工藤亜里沙の試験申請

工藤亜里沙が示した出航予定時刻まであと少しに迫り、全員がそろったブリッジには緊張感が走っていた。

光帆さんは管制室との発信手順のやり取りとマニュアルを見ながら確認していたし、律子さんはエンジンを始動し始める事が許される安全宙域までの距離を確認していた。エンジンの後方に噴射すると学園を破壊する恐れがあるために、エンジンを使用しても良いという距離が設定されたいた。

そこまではあらゆるエンジンも使えない。

ドックからの発進は、船台に乗ったまま、途中までリニアカタパルトで加速して、船台が止まった所から、そのまま押し出される。

宇宙船のドックからの発進は初めての経験だ。

緊張感が高まる。

「順平、何ぼさっとしているの?」

「えっ?」

「えっ?じゃないわよ。順平の座っている席は何?」

「火器管制手席だけど?」

「マニュアルを読み込んでおきなさいよ。海賊を退治しに行くのよ。レーザー砲を扱えるの?」

「レーザー砲を打たなきゃならないのか?」

「そうよ。簡単な操作だと思うけど、手順の確認をしなさい。返事は」

「分かったよ」

「私は艦長よ。敬意を持って丁寧に返事しなさい」

正直悔しいが仕方が無い。船には艦長が必要で納得は行かなくても艦長には敬意を持たねばならない。

「くっ分かりました。艦長」

「そうそう、それでビショップ先生」

「はい、なんでしょう?」

「私の操船指揮資格習得のための試験をお願いします。最低限の船員はそろっていますし、緊急時少人数航行資格ではこれから先、船の航行はできなくなりますから」

「試験監督を行う事はできますが、指導を行う事はできなくなりますよ」

「はい。それほど危険が伴う航海でもありませんし、私には十分に試験を合格できる資格はあると思います。それに航海には艦長が必要だと思います」

「分かりました。これより艦長資格試験を始めたいと思います。一切の始動を行えなくなりますので、細心の注意してくださいね」

「分かりました。みんな今から私の指示に従ってもらうわ」

「資格が無いど、船には艦長が必要よね。分かりました。艦長」

「艦長頑張ってください。私も頑張ります」

工藤亜里沙に命を預けるのは嫌だけど、綾音さん、紗枝さん、光帆さんを守るためだ。仕方が無い。

「艦長、分かりました」

「よろしい。これから発進手順の確認を行います」

「艦長、船の自動点検シークエンスを始めてもよろしいでしょうか?」

「だめよ、綾音。綾音は相転移エンジンのコントロールと索敵だけを注意していなさい」

「でも」

「いよいよ発進前ね。みんな準備はいいかしら」

「操船に関しては問題は無いと思います」

「通信系も問題ありません」

「では発進準備完了ね。私に任せといて」

「はい」

不安が残ると言うより不安しかなかったけど、僕の乗組員としての初めての発進が緊張と期待が高まのだ。

                                   続く

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