新入部員

「ポスターを張り出して三日も立つのに誰も見学に来ないわね。やっぱりビショップ先生が顧問と言う事が問題なのかしら?私ほどの美少女が艦長で部長ならイケメンが殺到すると思ったのに。よりにもよって顔が普通な順平だけなのかしら」

「それは怪しげな部活に入るのはためらうと思うよ。宇宙空間で船を扱ったり船外活動を行うのは危険と隣合わせだから。そんなシビアでリスクンの高い怖い事をしたいと思う人は少ないと思うよ」

「それくらいの事は分かっているわ。宇宙空間で暮らしてきた人間よ。でもビショップ先生が怖くても男子生徒が入りにくくても美少女の私でカバーとフォローはできるはずでしょう?」

「オーナー、自分で美少女と言うのは恥ずかしくありませんか?」

「何か問題があるかしら?順平はどう思うのよ」

長髪ストレートの髪の毛を右手でかきあげるのだった。

良く見る女性向けのシャンプーのCMで見る姿だった。

でも工藤亜里沙に外見に慣れたのと、言動に振り回されていた事もあり評価は冷淡だった。

「自分の口で美少女と言うのは問題があると思うよ。それに関わり合いを持つときっと不幸になる。僕の個人的見解だけど」

「照れちゃって。男の子はみんな私みたいな美少女に振り回されるのがうれしいんでしょ。それに誠心誠意、私を愛したいものでしょ。それが男の子の好みよね?」

「どこで得た知識かな?知識が偏っていると思うよ」

「私の読んだラノベ《古典》はたいていそうだったわよ」

「どんなラノベ《古典》を読んでいるのかな?ちょっと知識が偏りすぎじゃないかな?」

「どんなラノベ《古典》を読もうが勝手でしょ!」

「あの宇宙空間では円滑に話を進めるなコミュニケーション能力が必要とされてます。喧嘩はしないでください」

「まるで私が喧嘩を売っているみたいじゃない!」

「冷静になってください。オーナー、じゃなくて部長言い過ぎです」

どんどん。

ドアを叩く音がする。

「あの良いかしら?」

「すいません」

ブリッジに続くドアを軽くノックする音と女性の声が二つ聞こえた。

一つは声に芯があって明朗な感じだ。もう一つの声はどこか弱弱しい声だった。

論争中の僕たちは話を切り上げブリッジの入り口を見る。

その時、いら立っていた工藤亜里沙の顔が営業スマイルに変わるのを僕は見逃さなかった。

「うー。また人感センサーとカメラによるチェックが働いていませんでした。宇宙く海賊に襲われたらひとたまりもありません」

やっぱりずれている。綾音さんはアンドロイドなのだと再確認する僕をしり目に、工藤亜里沙は満面の笑みを浮かべて、話しかけている。

「私は部長で艦長で社長を兼任している工藤亜里沙です。入部希望の方ですか?」

入り口に立つ一人は緑色のリボンを胸元に着けたショートカットの女性でいかにも気が強そうな感じがする。緑色のリボンは確か二年生を表すりぼんだったなと思う。もう一人はその女性に隠れる様に後ろ側に立っている。

「そうよ。一応見学だけどね。私は秋月紗枝。分かっていると思うけど二年生よ。私の後ろにいるのが妹の秋月光帆《みつほ》よ。クラブ見学に来たのだけど、クラブの活動方針とか内容とか教えてくれないかしら?」

そうだ。僕もこれを知りたかった。

「このクラブは綾音、えっとこの船を使って乗組員の親睦と深めると同時に物資の運搬と航路の警備などの公共性の高い仕事を行いながら、部員の技量の向上とそのための単位を修得するための実習時間を得る事を目的としています。今活動をしていないのは非常事態以外の艦長権限による操船を学園に禁止されていて、出向に必要な操縦手と汎用オペレーターの資格を持つ人を探していた所です」

「まぁ非常事態じゃないから、人型アンドロイドと乗員が一人の時に適用される非常時操船権限による船の使用は認められないわよ。それにしても全くの偶然だわ。私の父親は個人経営の宇宙船家業をしているのよ。父親を助ける為に操船と航法の資格を修得したいのよ。今は操船と航法の三級の資格は取ったわ。二級の資格が欲しいんだけど、実習時間が足りなくて単位が取れそうにないのよ。このクラブなら実技を実習時間とカウントしてくれるのでしょう?」

「もちろんです。ビショップ先生による指導の下、一人前の操縦手を目指して鍛えてくれますよ。もちろん実習時間として計算します」

「それなら良いわね。仮入部も悪くないわね。私の後ろに隠れているのが妹の光帆。ほら、光帆挨拶しないさい」

秋月紗枝さんの後ろから出てきて僕達を緊張した目で見ている。

「私は秋月光帆と言います。お姉ちゃんと同じで家業を継ぐために汎用オペレーターを目指しています。汎用オペレーターの資格を取るには実習時間が足りなさそうなのでこのクラブに興味を持ちました。まだ私は汎用オペレーターとしての資格を持っていませんが入部しても大丈夫ですか?」

「ビショップ先生の指導の下、実習と言う事で資格習得に有利になりますよ。ちょうど操縦手と汎用オペレーターが足りなかったので大歓迎です。他のメンバーを紹介しますね」

「こっちの光帆さんの胸やお腹を見ている男の子が相沢順平君。船外作業要員です。こっちの女の子がインターフェイスアンドロイドの綾音よ。船の事で分からない事があれば何でも教えてくれます」

僕は知らない間に秋月光帆さんのお腹を見ていたらしい。セミロングにしたヘアスタイル、大きな胸と少しふくよかなお腹を見ていた。適正体重かなと思っていた。

「恥ずかしいよ」

そう言うと秋月光帆さんは秋月紗枝さんの後ろに隠れるのだった。

「妹をそういう目で見ないでくれる?」

「すいません」

「否定せずに謝るのね」

「・・・すみません」

「泣き寝入りはダメよ。小早川さん」

「お姉ちゃんの事ですか?私の事ですか?私はちょっとびっくりしただけだから大丈夫ですよ」

「仮入部だけど私の事は紗枝、妹の事は光帆と気軽に読んでちょうだい。姉妹でクラブに入ると面倒なのよね。光帆もそれでいいわね」

「うん。お姉ちゃん。光帆と気軽に読んでください。よろしくお願いします」

「さっそくで悪いのだけど入部届を書いてくれませんか?」

「良いわ。用紙はあるかな?」

「えぇもちろん」

そう言って工藤亜里沙は自分のカバンから入部届を出すのだった。

二人は名前を書き込むと工藤亜里沙に入部届を返すのだった。

これが僕達のクラブ活動の始まりだった。

                           続く

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