出航前点検

紗枝さんと光帆さんが入部してから3日間、僕達は綾音さんの操縦や構造を学ぶ座学をあわただしく受けていた。それは今日の夜、すなわち金曜日の放課後から同曜日と日曜日の計3間、訓練航海を行う予定だったからだ。そして僕はビショップ先生の指導を受けながら、船外作業要員の仕事の一つである出航前点検の行っていた。出航前点検とは船体の装甲に異常が無いかを調べるのと取り付けられている兵装と船体を接続する大切な作業だった。僕は二つの胸ポケットとお腹に大きなポケットを一つ着いた作業着と腰につけられた、左右にフック付きロープを着けられた工具収納機能を着けられた安全ベルトを巻いていた。工具入れには安全ベルトにつながれたラチェットスパナが入っている。顔には胸ポケットに入れている端末生徒手帳に有線で繋いだ透明なウェアブル端末を着けていた。口元に届くマイクと片耳を覆うようにウェアラブル端末はついており、会話ができる構造になっていた。端末生徒手帳は綾音さんと通信で繋がっていた。いろいろな指令やデータ、そしてチャットと会話機能がついていた。このウェアブル端末は綾音さんに搭載された備品の一つだった。直接ウェアブル端末から通信を行えば良いと思うのだけど、操作性の問題と信頼性の高い技術が必要だったそうだった。宇宙空間では信頼性と確実性が求められる。古い技術だけど確実に使える装備だ。それに両手が手がフリーになって、会話や状況の確認ができるのは便利だ。宇宙服の中でも使える。情報のやり取りができると作業の効率化につながるのだった。今は汎用オペレーターの光帆さんと会話をしている。光帆んにとっても訓練だった。的確な状況確認と指示を出せるかは汎用オペレーター試験にとって重要な能力と言える。

「両側面の確認を行いましたし、次は上か下どちらの確認を行いますか?」

ビショップ先生の問いかけだった。上は歩きながら確認できるけど、綾音さんのランディングギアの関係で下面は見上げながら、歩かないといけない。疲れる事は先にしておこう。

「下面から行こうと思います」

「相沢君は挑戦者ですね」

意味ありげにビショップ先生は微笑むのだった。僕の本格的な船外作業員としての行動が始まるのだった。                                                           続く 

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