-Phase.02- 校外活動でポイントを稼ごう!
13 無視無視ステーション
「あの……歩きながらのスマホは危ないですよ」
「……」
お姉さんは俺を無視して通り過ぎていった……。
チャリーン!
「あ、あのお、歩きスマホは危ないので……」
「……うざ」
睨まれた。
チャリーン!
「歩きスマホは危険ですから……」
「前見ながらやってますっ!」
反論された。
チャリーン!
「歩きスマホは……」
「地図見てんだけど!」
怒られた。
チャリーン!
「歩きスマ」
「ナンパかよ、キモ!」
事案発生しそう。
チャリーン!
条件その一、学校の生徒にバレないこと。
条件その二、以後の生活に支障が出ないこと。
条件その三、怖い思いをしないこと。
以上を念頭にエレクトラと相談の結果、「歩きスマホはやめましょう活動」は繁華街の駅でやることに決定した。乗り換えが多い
しかも今日は土曜日なので、学校は休み。普段ならテンション高めで昼頃起きてゲームやってるってのに。
開始1時間ちょっとで俺の心がポッキリいっちゃいそう。ねえ、これ折れても接着時とかで治せる?
「いいですよー、いいですよ柴田さん! スズメの涙ほどですが、プラスですよっ」
「心の涙が止まらないけどね! 魂はマイナスだけどねっ!」
怖い思いをしたくないので、男は避けて女の人に声をかけているのだが、それはそれでダメージがでかいんだが! 逆に男性に絞ったほうが精神衛生は保たれるんじゃないの?
とりあえず缶コーヒー買って休憩しよう、そうしよう。
「これ、1回1ポイントつってたよな。あと何回で7になんの、お前の
「そうですねえ、かるーく280回ほどでしょうか」
「にっ……!!!! 280回やり終えた頃には、俺の心は鉛より重くなってるわ! 俺が心に傷を負って立ち直れなくなったら、お前責任とれるの!?!?!?」
「柴田
ペンギンだのトラだのウマだの、俺の名前はたべっ子ど◯ぶつかっ!
「スマホぶん投げてえけど、お前にダメージいかねえからやんねえけど! やんねえけど、スマホぶん投げてえっ!」
「ふっふふー、助けは
「せめて相手がお前じゃなかったら喜んでやるんだけどな……ん?」
なんか改札口でさっき話しかけた女の人が駅員と話しながら、こっち指さしてるんだけど。
駅員室から駅員さんが出てきて、二人してこっち見てるんだけど。
駅員さんがこっちのほうに来るんだけど。
来るんだけど!
「やっばいっ!」
俺は逃げ出した。
☆★☆★
「駅構内だったのはまずかったですねー。ま、路上なら問題ないでしょうから、仕切りなおしていきましょう、いえーい!」
「いやだ!」
「えー、でも」
「いやだ!」
「柴田さん」
「いやだ!」
「セロリ」
「いやだ!」
「野鳥の会」
「いやだ!」
「ヌースカムイックネン」
「いやだ! ……誰?」
「柴田さんが縦横無尽の駄々っ子になってしまいました……」
「……誰?」
「もう、この期に及んでなんですか! なら『ビタミンBは目にいいですよ活動』に変えますか?」
「一緒だよ、一緒! 上から目線でいきなり注意してくる変人か、おせっかいでいきなり勧めてくる変人かの違いしかねえわ!」
「まあそうですよね」
ケラケラ笑ってるスタンプ付きでエレクトラがレスしてくる。
当事者意識ゼロ。
「腹立つわー、お前」
どっちにしろ知らない人にいきなり話しかけるって、ハードルが高すぎるんだよ! ぼっちで人見知りの俺にとってはハードルじゃなくて、もはや山。越える前に遭難しそう。ていうか、「ハードル」って陸上競技より人生で語られるほうが多い単語じゃね?
「せめてうさん臭さがなけりゃな……」
「あはは、柴田さんには無理ですね」
「黙れ6!」
いきなり所属不明の個人が注意喚起とか慈善活動みたいなものやりだしても、裏に何かがあるに違いないって勘ぐられるのは当然だし。俺だって言われる立場だったら避けるだろう。
いっそ駅員のコスプレでもすりゃまだマシなのか? いやいや、それだとマジで通報案件になりかねん。白黒ボディの「はたらくくるま」には乗りたくない。
スマホのブラウザを起動して調べてみると、こういう路上活動は駅など私有地ならその所有者に、公道なら役所と警察の許可がいるらしいが、まず許可は下りないだろうということだ。施設は利用するためで、道は歩くためなので、それを妨げる行為なんか認めると収拾がつかなくなるという理屈はもっともな話だ。
なのでゲリラ的にやるしかないわけだが、募金活動やらキャンペーンならともかく、繁華街でこんな不審な動きをしてれば警察の目に留まらないわけがない。児童に「おはよう」って言っただけで声かけ事案になるこのご時世で、ガラスハート&チキンハートな俺にどうしろってんだよ。
「柴田さん、柴田さん! 何たる
「だから~」
ん、あれは?
小柄でメガネ、ショートヘアに見覚えがある。そう思ったと同時に俺は気付いて視線を逸らそうとしたが、ふっと相手が顔を上げたのでバッチリ目が合ってしまった。
「あ……」
眉村
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