第46話王都襲撃編 イベント発表
――ドラゴンバスターオンライン公式サイト
<挑戦者求む>
二週間後19時より王都襲撃イベントがはじまります。
襲撃モンスターは王都外周のアジトへ襲いかかります。
・ボスモンスターも襲撃しますが、ボスエリアに移動せず、フィールドでの戦闘になります。
※明日のメンテナンス後より、練習モードを実装します。体験されてからの挑戦をお勧めいたしま す。
・アジト襲撃は、アジトの設定をパブリックモードに変更していただくことで、参加対象となりま す。
・襲撃イベントに参加出来るプレイヤーは、王都周辺にアジトを持つギルドに所属するプレイヤーの みとなります。
王都襲撃イベントが発表されるなり、プレイヤー間に衝撃が走る。一番の特徴は襲撃イベント時のボスモンスターの扱いだ。
ボスモンスターは通常ボスエリアに移動し、同時に何人でも挑戦することが出来る。もちろん、それぞれ別々のボスエリアへの移動となる。
そのためドラゴンバスターオンラインでは、ボスモンスターの取り合いは起こらない。森林ボスのような例外は一応あるが......
襲撃イベントでは、ボスモンスターに挑むという動きがなくなり、ボスエリアへの移動が無くなる。そのため、大人数でボスモンスターへ挑むことも可能な代わりに複数のボスが出てくることが予想されるので、ボスモンスター多数に挟まれる可能性も有りうる。
また、ドラゴンバスターの仕組み上の問題も不安の対象だ。プレイヤー同士はすり抜けることが出来ず、ダメージを受けないもののプレイヤー同士で攻撃を当てて吹き飛ばすことも可能になっている。
混戦になれば、プレイヤー同士の吹き飛ばしに加えボスモンスターの攻撃も振るわれるためゲームにならない状況になることも予想される。
根本的な対策にはなっていないが、運営は今回の実験的なイベントに対し参加者を絞ることで様子を伺うことにしたようだ。
参加可能なプレイヤーは、王都周辺にアジトを持つギルドに所属し、アジトの設定を誰でも侵入可能なパブリックモードにすることでようやく参加することが出来るようになっていて、相当数絞られたプレイヤーのみが参加することになるだろう。
そういった事情があるため、襲撃イベントでは特別な報酬は用意されていない。限定的な参加者しか募れない状況で特別な報酬アイテムを出すと不公平になってしまうことへの配慮だろう。
王都周辺にアジトが建築可能になって以来何か来るだろうなと思っていた竜二ではあったが、今回の襲撃イベントには驚かされた。
ドラゴンバスターオンラインはシステム的に襲撃イベントに向いていなかったため、竜二にとってはまさかのイベントであった。
ボスエリア移動が無くなるなど、特別仕様を実装して今後の様子を見たいといったところだろうと竜二は想像し、ゴルキチでログインする。
先日から建築をはじめたゴルキチがリーダーを勤めるギルド「王国教習所」アジトはすっかり外観が完成し、今は女キャラクター三名による内装大会となっている。
「王国教習所」アジト外観は、重厚な作りの石で出来た砦風の建物で、正面は赤色の両開きになっている鉄製の広い扉。壁は灰色の石ブロックを積み上げた作りとなっており、高さは三階建程度の高さがある正方形に近い形になっている。天井の左右に三角錐の尖塔風の構造物があり、天頂には旗が揺らめいている。
ゴルキチが想像するこれぞ「砦」といったイメージを再現したアジトの作りに彼はご満悦であった。
ゴルキチはメイリンに一肌脱いでもらってツリーハウスの人に頼んでよかったと、アジトを見つつ感慨にふけっていると中から彼を呼ぶ声が聞こえる。
「ゴルキチちゃん、襲撃イベントどうするのの?」
呼びかけたのは、いつものゴシック衣装に薄紫のニーハイソックスを履いたしゅてるんだった。
「ん、折角だし参加してもいいかなと思ってるんだけど」
お祭りだし、戦闘で勝てるかは度外視してもいいとゴルキチは考えている。
「お祭り感覚で行くのかなな?」
ゴルキチの意図を正確に汲み取るしゅてるんにゴルキチも頷きを返す。
「ただ、参加するしないは他のメンバーにも聞いてみようと思う」
「そうねね。グルードちゃんとイチゴちゃんはやってみたいと言うと思うのだけど、メイリンちゃんがどうかだねね」
グルードもイチゴも戦闘職なので、新しい要素のボス戦は挑戦してみたいと考えることは予想できる。メイリンは生産職人なので戦闘はほとんどやらない。
アジトをパブリックにすると、おそらくモンスターがアジト内にも侵入するため彼女の意見は特に聞いておかないと。
噂をしているとちょうどメイリンとイチゴがログインしてきたので、アジトに二人を呼ぶゴルキチ。
「面白そう!やってみたいな」
「楽しそう、やろうやろう」
メイリンとイチゴは乗り気で襲撃イベントに参加したい様子。
「グルードには後で聞いとくよ」
ゴルキチは二人の意思を確認できたので、グルードこと弟には後で聞いておくことを伝える。
「皆あまり公式サイトを隅々まで見ないよねね。今回の襲撃イベント用におもしろいアイテムが追加されるのよよ」
しゅてるんが言うには、アジト設置用の大型バリスタと回復クリスタルが実装されるということだ。大型バリスタはアジトに設置することで使用可能になる大型の弓で、一回矢を準備するのに十秒もかかるが威力は通常の矢に比べ三倍程度の威力があるそうだ。
大型バリスタはどの職業でも使うことができるので、メイリンに使ってもらうといいかもしれない。
回復クリスタルは、触れることで体力が全快になるアイテムで、これもアジト内に設置する必要がある。効果は触れると体力が全快になるそうだ。ドラゴンバスターオンラインでは回復アイテムが存在するが微々たる量しか回復しない。また、回復魔法は存在しない。
そのため、いかにダメージを受けないかが勝負となる。フィールドではしゃがんでいると自動的に体力は回復していくものの、ボスエリアでは全く回復しない。今回はボスエリアが無くなるため、回復手段として回復クリスタルが実装されるとのことだ。
しゃがむより、回復クリスタルを使ったほうがはやいのでダメージを受けたらいかに迅速に回復できるかが鍵になるだろう。
「襲撃イベントってどれくらいモンスターが来るかわかんないけど、アジトに向かって来るんだよな?」
ゴルキチは疑問に思っていたことがある。
「公式サイトを見る限り、そう思うわよよ」
「モンスターって壁通過できないからさ、入口に狭い通路つくってそこに誘導すればどうだろ?」
誘導役が大変そうだけど。もし上手くいくならゴルキチは自身が誘導役をやってもいいと考えている。
「いいアイデアかもしれないわね。チーズポテトさん達にも聞いてみない?」
なるほどと納得した雰囲気でメイリンが提案する。
「いいかもしれない。アジトの場所も隣だし、チーズポテトさん達もどうするか聞いてみようか」
ゴルキチはチーズポテトのギルド「ウォーリアーズ」に所属するジャッカルにメッセージを送ろうと、メッセージウインドウを開くものの何か忘れてる気がして一旦ウインドウを閉じる。
「先にグルードくんに参加意思を聞かないと」
メイリンの突っ込みに、グルードのことをすぐ忘れていた自分に赤面するゴルキチであった。弟が聞いたら悲しむぞ......
その後竜二が問いかける前に弟より襲撃イベントのことを聞かれ、「兄さんが参加するならやるよ」と先に言われてしまった竜二。相変わらずのしっかりものの弟と抜けた兄の構図だった。
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