自己紹介は有名な古典
いろいろなアクシデントと不運が続いたが教室にたどり着いた。隣に座った少女はきっとこれから不運を招くに違いない。チャイムが鳴る。ずっと宇宙ステーション暮らしだった僕にとって新鮮なモノだ。ずっと教育型アンドロイドと通信教育で授業を受けていたから。経済的や距離的に学校にいけない人達は通信教育と教育型アンドロイドの指導により義務教育で学校への入学を免除される。だから僕にとって初めての学校だった。教室のドアが開き、初老の教師が入ってきた。
少しざわめいていた教室が静かになる。
「みなさん。こんにちは。このクラスの担任となる教育型アンドロイドのビショップ109562です。他のビショップ型アンドロイドも働いていますが、基本的に情報を共有していますのでだれに話しかけてくれても大丈夫です」
教師と言う公平さと高い指導力と忍耐を求められる職業は早期にアンドロイドに変わっていったと言う話を聞いた事がある。
「私の席から向かって左、廊下側の生徒から自己紹介をお願いします」
初めての自己紹介だ。緊張でパニックになる。何を言えば良いんだろう。せっかく昨日考えていたのに何を言って言いか分からなくなる。名前や自己紹介の内容を覚えてられない。そんな僕を置いて次々と自己紹介が続いていく。時間が立つのが早い。何とか自己紹介の順番だけを見ている。次は僕の番だ。自己紹介が終わるのを確認すると僕は立ち上がる。
「相沢順平です。実家が貨物倉庫を営む宇宙ステーションでした。船外作業員二級と空間ボルト締め工法三種、空間ケーブル接続工法三種を持っています。卒業するまでに空間作業員一級を取りたいと思っています。これからよろしくお願いします」
何とか言えたなと思うと教室が少しざわついていた。本来地球出身者に教育を施して船外作業員二級を取らせるのが目的と言う話を聞いた事があるから、すでに船外作業員二級を持っているのはめずらしいんだろうと思う。次は面倒な少女だ。どんな事を言うのだろう。
「私は武装商船会社、工藤警備運送の社長兼艦長を務めている工藤亜里沙です。今はクルーが少ないので、操縦手、汎用オペレーター、火器管制手志望の人が来たらすぐに入社しなさい。絶対よ」
ハルヒかよ。それは良い。真似たくなる事もあるだろう。でも艦長って一体。経験と資格と訓練と実務経験を積んだ上で実地訓練を受けないと艦長になれない。
学校に入学してきたと言う事は同い年だと思うけど、艦長になれるはずが無い。
男の子のなりたいものランキングの上位に来る憧れの職業だった。憧れると言う事はそれだけ簡単になれないと言う事を表している。
教室がざわめき出す。次の人が自己紹介をためらう程だった。
「静粛に」
ビショップ先生の声が聞こえる。
「工藤さんの後だとやりにくいでしょうが自己紹介をお願いします」
それでやっと自己紹介が続いたけど、工藤亜里沙の話が頭をついて離れなかった。
続く
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