ハードスーツ

僕と綾音さんは今、宇宙服の試着をするために脱衣所に来ていた。

男性用と女性用に分かれている。

僕は硬式宇宙服ハードスーツを試着しようとしていた。

本来、宇宙服は個人のサイズに合わせたオーダーメイドが適切なんだけど、それだと高価なものになったり、成長期の人間には身長が伸びるたびに作り直さないといけない。だからある程度のサイズの幅を持たせた宇宙服が宇宙船には常備されている。

僕の身長が170cmぐらいだからMサイズの宇宙服が合うはずだった。

この時代の宇宙服は吐き出された呼気を再利用する再循環系酸素システムと酸素ボンベからの酸素を得る二つの方法がある。

僕は宇宙服の電源を入れて、酸素の残量と電源の残量を確認する。両方とも満タンだった。再循環系の機能が働き始める。

だけど問題は一つある。

サイズを確認するには宇宙服を着なければならない。

また間違いが無いか有資格者に確認してもらう必要がある。

今目の前にいるのは綾音さんだ。

綾音さんの前で素っ裸になり、宇宙服のトイレの機能とか確かめないといけない。それは恥ずかしかった。

上半身くらいなら我慢できるけど下半身は恥ずかしい。

「どうしたんですか、順平さん?早く着替えてください」

「ちょっと恥ずかしいから、目をつぶっていてくれないかな?」

「恥ずかしいんですか?私はアンドロイドですよ」

「女の子だと思うよ」

綾音さんの顔が赤くなる。

「意識しちゃったじゃないですか?押さえていたのに。後ろを向いていますから早く着替えてください」

「ありがとう」

僕はそう言うと素っ裸になり、宇宙服のズボンをはく。ぴったりだった。

その次は上半身だった。ヘルメットと胴体の一体式だ。

緊急時にはヘルメットだけ外れる仕組みになっている。

上半身を被る。

自動的に酸素が供給され、各部位の気密の閉鎖が始まる。僕は左腕に設定されているボタンを押して、酸素の供給と通信系と宇宙服のから外を見るための透明部分に表れるディスプレイのボタンを押した。酸素の残量や宇宙服状態が示される。

「綾音さん聞こえるかな?」

「はい、聞こえます。通信系は異状ないようですね」

「その次は、ディスプレイの状態を確認するためにチャット機能を確かめたいから文章を送ってくれるかな?」


はい、分かりました。もう順平さんの方を見ていいですか?


僕は音声入力のボタンをして、返答する。


良いよ。異状はないようだね。これで宇宙服の設定は終わりかな?


はい。順平さん。格好良いですね。船外作業要員は宇宙服を着た姿が様になりますね。それとまだ緊急時の服を着たままでの装着が残っています。


じゃぁ着替えるから、また後ろを向いていてくれるかな?


はい。分かりました。


僕はチャットの機能をやめると、宇宙服を脱ぐ。


これで制服を着たままの宇宙服を着る事を試したら僕の出航前点検は終わりだ。


これから初めての航海始まる。その期待感に胸が膨らむのだった。                                          続く         

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