第4話「霜月」

「君は社会に出ないで、家の中で一生を過ごした方が良いと思うよ。」

指でズレた眼鏡を戻しながら、担任は投げ捨てるようにテストを机の上に置いた。

低い点数が私をあざ笑うように見つめ返している。

「それでも・・・」

「いや、無理だって。社会は、高校みたいに甘くないし。君みたいな頭の悪くて大人しい子なんか、すぐにいじめられて辞めるのが関の山だよ。そうなるくらいだったら、家に居なよ。そっちの方がいいって。」

言葉を遮るように担任は溜息混じりに行った。

「でも・・・」

「だ・か・ら!」

担任は声を荒げて威圧的に、時々溜息を混じえながら、いかに私が社会に合っていないかを話始めた。

担任の言うとおり、社会は高校みたいに甘くない。

大学に行くお金のない私にとって、その言葉は人生の終幕を告げているようだった。


青空を恨めしく思いながらじっと見つめ、冷たい柵を強く握り締めた。

社会に合っていない・・・。

「空だって、夜になったら黒くなるのに・・・私にはそれができないのか・・・。」

苦笑した。

その先には、忙しなく行き交う車と両端に色んな色の屋根が見えた。

「人に迷惑をかけるくらいなら・・・先生の言うとおり、社会に出ないほうがいい。」

「その人生、僕が変えてあげるよ。」

この世界から消えるために、前へと足を踏み出そうとしたとき、男の声が聞こえた。

後ろを振り返ると、まだ熱いのに黒い学ランを着た男が立っていた。

パッチリとした可愛らしい目が微笑んだ。

「初めまして。僕の名前は優馬。しがいない浮遊霊です。」

優馬は私に向かって手を伸ばした。

誰でもいい・・・一人ぼっちで戦っている私を助けて欲しい。

私は唇を強く噛み締めて優馬の透けた瞳を見つめて、手を伸ばした。


「早く復帰できると良いんだけど・・・。」

病室のベッドの側にある椅子に腰をかけながら弥生は腕を組んで言った。

「全く・・・普段から人の頭を殴りまくってるからこんな目に合うんだ。」

ベッドの中にいる師走を向かい合うように壁にもたれかかっている睦月が言った。

「それは、仕事をないがしろにしようとする睦月が悪いんです。」

ため息混じりに師走はそう言った。

「それにしても、歩道橋の階段から滑り落ちそうになった女の子の下敷きなるなんて・・・。俺がその女の子だったら、間違いなく惚れてたな。」

如月が何故か隣のベッドの上の若い女性の両手を握り締めているのが見えた。

女性は愛想笑いをしつつも困った様子を見せた。

「痛い!痛いって!!」

そんな様子を見かねて、神無月が如月の右耳を強く引っ張った。

「お前は誰の見舞いに来てるんだ!」

「俺は、この病院に入院している全ての綺麗な女性の見舞いに来てるんだ!!あと、ついでに師走!!」

ついで・・・。

頭を抱えながら師走はため息を吐いた。

「本当にすいません。」

師走が申し訳なさそうに謝ると女性は肩を揺らして微笑した。

「いえ、気にしていません。賑やかなのは好きですから。」

そのとき、スーツを着た男を3人の子供が病室の中に入ってきた。

「体の調子は大丈夫かい?」

知的な顔をした男が女性に話しかけた。

「ママー!!いつ退院できるの?」

女性のベッドを3人の子供が囲った。

「不倫するのが趣味だったのか?」

その光景を見て固まっている如月の背後から首を出すように睦月が言った。

「そ、そんなわけないだろ?俺は、女性が気落ちしないように、わざと、わ・ざ・とああ言っただけだよ。」

何故か今にも泣いてしまいそうな声で無理に笑みを浮かべながら如月は言った。

「私・・・ものすごく店が心配なんですが・・・・大丈夫ですか?」

訴えかけるような目で師走は弥生を見た。

「店の方は張り切ってる皐月が師走の代わりに仕切ってるから、賑やかだよ。」

弥生が苦笑しながらそういうと、師走は顔を引きつらせてうなだれた。

「まあ・・・繁忙期でもないし、霜月が皐月のカバーをしてるから安心して休養しな。」


「そこの君!」

師走の病室から出て、1階にある自動販売機で飲み物を買おうとエレベーターに向かっているとき、後ろから男の声が聞こえた。

それを不思議に思い、首を傾げて睦月は後ろを振り返った。

ガテン系の体格で色黒の肌をした男がこっちに向かって歩み寄ってくる姿が見えた。

目を細めて、その男が神無月と一緒に仕事をしたときに相手をした客だったことを思い出した。

「君、あの喫茶店で働いてた子だよね。」

まるで幽霊と再会したような顔を浮かべながら男は言った。

「喫茶店?」

眉間に皺を寄せながら睦月は腰に手を当てた。

男は当然ながらわけのわからない顔をする。

「俺、バイトしたことがねえし。」

呆然とした態度で男はそんな睦月をじっと見つめる。

「人違いなら行っていい?下で人を待たせてるんだけど・・・。」

すると男は釈然としない気持ちで目を泳がせながらごめんと呟くように言った。

睦月に背中を向けて、首を傾げながら反対方向へと歩いて行った。

干渉しすぎると如月みたいに飲まれてしまう。

ため息を吐いて、エレベーターへと向かった。


「一体、どうしたんだ?」

神無月は隣で項垂れるように背もたれに座って溜息を付いている如月に言った。

「俺って、女運が全然ないみたいなんだ・・・。」

飲んでいたコーヒーを吹き出さないように神無月は口元に手を当てた。

「そ、そんなの、いつものことだろ?」

口から少し出たのか、袖口で拭いながらコーヒーを机の上に置いた。

そのとき、エレベーターから睦月が出てくるのが見えた。

じっと見つめていると、こっちに気がついたらしく、浮かない表情でやってきた。

「どうしたんだ?」

首を傾げながら神無月が聞いた瞬間、その上に如月が覆いかぶさるように乗っかってきた。

「ナンパして振られたのか?」

その言葉を聞いて、神無月は目を見開いて驚いた。

睦月の子供っぽい勝気な性格を考えると、絶対にそんなことはしない。

「俺はお前みたいに女に興味ねぇよ。」

不機嫌そうな顔で言う睦月の両肩を、如月は静かに掴んだ。

「お前、人生の半分を損してるぞ。今からでも遅くないから、その考えを改めたほうがいいって!」

神無月は溜息を吐いてそれを心の中で否定した。

「恋愛ゲームの1つや2つもクリアできないお前に言われたくねえよ。」

「あれは戦いに負けて、女の子がスケバンになっただけだから。勝ってたら、絶対にハッピーエンドになれたから。」

腕を組んで如月は訳のわからないことを言った。

「それよりも睦月、浮かない顔をしてどうしたんだ?」

熱くゲームについて語っている如月を押しのけて神無月は言った。

「お前らに関係ねえよ。」

すると如月は、睦月に詰め寄った。

「睦月、女に興味ないって言いながら気になる人が居たんだろ・・・。」

恨めしそうな顔をしていう如月に対して、睦月は顔を思いっきり顰めた。

「はぁ?意味がわかんねえよ。」

「お前なんかきらいだぁぁぁぁぁぁ!!」

突然、叫び声にも似たような声でそう言うと、如月は病院の外へと走って出て行った。

「神無月・・・あいつ、どうしたんだよ。」

呆然と走り去っていった如月の背中を見つめながら睦月が言った。

「俺も宇宙人についてはよくわからないんだ。」


「こんにちは、優馬君。」

項垂れるように座り込み、青い空を呆然と見上げていると背後から女の声がした。

後ろを振り返ると、長い銀髪をポニーテールにした女が立っていた。

どこかの喫茶店から抜け出したような格好をしている。

「こんな所でぼんやりしてどうしたのかな?」

クスリと可愛らしく笑いながら女は僕の隣に座った。

「貴方は誰?なんで、僕の名前を知ってるの?」

浮かんだ疑問を投げかけると、女は小さく舌を出して笑った。

「私の名前は霜月。ある人に頼まれて、優馬君を助けにきたの。」

どこかで聞いたセリフを霜月は喋った。

「助けに?なんで?」

すると霜月は無邪気な笑みを口元に浮かべた。

そして、触れないはずの僕の胸を霜月は簡単に人差し指で軽く突いた。

「その理由は貴方が一番知ってるはずよ。」

首を傾げて霜月の顔をじっと見つめた。

「教えて、優馬君がなんでここに座って空を眺めているのか・・・。私は優馬君を助けたいの。」

優しく霜月は微笑み、僕の頬に冷たい手を添えた。


「壬生さん、見直したよ。」

今まで不機嫌な顔で私と接していた担任が、驚いたような顔をして言った。

その言葉に苛立ちを覚えたが、優馬の言うとおり、心にもない笑みを顔に浮かべた。

「ありがとうございます。」

そう言って、私は担任から離れるように教室から出て行った。

「テストの点数が良かっただけで、手のひら返しの反応だったね。」

少し軽い足取りで廊下を歩きながら、寄り添って歩いている優馬に言った。

「そんなに褒められると、照れるな・・・。」

恥ずかしそうに頬を赤くしながら優馬は頭を掻いた。

「僕はただ、生きていたときにできなかった事をしただけだよ。」

それを聞いて、優馬が生きていたときの事が気になった。

「ねえ、優馬は生きてた時になにしてたの?」

すると優馬は優しそうな笑みを口元に浮かべた。

「壬生さんの学生生活とあんまり変わらないけど・・・。強いて言うなら、いっつも、なにか変わったことがしたいって思ってたんだ。」

目を輝かせながら優馬は楽しそうに言った。

「文化祭とかでのど自慢に参加してみたいとか、体育祭でリレーに出たいとか・・・イベントとかに参加したいとかそんなことばっかり考えてたんだ。」

私に向かって優馬は微笑みながら言った。

「ようやく決心がついて、そういうのをやろうとしたとき、交通事故にあったんだ。」

苦笑しながら優馬は目をふせた。

「またこうして、そういのができるんだって思うと、すごく嬉しいんだ。だから壬生さん、ありがとう。」

その言葉を聞いて、私は嬉しくなって優馬から視線を逸らした。

「私の方こそ、世界を変えてくれてありがとう。」


「お互いに助け合って、この世界を生きるか・・・。」

霜月は胸の前で手を合わせて、笑顔のまま息を深く吸い込んだ。

「そんなの・・・最初だけだったんだ。」

体の中に広がる苦いものを吐き出すように優馬は空を睨んだ。

「だからここに居て、そんな顔をしているんだね。」

全てを見透かしたような優しい霜月の声が耳に入った。

「始めは、壬生が居た場所に僕が収まっていた。けど・・・・。」

優馬は奥歯を噛み締めて、砂を握るように拳に力を入れて握り締めた。

「けど!壬生のやつ、僕にその場所をくれるって約束したのに・・・返してって!!」

目を細め、体から溢れ出る憎しみを力いっぱい優馬は吐き出した。

そのとき、霜月の冷たい手が優馬の手に覆いかぶさるように乗った。

穏やかな表情で優馬に向かって微笑む霜月の顔が見えた。

「辛かったんだね・・・。」

その暖かい声に優馬は顔をクシャクシャにして涙を流した。

「優馬君は、居場所を奪った壬生さんをどうしたい?」

霜月の柔らかい手が優馬の頭に乗った。


静まり返った店内で、睦月は一人カウンターに突っ伏している。

その傍らには、ホルマリンの中に浮いている不思議な生物の腕がある。

「口うるさい師走は居ないし、面倒な皐月も居ないから楽だな。」

一息つくようにそう言ったとき、ベルの音とともに扉が開く音が聞こえて来た。

「いらっしゃいませー。」

それを面倒と思いながら、いつものセリフを言って、振り返った。

黒縁メガネで冴えない顔をした地味な格好の女が立っていた。

「あの・・・ここはどこですか?」

女は不安そうな表情を浮かべて、店内をキョロキョロと見回す。

じっと、その女の姿を見つめていた睦月は溜息を吐いた。

「霜月はどうしたんだよ。」

女は首を傾げた。

「誰ですか?それは・・・。」

すると睦月は眉間に皺を寄せて、カウンターの中へと入った。

「誰って・・・会っただろ?銀髪でポニーテールをしてる女だよ。ほら、こんな感じの服着たやつ。」

睦月は黒いエプロンを摘んで、女に見えるように持ち上げた。

それでも女は理解できない様子で首を左右に振った。

「会ってねえの?」

驚いた様子で睦月は目を見開いた。

「あ・・そっか・・・あいつは、死んだやつが専門だった・・・。」

考え込む様子で睦月は顎に右手を当てて言って、女をじっと見つめる。

「優馬って顔でもねえし・・・お前、誰だよ。」

女は目を見開いた。

「貴方・・・優馬の知り合いなの?」

すると、睦月は舌打ちをした。

「俺はお前が誰なのかを聞いてるんだ。」

鋭い目で睦月が睨むと、女性は怯えたように体を縮こまらせた。

「優馬が勝手に、私の居場所を奪ったの・・・。私はただ、自分の居場所を失いたくなかっただけ。優馬が悪いのよ・・・。」

怯えた様子で女は言った。

「さっぱりわかんねえよ。ちゃんと、説明・・・・。」

突然、睦月の口を誰かが後ろから塞いだ。


10

「ごめんね。この馬鹿が変なことばっかり言って・・・。」

突然現れた女が、目つきの悪い少年の口を両手で塞ぎながら言った。

「怖かったでしょ?」

クスリと笑いながら首を傾げたので、女の黒いツインテールが揺れた。

それをじっと見つめていると、少年はジタバタと暴れた。

「如月、そこで泥酔してないでペットのしつけはちゃんとしなさいよ。」

女の視線の先に首を向けると、茶髪で真ん中分けの男が仰向けに倒れているのが見えた。

その顔は真っ青だ。

「む、睦月・・・だ、ダメだっ!」

その瞬間、突然如月は右手で口を覆って、店の奥へと姿を消した。

女と目つきの悪い少年、睦月は呆れた様子で如月を見送った。

「まあ、いいわ。」

溜息混じりに女はそう言うと、私の方へと振り向いた。

「私の名前は皐月。ここでは主に、雑用をしてるの。それで、こっちのガキは睦月。こいつのいうことは、気にしなくてイイからね。アホだから。」

ニッコリと笑いながら皐月は、睦月が身動き取れないように関節を固めている。

「それでさっき奥に引っ込んだのが、こいつの飼い主の如月。女たらしだから、気をつけてね。あなた、可愛いから食べられちゃうかも。」

皐月は言った。

「それで、貴方の名前は?」

「壬生・・・。」

「私たちは、時々幽霊の回収をしているの。まあ、全ての幽霊を回収しているわけじゃないけどね。」

皐月の言っていることが、イマイチ理解できなかった。

「私たちも、細かいことはこの店のルールで喋れないの。だから、納得するように話す事はできないから、言葉のとおり受け取ったら楽よ。」

クスリと笑いながら皐月は、睦月を抑え続けている。

「私たちが把握してない人は、普通ここにはこれないんだけど・・・。」

そして、皐月は顔を近づけてきた。

「睦月、壬生さんにしばらくの間付いてて。」

口元に含みのある笑みを浮かべて、皐月は言った。


11

僕は壬生の姿を求めて、学校の屋上から校門を見つめる。

青かった空も、いつの間にかオレンジ色になり、紺色へと変化しつつあるのに、その姿を見つけることができない。

それに、苛立ちを覚え、握ることのできない自分の手で拳を作った。

「なんで・・・。登校してくる姿は見たのに・・・。」

ここでただ待っているのも、効率が悪い。

振り返って、校舎内に入ろうとしたとき、霜月に呼び止められた。

「急がば回れって、よく言うわよ。」

変わらない穏やかな口調なのに、どこか冷めているような雰囲気を感じた。

しかし、すぐにそれが、霜月の鋭い瞳のせいだと気がついた。

「霜月?」

すると、すぐに霜月は微笑んだ。

「自分勝手な壬生さんにお仕置きをするんでしょ?壬生さんは、私たちと違って、普通の人間だから、壁を通り抜けて帰ることなんてできない。」

その言葉を聞いて、また校門に視線を移した。

「ダメか。」

そのとき、囁くような霜月の声が聞こえた。

信じられないその言葉を聞きき、霜月の方へと振り返った。

霜月の前に立ちはだかるように、壬生と茶髪の少年の姿が見えた。


12

「霜月・・・どういうことだよ・・・。」

皐月に背中を押されるままに、店から出ると、不吉な話をしている優馬たちの姿が見えた。

霜月は優しさの感じる笑みを口元に浮かべている。

それが不気味に思えた。

「私は、自分の仕事を全うしてるだけ。」

そう言って、霜月は両手を肩の位置まで上げた。

「そういう問題じゃない。こんな、背中を押すような真似、ダメなの分かってんだろ!」

威嚇するように、声を荒げて言った。

「それもそうね。」

霜月はこの場にふさわしくない、笑みを見せた。

「自分勝手な行動をとって、ごめんね。」

そう言って、霜月は呆然とこっちを見つめている優馬の手を無理やり掴んだ。

「壬生さん、迷惑かけてごめんなさい。」

身勝手にそう告げて、霜月は無理やり優馬を行くべき所へと連れて行った。

霜月の不自然すぎる行動を止めればよかったと、俺はこのあとで後悔することになる。


13

「まるで、人が変わったようだ。」

まるでナイフのように鋭利な言葉に、私は心臓を一突きされた。

それだけで終われば、私はこれ以上苦しむこともなかっただろう。

周りからの言葉は、限度を知らないのか、何度も私の胸を抉る。

「昔がよかった。」

「見損なった。」

「君にはがっかりだ。」

唇を噛み締めて、誰も居ない校庭を眺める。

「やっぱり、君はこの程度だったんだ。」

大きく息を吸い込み、私は鳥のように両手を広げて、飛ないくせに、校庭に向かって飛び込んだ。

もう、私を呼び止めてくれる救いの声は聞こえない。


14

「霜月・・・こうなることが分かって、さっさとあの男を連れてったのかよ?」

瓶越しに睦月は、店内の窓を吹いている霜月に言った。

持っていた雑巾をバケツに戻して、カウンターに突っ伏している睦月を見て微笑んだ。

「睦月が来なくても・・・例え、私がいなくても、壬生さんは絶対に死んでた。」

眉間に皺を寄せながら霜月を睨む。

「結末は変わらなかったのよ。絶対に。」

微笑しながら言った。

「そんでも、あれは・・・」

「睦月、仕事に私情を持ち込むのは厳禁よ。じゃないと、如月みたいに帰ってこられなくなるわよ?」

楽しそうに、口元に人差し指を当てて霜月は言った。

それに反論しようと、口を開きかけたが、その言葉の意味を察して、固く閉じた。

そして、頭を抱える用にまた、カウンターに突っ伏した。

霜月は、初めから誰にも同情なんかしていない。

むしろ、二人を殺そうとしていた。

たぶん・・・あそこで俺が入らなかったら、優馬が壬生を殺して・・・その罪を背負った優馬は・・・。

そこまで考えて、睦月は溜息を吐いた。

「全てを幸せにするなんか・・・ただのエゴじゃねえか・・・。中途半端なら、感情なんか必要ない。」

ボソリと瓶に感情を小さく吐露した。

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