど俺は残酷じゃない。これでも慈悲深い男なんだぜ」
「へー。でもそもそも海賊が商品を破壊する事ってあるのかしら。自分より立場の弱い人間にしか相手にできないんじゃない」
「そんな事は無い。俺は狐の様に狡猾で、狼の様に残酷だ」
僕は命綱を宇宙服のフックにかけてそっとエアロックの外側の扉を開けた。
そこには宇宙空間が広がっている。
酸素も水も重力も無い世界だ。
一度男が言った事は決めた事は変えてはいけない。
一生後悔する。
よし!
僕は宇宙空間に飛び出して、エアロックの扉を閉めるのだった。
エアロック付近で体を固定するバーに命綱のフックを取り付ける。
そして、エアロックに向かって宇宙服の吸着靴を船に押し付けて歩き始めた。
「もしかしてあんたってお金がある時にモテるタイプでしょう?」
「そんな事はない!ただ周りに女がいないだけだ」
「かわいそう」
「そんな時は男性だけで楽しみましょう」
「だからそのビショップ型を破壊しろ。そうすれば俺様のグランドスラム対艦ミサイルで女の喜びを教えてやるよ」
「グランドスラム対艦ミサイルは早くて数が打てないのって本当?」
「そんな事は無い。力強いぜ」
何の話をしているのやら。
真剣な交渉を聞いている時に迎撃ミサイルシステムのハッチについた。
僕はハッチ周辺のバーに安全帯のフックを取り付ける。さぁいよいよだ。
戦闘下での船外活動が始まるのだった。
続く
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